まずは野球ネタから。
巨人の補強は、毎度のことながら、金に飽かせたもので、簡単に言えば「お前の持ってる一番いいカードをよこせ」というものである。酷い、酷すぎる。目立つ所では、ヤクルトの主砲と最多勝投手を引き抜いた。ラミレスとグライシンガーである。横浜からは、「160km男」のストッパー、クルーンを持っていった。これで上原は先発に戻せます、という準備が整いました、ということだな。こんだけ揃えれば、ダントツ、ブッチギリで優勝間違いなし、と誰しも太鼓判を押すであろう。夢の「30億打線」だか「40億打線」だか判らんけど、それくらい凄い。
まず、投手は昨年の上位3人がヒサノリと内海がそれぞれ14勝、木佐貫12勝、これにグライシンガー15勝、先発に回るであろう上原は悪くても12は勝つだろう(20勝できる力はあるもんね)。単純に合計すると68勝である。残り10勝くらいを残り全部の投手でポロポロと勝てばいいだけ――何て楽なんだ。先発5人で平均12勝でも60勝が計算できるので、監督はやることない(笑)。ま、ヒサノリとグライシンガーは今季ほど勝てないと思うけど。大体、西武から豊田を持っていったんだから、それだけでも十分恵まれてるのに、今度はクルーンとダブルで抑え、ってなことらしいです。
打線の方は、今季を参考にして、報道されてたジグザグで適当に作ると、こんな感じ。
1番 R高橋
2番 C谷
3番 5小笠原
4番 Lラミレス
5番 3李
6番 6二岡
7番 捕阿部
8番 4脇谷
もう、これ以上どうしたいのかが判りません(笑)。
今季30本以上打った高橋、小笠原、李、阿部で129本、二岡と谷の30本を合わせると159本となります。ここにラミレスの29本が加わるので188本!どんだけ打てば気が済むんですか。ハムはチーム全体でも73本しかない、ってあれほど言ってるでしょう。2人分しかないんですってば。打点は、阿部101、ヨシノブと小笠原が88、二岡83、不調にあえいだ李で74、谷でさえ53もある。487打点。ここにラミレスの122打点が加わる。これだけで既に609打点。ハムは年間526得点で優勝だったけど。
過去の大惨事を思い起こせば、パッと浮かぶだけで広沢、石井、江藤、ローズ、小久保、ぺタジーニ、と好きなだけかき集めたのに、どれ程の効果があったのか?ああ、清原を忘れていたよ、清原。ゴメン。ああ、中村ノリは違うな。誤解がありがちかもしれないが、ノリは取ってない。こんだけ集めたというのも、凄まじい。これで優勝できない年が多かったんだから、笑える。
ラミレスは凄い成績だね。過去5年間を集計してみたら、こんな感じだった。
(全て平均の数字)
安打数 176.4
本塁打 31.6
打点 114.4
四死球 30.4
打率 0.3057
出塁率 0.3375
振るわない年でも160安打以上を打っており、打率が低くてもそこそこ働いているのと、打点があるので勝負強さが光る。特に5年連続100打点以上は国内選手では思い浮かばないけど、誰かいたかな?一番悪い年で104打点だからね。日本の通算成績でも7年で752打点だそうで、これは驚異的な数字だ。ローズの平均打点99を上回る(11年で1089打点)ペースだ。けれど、巨人に来たことが裏目に出るかもしれないよ、ローズみたいに。
要するに巨人というのは、単品性能のいいものを(金で)揃えて勝つ、という大変合理的な作戦をいつも採用している、ということです。名付けて「ジャイアンツ戦略」とでも申しましょうか。個々の成績を見れば、「到底敵いませんぜ」ということです。でも優勝できない。この前は、ようやくリーグ優勝というか最多勝だったけど。でもシリーズには進めなかった。中日に3タテ食らったからね(笑)。これだけ揃ってるのだから、勝って当たり前。けれども、勝負に必ずしも勝てないのだ。一方では、日ハムみたいなチームが日本一になったり、連続でリーグ優勝したり、CSも勝ち抜いてシリーズに進出したりするのだ。
サラリーマンで言えば、年収1000万円以上の人たちだけで作られた、「社内オールスター」チームみたいなものだ。けれども、もっと「安月給」チームに同じ仕事をさせてみると、案外と安月給チームの方がいい仕事をして社内オールスターチームに勝ってしまう、ということだ。個々の能力比較では高額年俸の人たちの方が高く評価されており、安月給チームの人は何分の一かの給料しかもらってなくて、能力評価もそれなりに、ということなのだ。けれど、チーム同士の比較ということになれば、安月給チームが勝ってしまったりするのである。このことが重要なのだ。
日本はこれからも世界の競争の只中に置かれる。完全に降りることを選択するか、競争を挑まれればこれを受けて立つか、選ばなくてはならない。代表例では、米国のような競争が強い個人とか企業を作る、みたいに学者やコンサルなんかが言うのだけれども、本当にそうなのだろうか?そんなに簡単に「勝利の戦略」が判るものなのであろうか?
野球ばかりではない。サッカーもそうだろうと思う。元々は、思い描く理想的な戦術というか、勝ち方みたいなものがあると思う。ノムさんじゃないけど、セオリーもあるしデータも重要だ。それが実行できる個人の能力とか、高い技術なんかも必要だ。でも、答えは本当に一つなのだろうか?勝つ為の答えが決まっており、一つの結論が出せるのであれば、それが実行できたチームは常勝無敗となるだろう。現実には、そんなチームは未だに登場していないのだけれどもね(笑)。
年末のトヨタカップで浦和レッズが大健闘し、ミランに1-0で惜敗だった。あれも、両チームを比較すれば、個人の能力での優劣は明らかであろう(いや、こんなこと言うとアレなのだけど、貶しているわけではありません)。世界的なクラブであり、スター軍団と言ってもいいミランと、一方の浦和は無名の安月給社員のチームみたいなものだろう。個人の能力差は歴然としており、どう見ても浦和に勝てる要素は殆どない。それでも、一生懸命にやれば「1-0」というスコアを残せるくらいには健闘できる、ということだ。負けにくいように戦う、というのは苦しいし、つまらないし、華やかさもない。でも、他に方法がないのだから、しょうがない。攻撃側はこうした防御重視の敵を打ち破るのは結構難しいのだ。圧倒的に強力な攻撃力をもって攻めたとしても、これを突破するのはかなり困難なのだ、ということ。そういう戦い方もある、ということだ。浦和が残したスコアには、そうした戦い方の一面が顕れているように思えた。
よく出る話として、「長所を伸ばすやり方」と「短所を潰すやり方」の比較みたいな話がある。できることをどんどん磨くのと、できない部分をできるようにするのでは、どちらがいいのか、みたいな話とか。日本が本格的に混迷に陥ったのは、「今の自分にできること」を磨くのは全て止めてしまったせいではないか、と思っている。それは、浦和がミランと同じサッカーをしなければならない、ということで、完全にやり方を変えるようなものだ。日ハムが巨人になろうとして、これまでのやり方全てを否定し生まれ変わろうとするのと同じだ、と言ってもいい。個々に見れば、高給取りの花形軍団と、安月給軍団が同じやり方で同じように戦えば、能力差が歴然としている分だけ負けるだろう。浦和がミランのサッカーを真似して戦ったとして、結果は恐らく惨敗だろう。できることをやる、というのと、できないのにやろうとする、というのでは全然別だからだ。テニスでもいいよ。プレースタイルが全く違うのに、自分に合わないやり方をいくらマネしてみたって、勝てるようにはなれないのと同じだ。セオリーはあるけれど、必ずしも「どのスタイル・戦い方が正しい」という答えみたいなものはまだ不明なのだ。
そもそも、「ミランのサッカーが正しい、みたいに答えがあるのだろうか?」と疑問に思わないのは何故なのだろう。日本が「英米のやり方が正しい」と信じて疑わない理由とは一体何なのだろうか?日本は戦い方を無理矢理変えようとした結果、これまでできていたことが全くできなくなったのだ。それは、ジャイアンツの勝ち方を目指して、中日やハムが同じようにやっても、「先行者」であるジャイアンツに追いつけるはずもない。ハムが必死で金をかき集めてみたところで、ジャイアンツのような補強に追いつけるはずもない(笑)。そういうもんだ。なので、チームに合った戦い方を身に付け、「今自分ができること」をまず確実にできるようにしていく、その上で足りない部分を補う、というようなことを考えるのではないかな。
勿論、欠点を補うことは大切だ。でも、それを極端に意識しすぎると、今までの良さが消えてしまうかもしれない。長所がなくなってしまうなら、その改造は止めた方がいい、ということだ。まず、長所を伸ばすことは必要だと思う。強力な武器になるし、自信の源になるからだ。それは得意の勝ちパターンを持つ、ということにも通ずる。日本人には自分に向いた戦い方、というのがあって、必ずしも外国の真似をしたから勝てるようになる、というものでもない。日本人には日本人のサッカーがあるはずであり、個々の能力差は「組織力」で対抗するとか、スピードで対抗するとか、そういった何かを活かす以外にはない。それは、いくら頑張ってみても、日本人はブラジル人やイタリア人やオランダ人にはなれないからだ。同じくなることなどできない。なので、自分の特性を活かし、敵の長所にも対抗できるような戦術や戦い方をしない限り、勝てるようにはなれないだろう。
学ぶことは大切であり、常に日本以外のチームの戦い方を研究したり、海外の指導者から教えてもらったりするのは、とても役立つだろう。それはあくまで自らの中に取り込んでいくものであり、自分を殺す為のものではない。日本には、日本独自の文化や風習などがあり、それは日本人の特性を形成している土台の部分でもあるだろう。日本人がどんなにブラジル選手に憧れようとも、ブラジル人と同じくなれないように、基礎を変えることなどできないのである。この基礎は長い年月を経て形成されたものであり、歴史の作り出した偶然からできているので、取り替えることは本来的に無理なのだ。例えば、日本人のサッカー選手は「フィジカルが弱い」とか、「瞬発力がない」とか言われても、どうしようもできない。アフリカの選手のような、「全身バネ」みたいな動きもできない。そういうのを補うには、やはり組織力で対抗せざるを得ないと思う。今の日本は、かつては擁していたはずの「特異な組織力」を奪い去られたのではないかと思う。そういう知恵を吹き込まれたからだ。日本人がブラジルのサッカーを真似てやったとしても、ボロボロだろうと思うが。個々の能力で局面を打開せよ、と求められ、個人技で突破し個人技で勝て、と無理矢理変えられたようなものだ。組織力は失われ、個々の局面では戦い方を知らない日本人が、次々と外国人選手に破れ去っていったようなものではないか、と。こうして、日本の強みであった部分はなくなってしまったであろう。
日本がジャイアンツみたいに個々の能力だけで勝つことを考えたチームになったら、一体どうなってしまうのだろう?
本当にこんな戦略を選択することが望ましいのか?
私は、そんなチームよりも、個々では劣るかもしれないが組織力で対抗できるチームの方を望んでいるのだが。多分、その方が日本人に合っていて、長所を活かせそうな気がするからだ。
巨人の補強は、毎度のことながら、金に飽かせたもので、簡単に言えば「お前の持ってる一番いいカードをよこせ」というものである。酷い、酷すぎる。目立つ所では、ヤクルトの主砲と最多勝投手を引き抜いた。ラミレスとグライシンガーである。横浜からは、「160km男」のストッパー、クルーンを持っていった。これで上原は先発に戻せます、という準備が整いました、ということだな。こんだけ揃えれば、ダントツ、ブッチギリで優勝間違いなし、と誰しも太鼓判を押すであろう。夢の「30億打線」だか「40億打線」だか判らんけど、それくらい凄い。
まず、投手は昨年の上位3人がヒサノリと内海がそれぞれ14勝、木佐貫12勝、これにグライシンガー15勝、先発に回るであろう上原は悪くても12は勝つだろう(20勝できる力はあるもんね)。単純に合計すると68勝である。残り10勝くらいを残り全部の投手でポロポロと勝てばいいだけ――何て楽なんだ。先発5人で平均12勝でも60勝が計算できるので、監督はやることない(笑)。ま、ヒサノリとグライシンガーは今季ほど勝てないと思うけど。大体、西武から豊田を持っていったんだから、それだけでも十分恵まれてるのに、今度はクルーンとダブルで抑え、ってなことらしいです。
打線の方は、今季を参考にして、報道されてたジグザグで適当に作ると、こんな感じ。
1番 R高橋
2番 C谷
3番 5小笠原
4番 Lラミレス
5番 3李
6番 6二岡
7番 捕阿部
8番 4脇谷
もう、これ以上どうしたいのかが判りません(笑)。
今季30本以上打った高橋、小笠原、李、阿部で129本、二岡と谷の30本を合わせると159本となります。ここにラミレスの29本が加わるので188本!どんだけ打てば気が済むんですか。ハムはチーム全体でも73本しかない、ってあれほど言ってるでしょう。2人分しかないんですってば。打点は、阿部101、ヨシノブと小笠原が88、二岡83、不調にあえいだ李で74、谷でさえ53もある。487打点。ここにラミレスの122打点が加わる。これだけで既に609打点。ハムは年間526得点で優勝だったけど。
過去の大惨事を思い起こせば、パッと浮かぶだけで広沢、石井、江藤、ローズ、小久保、ぺタジーニ、と好きなだけかき集めたのに、どれ程の効果があったのか?ああ、清原を忘れていたよ、清原。ゴメン。ああ、中村ノリは違うな。誤解がありがちかもしれないが、ノリは取ってない。こんだけ集めたというのも、凄まじい。これで優勝できない年が多かったんだから、笑える。
ラミレスは凄い成績だね。過去5年間を集計してみたら、こんな感じだった。
(全て平均の数字)
安打数 176.4
本塁打 31.6
打点 114.4
四死球 30.4
打率 0.3057
出塁率 0.3375
振るわない年でも160安打以上を打っており、打率が低くてもそこそこ働いているのと、打点があるので勝負強さが光る。特に5年連続100打点以上は国内選手では思い浮かばないけど、誰かいたかな?一番悪い年で104打点だからね。日本の通算成績でも7年で752打点だそうで、これは驚異的な数字だ。ローズの平均打点99を上回る(11年で1089打点)ペースだ。けれど、巨人に来たことが裏目に出るかもしれないよ、ローズみたいに。
要するに巨人というのは、単品性能のいいものを(金で)揃えて勝つ、という大変合理的な作戦をいつも採用している、ということです。名付けて「ジャイアンツ戦略」とでも申しましょうか。個々の成績を見れば、「到底敵いませんぜ」ということです。でも優勝できない。この前は、ようやくリーグ優勝というか最多勝だったけど。でもシリーズには進めなかった。中日に3タテ食らったからね(笑)。これだけ揃ってるのだから、勝って当たり前。けれども、勝負に必ずしも勝てないのだ。一方では、日ハムみたいなチームが日本一になったり、連続でリーグ優勝したり、CSも勝ち抜いてシリーズに進出したりするのだ。
サラリーマンで言えば、年収1000万円以上の人たちだけで作られた、「社内オールスター」チームみたいなものだ。けれども、もっと「安月給」チームに同じ仕事をさせてみると、案外と安月給チームの方がいい仕事をして社内オールスターチームに勝ってしまう、ということだ。個々の能力比較では高額年俸の人たちの方が高く評価されており、安月給チームの人は何分の一かの給料しかもらってなくて、能力評価もそれなりに、ということなのだ。けれど、チーム同士の比較ということになれば、安月給チームが勝ってしまったりするのである。このことが重要なのだ。
日本はこれからも世界の競争の只中に置かれる。完全に降りることを選択するか、競争を挑まれればこれを受けて立つか、選ばなくてはならない。代表例では、米国のような競争が強い個人とか企業を作る、みたいに学者やコンサルなんかが言うのだけれども、本当にそうなのだろうか?そんなに簡単に「勝利の戦略」が判るものなのであろうか?
野球ばかりではない。サッカーもそうだろうと思う。元々は、思い描く理想的な戦術というか、勝ち方みたいなものがあると思う。ノムさんじゃないけど、セオリーもあるしデータも重要だ。それが実行できる個人の能力とか、高い技術なんかも必要だ。でも、答えは本当に一つなのだろうか?勝つ為の答えが決まっており、一つの結論が出せるのであれば、それが実行できたチームは常勝無敗となるだろう。現実には、そんなチームは未だに登場していないのだけれどもね(笑)。
年末のトヨタカップで浦和レッズが大健闘し、ミランに1-0で惜敗だった。あれも、両チームを比較すれば、個人の能力での優劣は明らかであろう(いや、こんなこと言うとアレなのだけど、貶しているわけではありません)。世界的なクラブであり、スター軍団と言ってもいいミランと、一方の浦和は無名の安月給社員のチームみたいなものだろう。個人の能力差は歴然としており、どう見ても浦和に勝てる要素は殆どない。それでも、一生懸命にやれば「1-0」というスコアを残せるくらいには健闘できる、ということだ。負けにくいように戦う、というのは苦しいし、つまらないし、華やかさもない。でも、他に方法がないのだから、しょうがない。攻撃側はこうした防御重視の敵を打ち破るのは結構難しいのだ。圧倒的に強力な攻撃力をもって攻めたとしても、これを突破するのはかなり困難なのだ、ということ。そういう戦い方もある、ということだ。浦和が残したスコアには、そうした戦い方の一面が顕れているように思えた。
よく出る話として、「長所を伸ばすやり方」と「短所を潰すやり方」の比較みたいな話がある。できることをどんどん磨くのと、できない部分をできるようにするのでは、どちらがいいのか、みたいな話とか。日本が本格的に混迷に陥ったのは、「今の自分にできること」を磨くのは全て止めてしまったせいではないか、と思っている。それは、浦和がミランと同じサッカーをしなければならない、ということで、完全にやり方を変えるようなものだ。日ハムが巨人になろうとして、これまでのやり方全てを否定し生まれ変わろうとするのと同じだ、と言ってもいい。個々に見れば、高給取りの花形軍団と、安月給軍団が同じやり方で同じように戦えば、能力差が歴然としている分だけ負けるだろう。浦和がミランのサッカーを真似して戦ったとして、結果は恐らく惨敗だろう。できることをやる、というのと、できないのにやろうとする、というのでは全然別だからだ。テニスでもいいよ。プレースタイルが全く違うのに、自分に合わないやり方をいくらマネしてみたって、勝てるようにはなれないのと同じだ。セオリーはあるけれど、必ずしも「どのスタイル・戦い方が正しい」という答えみたいなものはまだ不明なのだ。
そもそも、「ミランのサッカーが正しい、みたいに答えがあるのだろうか?」と疑問に思わないのは何故なのだろう。日本が「英米のやり方が正しい」と信じて疑わない理由とは一体何なのだろうか?日本は戦い方を無理矢理変えようとした結果、これまでできていたことが全くできなくなったのだ。それは、ジャイアンツの勝ち方を目指して、中日やハムが同じようにやっても、「先行者」であるジャイアンツに追いつけるはずもない。ハムが必死で金をかき集めてみたところで、ジャイアンツのような補強に追いつけるはずもない(笑)。そういうもんだ。なので、チームに合った戦い方を身に付け、「今自分ができること」をまず確実にできるようにしていく、その上で足りない部分を補う、というようなことを考えるのではないかな。
勿論、欠点を補うことは大切だ。でも、それを極端に意識しすぎると、今までの良さが消えてしまうかもしれない。長所がなくなってしまうなら、その改造は止めた方がいい、ということだ。まず、長所を伸ばすことは必要だと思う。強力な武器になるし、自信の源になるからだ。それは得意の勝ちパターンを持つ、ということにも通ずる。日本人には自分に向いた戦い方、というのがあって、必ずしも外国の真似をしたから勝てるようになる、というものでもない。日本人には日本人のサッカーがあるはずであり、個々の能力差は「組織力」で対抗するとか、スピードで対抗するとか、そういった何かを活かす以外にはない。それは、いくら頑張ってみても、日本人はブラジル人やイタリア人やオランダ人にはなれないからだ。同じくなることなどできない。なので、自分の特性を活かし、敵の長所にも対抗できるような戦術や戦い方をしない限り、勝てるようにはなれないだろう。
学ぶことは大切であり、常に日本以外のチームの戦い方を研究したり、海外の指導者から教えてもらったりするのは、とても役立つだろう。それはあくまで自らの中に取り込んでいくものであり、自分を殺す為のものではない。日本には、日本独自の文化や風習などがあり、それは日本人の特性を形成している土台の部分でもあるだろう。日本人がどんなにブラジル選手に憧れようとも、ブラジル人と同じくなれないように、基礎を変えることなどできないのである。この基礎は長い年月を経て形成されたものであり、歴史の作り出した偶然からできているので、取り替えることは本来的に無理なのだ。例えば、日本人のサッカー選手は「フィジカルが弱い」とか、「瞬発力がない」とか言われても、どうしようもできない。アフリカの選手のような、「全身バネ」みたいな動きもできない。そういうのを補うには、やはり組織力で対抗せざるを得ないと思う。今の日本は、かつては擁していたはずの「特異な組織力」を奪い去られたのではないかと思う。そういう知恵を吹き込まれたからだ。日本人がブラジルのサッカーを真似てやったとしても、ボロボロだろうと思うが。個々の能力で局面を打開せよ、と求められ、個人技で突破し個人技で勝て、と無理矢理変えられたようなものだ。組織力は失われ、個々の局面では戦い方を知らない日本人が、次々と外国人選手に破れ去っていったようなものではないか、と。こうして、日本の強みであった部分はなくなってしまったであろう。
日本がジャイアンツみたいに個々の能力だけで勝つことを考えたチームになったら、一体どうなってしまうのだろう?
本当にこんな戦略を選択することが望ましいのか?
私は、そんなチームよりも、個々では劣るかもしれないが組織力で対抗できるチームの方を望んでいるのだが。多分、その方が日本人に合っていて、長所を活かせそうな気がするからだ。