電脳筆写『 心超臨界 』

真の発見の旅は新しい景色を求めることではなく
新しい視野を持つことにある
( マルセル・プルースト )

読むクスリ 《 名人・達人・凡人——塚原卜伝 》

2024-08-12 | 05-真相・背景・経緯
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卜伝が剣の極意を伝授しようと考えている、優秀な弟子がいた。その弟子がある日、道端につながれた馬の後ろを通ろうとしたところ、ぱっ、と馬が後ろ足を跳ね上げた。とっさに弟子は飛びのき、蹴られずにすんだ。「ひらり、と身を翻したあの素早さ、さすが卜伝の高弟だけのことはある」。見ていた人たちは、そういってほめた。ところが、それを聞いた卜伝は機嫌を悪くした。「そうか。あの男は極意を授けるような器ではないな」。


◆名人・達人・凡人

『読むクスリ 19』
( 上前淳一郎、文藝春秋 (1993/06)、p150 )

塚原卜伝(ぼくでん)を知っていますか。

室町末期に実在した剣客だが、講談本などで武勇伝が語られすぎ、本当のところはどのへんか定かではない。

これも、まあ半ばつくり話だろうけれど、湯浅常山が江戸時代に書いた『常山紀談』に、つぎのような晩年のエピソードが出てくる。

     *

卜伝が剣の極意を伝授しようと考えている、優秀な弟子がいた。

その弟子がある日、道端につながれた馬の後ろを通ろうとしたところ、ぱっ、と馬が後ろ足を跳ね上げた。

とっさに弟子は飛びのき、蹴られずにすんだ。

「ひらり、と身を翻したあの素早さ、さすが卜伝の高弟だけのことはある」

見ていた人たちは、そういってほめた。

ところが、それを聞いた卜伝は機嫌を悪くした。

「そうか。あの男は極意を授けるような器ではないな」

人びとは訝(いぶか)り、では卜伝ならどうするか試してみようと、暴れ馬を通り道につないでおいた。

馬がいるのに気づいた卜伝は、うんと離れて通ったので、人と見れば蹴る癖のあるその馬も、おとなしくしている。

拍子抜けした人びとに、卜伝はいった。

「馬が跳ねた瞬間、素早く身を翻すのは、技が優れているように見える。しかし、馬は蹴るものだということを忘れて近づいたのはうかつだった。ほんとうの名人は、近寄らないものだよ」

技だけ優れていても、せいぜい達人。名人にはなれない、というのだ。

     *

「私はこの話を、学校での危機管理のあり方を説く場合に、よく引き合いにだすのです」

と東京・八王子で中学校長を務めたあと、日本教育新聞編集委員の柴山一郎さん。

現代の学校には、さまざまな危機が突然訪れる。

たとえば、いじめられた子が自殺する。

校庭の外周に張った金網が破れていて、そこから入り込んだ近所の幼い子がプールで溺れる。

「教師には、そういう思いがけない危機をきちんと管理していく能力が要求されます」

後者の例でいうと、水泳が上手な先生をすぐ呼んで、溺れた子を助け上げる。

人口呼吸ができる先生を探し、救急車を呼ぶ。

幼児の親を見つけさせて、いち早く連絡する。

場合によっては警察に連絡し、新聞記者と応対もしなければならないだろう。

「そういうことにかけては、非常に手際のいい先生がいるものです。むろん、それはそれで大事ですが、それがはたして本当の危機管理能力なのかどうか。馬をひらりとかわす、達人どまりではないでしょうか」

では、学校で名人といえるのは、どんな先生なのか。

「それは、金網をいつも見回って破れていれば直し、幼児が入れないように処置する先生です。いじめも同じです。起きる前に防げる先生が、真の名人なのです」

暴れ馬をひらりとかわすのは、鮮やかなだけに周囲の目をひく。

しかし、金網の破れを直すのはだれの目にもふれず、手柄にならない。

「それだけに、派手な達人になりたがる人が多い。しかし、凡人の悲しさ、たいていは馬に蹴られて目を回すのがオチですね」
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