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肝炎訴訟に関する雑考~6

2007年10月23日 15時16分02秒 | 社会全般
ちょっと捕捉情報といいますか、資料を見つけたので。


こちらの資料によれば、2001年以降であっても依然としてC型肝炎は発生しています。

推定感染経路

「感染症発生動向調査」によると、2001年から2003年までに、感染して間もない急性のC型肝炎と診断され、報告されたのは累計189例あり、66件(複数記入あり)の推定感染経路が報告されています。内訳は、性的接触16件、静脈薬物使用6件、母子感染1件、輸血8件、水平感染2件、針刺し事故14件、刺青6件、ピアス1件、針治療・針灸2件、剃刀・歯ブラシ2件、その他8件です。

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ここに出ていないものは少なくとも123件あり(重複分が66件に含まれるので、これよりは多いはずでしょう)、全く感染経路が思い当たらないのかもしれないですよね。感染当事者にも思い当たることがなくても、感染する可能性はあると考えられるでしょう。


あと、感染機会の多い医療従事者ではどうなのかと言うと、このような報告がありました。

針刺し事故感染対策室のプログラムと事故発生状況

この中で肝炎症状が出現したのは、259例中2例であった(因みに汚染源が特定できた874例中HCV259例が最も多く、約3割であった)。つまり、輸血や血液製剤投与などを受けていなくとも、「HCVに感染する可能性はある」ということです。参考までにHBV例は147例中1例だった(B型の感染力が強いといっても、希釈倍率を大きくしても感染力はあるけれども、HBV汚染血の1億倍希釈で100回投与したら100回とも感染するということを意味しているわけでない。感染することがある、ということは言えるけれど。なので、針を刺した全部が感染成立となるとも限らないだろう)。

ですから、HCVが微量の血液だと感染しない、とまでは言うことができない。汚染された血液を1単位輸血した場合と、汚染された針を刺した場合では、感染が成立する確率は変わるけれども(たぶん輸血の方が高いであろう)、針刺し程度では感染しない、と言うことはできないということです。日常生活の中で、それくらいの接触が本当に防げているという確信を持てる人はいるでしょうか。


また、こちらの記事では次のように述べられています。

慢性肝炎診療のためのガイドライン 社団法人 日本肝臓学会The Japan Society of Hepatology

(一部引用)

2)様々な感染経路の存在
1960年代までのわが国は,敗戦後の社会,経済状態の劣悪さからの復興途上にあり,衛生環境,医療環境は劣悪な状態にあった.当時は,血液を介して感染するHCVの感染経路が数多く存在していた.主なものを挙げても売血行為,輸血,手術,採血,注射等の医療行為,様々な観血的民間療法,刺青など枚挙にいとまがない.このことは,1960年代半ばに輸血を受けた人の50%以上に輸血後肝炎が起こっていたことによって裏付けられている.

この状態は,その後の社会,経済状態の安定,向上に伴って除々に解消され,1990年代には,輸血も含めた水平感染によるHCVキャリアの新たな出現はほとんどみられない状態となった.このことは,1990年代における献血者集団をはじめとするいわゆる健常者集団におけるHCVキャリアの新規発生は10万人当り1.8~4.5程度に抑えられていること,若年者の集団ではHCV抗体陽性率が0.08%程度と極めて低い値を示すに止まっていることなどにより裏付けられている。

◇◇◇


50年代頃の覚醒剤検挙者は多い時単年度で5万人以上、中毒者や濫用者は推定数十万人、使用経験者は200万人といわれたらしい。15~25歳人口の約5%が覚醒剤使用者ともいわれていた。1955年に20歳だったのは1935年生まれの方々です。今では72歳となっていますね。つまり現在67~77歳くらいの方々が若かりし頃は、今よりもはるかに覚醒剤濫用が行われていた、ということです。この時期にHCVキャリアが爆発的に増加していたであろう、ということです。その子ども世代となれば、50年代後半~60年代前半頃に生まれた方々でありましょうか。そこで垂直感染も水平感染も生じなかった、ということを立証することは困難でありましょう。HCVが母子感染は少ない、といっても、1~5%程度はキャリア化が起こるといわれています。5%未満ではありますが、起こりえるということです。1万人のHCVキャリアの母親からは数百人のHCVキャリアが誕生するということになります。

要するに、50年代~60年代頃にHCVキャリアが社会全体の中で増加し、結果的に手術や輸血などの既往がないにも関わらず水平感染によってキャリアとなった方々はかなり大勢いたであろう、ということなのです。勿論、輸血や血液製剤はキャリアからの献血で汚染されていたものもあったので、HCVが拡散する要因の一部にはなっていたでしょう。けれど、それがなかったとしても感染機会はあったし、検査可能になるまでには誰がキャリアとなってしまったのかも判らなかったのです。肝炎の症状が出てはじめて、治療することくらいしかできていなかったのです。


ありがちな誤解というのは、「血液製剤を投与すれば全例HCVに感染する(100%感染する)」があるでしょう。
感染する可能性はあったし、実際に感染していたことはあったでしょう。けれども、本当に血液製剤を投与された全員が血液製剤を原因として感染したのかどうかなんて判らないのですよ。「感染していなかった人たちの方が圧倒的に多かった」のですから。血液製剤を投与した4人が全員肝炎を発症した例で「100%」発症というのも、何も判ってない一般素人が聞けば「血液製剤投与=100%発症」なのだな、という単純な勘違いをしてしまうのでしょうが、全く違いますよ。
例えば「同じロット」の製剤で、それはたまたま同一人から提供された血液成分が含まれた状態で製造されていて、その製剤が同じ医療機関で同時期に投与されたりすると(同一製品でロットが続き番号になっていることはよくあるでしょう)、全部に感染してしまうことは有り得ます。輸血でも、肝炎スクリーニング検査を全て問題なし、として潜り抜けた血液であっても、同一人からの供血で複数感染例が発生していることはありました。まさしくoccult infection なのですよ。
今の70歳以上のHCV陽性の方々で、過去に覚醒剤も手術も輸血も出産もない人たちは大勢いますよ。では、どうやって感染したのでしょう?「血液製剤以外の理由」があったことは確かなんですよ。キャリアからの水平感染が多くあったからこそ、福岡とか広島なんかでは5~6%もの陽性率となっているのですよ。これらを無視できる程に「血液製剤が感染源である」と確信できる理由というのは何でしょうか?


もうちょっと色々と考えてから、或いは、片方だけではなく、両方とか当事者以外とかの意見を集めて、よく検討してから非難するとかできないですか?報道する側には、そうした責任があるものと思います。
自分がよく判っていない事柄なのであれば、ワイドショー番組などで安易に100%なんて言うべきではないんですよ。





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