電脳筆写『 心超臨界 』

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( マルセル・プルースト )

不都合な真実 《 ワン・チャイナ・ポリシーの本質 》

2024-01-16 | 05-真相・背景・経緯
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つまり台湾海峡の両側で、全く中身の異なるワン・チャイナ・ポリシーが主張されていた。双方とも、自らがチャイナの正統政府であると訴えていた。そして、双方が言うチャイナの地理的範囲には、台湾も含まれていたという事実である。そしてアメリカ政府はそのことを「単に知っている」と表現したのである。決して、台湾が中華人民共和国の不可分の領土だと承認したわけではないのだ。この原点にトランプは戻ろうというだけの話である。


◆ワン・チャイナ・ポリシーの本質を見誤るな

『希望の新日米同盟と絶望の中朝同盟』
( 藤井厳喜、 徳間書店 (2017/8/25)、p171 )

ワン・チャイナ・ポリシーの見直しというと、それこそが米中関係の基本であると勘違いしている人が多い。そしてトランプがワン・チャイナ・ポリシーの変更を言うと、すでに確立した米中関係の基礎を従来の条約やコミットメントを無視して一方的にトランプが破壊しようとしていると多くの人が思ってしまう。実際、中国共産党はそのような宣伝を展開している。ところが事実関係に基づけば、トランプの言っていることの方が正当な主張なのである。

これは、1972年のニクソン訪中の折の米中共同宣言(上海コミュニケ)を正確に読めばわかることである。この時点でワン・チャイナ・ポリシーとは、極めて曖昧なものであった。ワン・チャイナ・ポリシーというと一般に「アメリカは台湾を中華人民共和国の不可分の領土であると承認している」と考えがちだが、こういった外交上の約束をしたことはアメリカは全くないのである。

1972年時点での上海コミュニケでのワン・チャイナ・ポリシーとは、次のような認識をアメリカ側が表明したことであった。つまり、「すべてのチャイニーズは台湾をその一部とするところの一つのチャイナの存在を信じている。そしてそのことをアメリカは認知している」。

この「認知している」という表現には英語の「acknowledge」という言葉が使われている。これは単に「知っている」、やさしく言えば「know」ということにすぎない。承認する(approve)とか、同意する(agree, consent)という言葉は使われていないのだ。

1972年の時点では、台湾に存在する中華民国は、自らがチャイナの正統政府であると主張しており、その点で、ワン・チャイナ・ポリシーを訴えていた。中華人民共和国の方も、自らが正統政府であると訴えており、ワン・チャイナ・ポリシーを唱えていた両方のチャイナの版図には、台湾も含まれると認識されていた。それが上記のような文言となったのである。

つまり台湾海峡の両側で、全く中身の異なるワン・チャイナ・ポリシーが主張されていた。双方とも、自らがチャイナの正統政府であると訴えていた。そして、双方が言うチャイナの地理的範囲には、台湾も含まれていたという事実である。そしてアメリカ政府はそのことを「単に知っている」と表現したのである。決して、台湾が中華人民共和国の不可分の領土だと承認したわけではないのだ。この原点にトランプは戻ろうというだけの話である。

なぜ、こんなことになったのかと言えば、中国共産党の外交詐術にアメリカの政治家が欺瞞され続けてきたからである。中国共産党はワン・チャイナ・ポリシーの本来の意味を少しずつズラして拡大解釈を続け、多くの海外の指導者にワン・チャイナ・ポリシーとは「中華人民共和国の台湾領有権の承認である」と、騙すことに成功してきたのだ。これは日本の政財界のリーダーについても、あてはまることだ。

南シナ海問題で、「サラミ・スライス戦術」ということが言われている。チャイナはサンゴ礁に掘っ立て小屋を建て、徐々に拡大して遂にはサンゴ礁全体を埋め立て、そこに軍事要塞を築いてしまった。長い年月をかけて少しずつ目立たないような形で建設を続け、既成事実を作り上げたのである。

日本を始めとする他国への領海侵犯にも同じ戦術が用いられている。徐々に、領海侵犯の頻度を高め、その地域を紛争海域とし、やがては領土と領海を略奪するという小さな既成事実の積み上げ戦術である。解釈を1ミリずつ、1センチずつ動かし、遂には土地の境界線を数メートルも数百メートルもズラして侵略を合理化しようという誠に狡猾なやり方である。ワン・チャイナ・ポリシーでも同じことが行われてきたのだ。
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