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健保組合は医療保険制度上で圧倒的に有利~2

2009年04月13日 15時13分39秒 | 社会保障問題
健保組合がいかに有利な立場を利用して蓄財してきたか、ということをもう少し書いてみる。


健保組合の加入者というのは、本人と扶養家族だ。会社に勤めて働いている時代を「現役時代」ととりあえず呼ぶことにする。高卒か大卒で入って働き始め、60歳で定年というパターンが多かったであろう。中には中途採用も勿論いるだろう。

①健保組合の場合:

現役時代――60歳定年

これ以降の人は、原則的には健保組合からは抜ける。定年延長なんて昔は多かったとは思えないから、リタイヤした人たちは別な保険に加入し直さねばならなかった、ということだ。今なら、延長制とか、任意継続とか、退職医療制度とか、若干の調節機能はあるけれども、昔なんてそんなものはほぼなかったか、あっても機能としては小さかった。何故なら、高齢に到達する前に多くの人が死んでいたからだ。

つまり、制度上、組合に加入している人たちは、ごくごく少数の扶養家族を除けば『65歳以上の高齢者たちは加入していなかった』。だからこそ、老人医療の給付に現役の人たちの保険料が大幅に取られることもなかったので、健保運営は楽であり給付水準も高かったのだ。そりゃそうだわ。現役時代の人たちの病気にかかる費用なんて、そもそも少ないのだから。


②政府管掌保険の場合:

現役時代――(60歳)――高齢労働者――

健保組合に加入していた人が退職した後で、仕事をしようかなと思って働くと、被用者保険として職場の社会保険に加入することになっていたわけである。年金があまりない人とか、あっても少ない人などは働くわけで、そうすると加入者のうち60歳以上の働き手は当然加入してくる可能性は健保組合よりは高くなるわけである。
健保組合に60歳定年まで加入していて退職後別な会社に勤めると、この人の医療は政府管掌で賄うことになってしまうわけだ。60歳以上の人と、健保組合の平均年齢の30歳代の人では、一人当たりの医療費の額がどちらが多いか、というのを考えれば、前者の方が高額となっている可能性が高くなるであろう、ということは当たり前なのである。


③市町村国保の場合:

現役時代――(60歳)――退職した人たち、年金生活者たち等、他に入れない人は全部

上二つと比べて、どう見ても不利になるに決まっているのが、この地域制になっている健康保険だ。なぜなら、健保組合であろうと、政府管掌であろうと、被用者保険に加入していた人たちはリタイアして稼げなくなっても、ほぼ全部がこの国保に加入しにやってくるわけだ。その人たちは、現役時代の人も、リタイアした人も、同じ制度上に入っていたのだ。つまり、どう見ても「加入者が高齢」ということになり、保険料を払える人の数や支払能力を考えると、リタイア組が高額な保険料を払えるとは思えない。しかし、給付は高齢者が他よりも圧倒的に多いので、給付額が高くなってしまうのである。

元公務員だろうが、元国鉄だろうが、元大企業だろうが、後期高齢者となってしまうと保険は「国民健康保険」だ。子どもか孫など誰かの扶養に入っているなら別だが、そんなケースは多くはないだろう。


だからこそ、健保組合の後期高齢者の割合がダントツで少なく、市町村国保は組合から退職してきた人たちも全部面倒を見なければならない、という制度にされてきたのである。これは、健保組合の運営が楽にできた、ということがわかるだけであり、その「昔に蓄積されてきた財産」の恩恵を受けて、今でも本人負担が大幅に少なく済んでいる、ということになっているのだ。60歳で区切ってきて、そこから上の年代の医療費負担を逃れてきたが故だろう。高齢者を他に(特に地方の市町村に)押し付けてきただけに過ぎない、ということだ。



制度を一本化するのに反対する理由として、これまで見かけたものをいくつか挙げてみようか。

ア)支払保険料が値上がりする

最もよくあるのがこれだ。「サラリーマンの人たちの払う保険料が大幅に上がることになります!!」という脅しと煽動が多いだろう。こういう負担増を許していいんですか!!とか。一番有効な戦術に決まっているよ。誰だって増税なんかされたくもないだろうから。そりゃまあそうだろうね。だって、トヨタの標準報酬月額50万円の人の払ってきた保険料は、細々暮らしている不安定な派遣労働者よりも少ないとなれば、それは負担が増大するのも止むを得ないのではないのか?
誰が負担すべきかという問題は国民的議論が必要だろうが、相対的高額所得者たちに負担増が起こるのも止むを得ないのではないか。


イ)健保組合の自助努力

これもよくありがち。努力しているから病気にならず、支払医療費が減らせるとか、適当に言ってる人たちはいるかもしれない。エビデンスをまず示してから言ってくれ、というのはあるけど、まあいいでしょう。

そこまで言うなら、よろしい。
健保組合の必死の努力が実った成果だ、ということを認めましょう。

ならば、その同じ方式とかやり方とか、全部一緒にすればいいんじゃありませんか?(笑)

なに、組合運営は企業秘密で教えられない、とか、あるんですか?
はっきり言って、最も優れた方式を採用し、それと同じく運営していった方が効率的なのではないか、と考えるのはごく普通なんですわ。企業努力や健保組合の努力によって、それを達成できたんだ、と頑強に言い張るのだから、それと同じ運営方式を国保だの協会けんぽだのに、移植してやればいいだけだろ。それの何が悪いことなんですか?(笑)

病気にならずに済む、かかる医療費も削減できる、管理運営費も少なくできる、ということで、いいこと尽くめではありませんか。そんだけ優れた組合のノウハウがあるなら、それと同じ制度を全国民にも享受してもらえるように計らうことが、一体何が問題なんですか?
誰も困る人なんていないでしょう?それとも、秘密のノウハウを開発してきたのは俺たち健保組合だから、そのメリットをお前ら一般国民になんて教えたくない、とか言いますか?

健保組合の方々の言い分が正しいのであればなおのこと、医療費削減への答えが見つかっている、ということでしょう。それを全国民レベルで実践するようにしたら宜しい。これに反対する理由があるなら、教えて欲しいですね。


要するに、健保組合と連合や経営者団体なんかは、全部結託しているだけ。連合は断じて労働者の味方なんかではない。
医療保険の一元化によって、これまでの「格段に低い保険料率」という大企業正社員の特権を奪われてしまうことになるから、だ。その既得権益を死守することが目的なだけ。これは経営陣とも共犯なのだよ。他の労働問題なんかでも同じ。


ウ)保険者の機能が低下する

何を言ってるのか判らないのですが、トヨタのカンバン方式とか、別業種だろうろ同業他社だろうと、真似してやってるところはたくさんあるわけで。同じ方式にすると業務の自由度が失われ会社がダメになる、とか、そういうことでもあるんですか?(笑)
だったら、今すぐトヨタ以外の会社はさっさとトヨタ方式なんか捨てろや。

健保組合の保険者機能が最も優れているなら、そうした仕組みを引き継げばいいだけで、マクドナルドの店舗網みたいなもんでしょ。
これまでは、店1、店2、店3…と店ごとに独立採算で独立経営だったのを、経営統合するようなもんだ。店1は最も効率経営で優れているが、店3は非効率で無駄が多い、ということなら、店1のやり方を他の店2、店3、店4、…に同じくすればいいだけだろ。「店」がこれまでの健保組合とか国保とか、分かれていたというだけ。店長の機能が大事だ、というのなら、そうした機能を温存すべきは温存し、でも、前は店ごとに社長とか専務とか置いていたのを、統合してしまえば社長は1人、専務も1人でいいよね、というだけ。店長はいてもいいでしょ。社長じゃないだけですから(笑)。店ごとに経理もバラバラでやっていたものを、全部一括でやる方が効率がいいでしょ?

だから、店長機能の必要なものは残せるし、店が全部集まって一つの会社となっている、という状態になったとしても、問題などないとしか思えませんが。健保組合はこれに反対しているんだわ。連合も。
公務員はダメだ、役所仕事はダメなんだ、民間の経営感覚を取り入れろ、とか、これまでしつこく言ってきて、ならば、その優れた方式に統一しましょう、法も制度も一緒のやり方に揃えましょう、って言ってるのに、なんで反対すんの?
俺たちのやり方が正しいんだ、優れているんだ、って言ってきたでしょう?そんだけ自信があるんだったら、その方式でいいでいいですよ。



口では、きれい事や大義名分みたいなものを語るんだけれども、突き詰めると、自分の欲望や利害得失が最優先されているだけに過ぎない。




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