電脳筆写『 心超臨界 』

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( ゲーテ )

◆パール判事の日本無罪論 《 原子爆弾の投下を命じた者 》

2024-06-10 | 05-真相・背景・経緯
§4 東京裁判――日本に犯罪国家の烙印を押すために演じられた政治ショー
◆パール判事の日本無罪論 《 原子爆弾の投下を命じた者 》


「もし非戦闘員の生命財産の無差別破壊というものが、いまだに戦争において違法であるならば、太平洋戦争においてはこの原子爆弾使用の決定が、第一次世界大戦中におけるドイツ皇帝の指令、および第二次世界大戦中におけるナチス指導者たちの指令に近似した唯一のものであることを示すだけで十分である。このようなものを、現在の被告の所為(しょい)の中には見出すことはでき得ない」(パール判事)


『パール判事の日本無罪論』
( 田中正明、小学館 (2001/10/5)、p176 )

もちろんパール博士は、海外における日本軍隊の残虐行為や非人道的行為が皆無であるなどといっているのではない。「よしんばこれらの事実が、検察側の主張どおりではないにしても、また証拠がいかに不満足なものであろうとも、ここに示された非人道的行為の多くのものは、実際に行なわれたであろうことは否定できない」と、その事実を認めている。

「しかしながら」とバール博士はいう。「これらの、恐るべき残虐行為を犯したかもしれない人物は、この法廷には現れていない。その中で生きて逮捕された者の多くは、おのれの非行に対して、すでにみずからの生命をその代価として支払わされている。かような罪人が、各地の裁判所で裁かれ、断罪された者の長い名簿が、幾通か検察側からわれわれに示されている。このような断罪に服した罪人の表が、長文にわたっているということ自体が、すべてかような暴行の容疑者に対して、どこにおいても決して、あやまった酌量(しゃくりょう)がなされなかったということについて、十分な保証をあたえてくれるものである。しかしながら、現在われわれが考慮しているのは、これらの残虐行為の遂行に、なんら参加していない人びとに対する問題である。

すでに残虐行為を犯したかどにより、おびただしい数にのぼる日本の軍人、軍属が、その直接の上官とともに、戦勝国の厳重なる裁判にかけられ、処断されている。その中には罪なくして処刑された者、あるいはささいな罪にもかかわらず、不公正な裁判によって重罪を負わされた者など、数限りなくいたであろう。現に、この裁判の当時、巣鴨プリズンに拘留されているBC級戦犯をはじめ、シベリアに中国にシンガポールにオーストラリアにビルマに……各地の拘置所を満たしている日本軍人および軍属の数は実におびただしく、処刑において決して不十分であったなどとはいえない。だがしかし、これらの事件と東京裁判とは、いったいどういう関係があるというのだろうか。パール博士は「われわれは冷静に、果たしてこれらの罪が、われわれの裁いている被告らに及ぶものであるかどうかを見きわめる必要がある」と述べている。

すなわち、ここにいる25名の被告らが、ある特定の個人または軍隊に対して、残虐行為を命令し、授権し、許可したときにおいてのみ、その罪は彼らに及ぶのである。果たして25名の被告において、そのような事実があったかどうか。博士は、そのような事実を裏づける証拠も材料も記録も全くない、この点において、ナチ・ドイツの指導者が犯したがごとき重大な犯罪とは全然違うとして、つぎのごとく述べている。

「本官がすでに指摘したように、ニュルンベルグ裁判では、あのような無謀にして残忍な方法で、戦争を遂行することが彼らの政策であったことを示すような、重大な戦争犯罪人から発せられた多くの命令、通牒および指令が、証拠として提出されたのである」。しかるに東京裁判においては、そのような証拠は何一つ提示されていない。ナチの指導者と日本の指導者を同一視したところに、東京裁判の大きなあやまりの一つがある。

そこでパール博士は、語調をあらためてこう述べているのである。

「われわれは第一次欧州大戦中、ドイツ皇帝がかような指令を発して罪に問われたことを知っている。ドイツ皇帝ウイルヘルム2世は、かの戦争の初期に、オーストリア皇帝フランツ・ジョゼフにあてて、つぎのような旨の書簡を送ったと称せられている。すなわち、
 『予は断腸の思いである。しかしすべては、火と剣のいけにえとされなければならない。老若男女を問わず殺戮(さつりく)し、1本の木でも、1軒の家でも立っていることを許してはならない。フランス人のような堕落した国民に対し、ただ一つ、かような暴虐をもってすれば、戦争は、2カ月で終焉(しゅうえん)するであろう。ところが、もし予が人道を考慮することを容認すれば、戦争は幾年間も長びくであろう。したがって予は、みずからの嫌悪の念をも押し切って、前者の方法を選ぶことを余儀なくされたのである』
 これは彼の残忍な政策を示したものであり、戦争を短期に終わらせるための、この無差別殺人の政策は、明らかに重大なる犯罪行為である。
 われわれの考察の下にある太平洋戦争において、もし前述のドイツ皇帝の書簡に示されていることに近いものがあるとするならば、それはアメリカの指導者によってなされた原子爆弾使用の決定である。この悲惨な決定に対する判決は、後世が下すであろう」

第一次大戦において、無差別殺人を命令したウイルヘルム2世は、国際法の違反と人道上の罪によって戦争犯罪人に指名された。一瞬にして老若男女の差別なく、幾十万の非戦闘員を殺戮し、1本の木、1軒の家も立っていることを許さない原子爆弾の投下を命令し、授権し、許可した者に対する処断はいったいどうするのか。ウエッブ裁判長は、この裁判は敗戦国日本を裁く裁判で、連合国側の責任に関する問題は一切取り上げないとし、このような人道上の重大問題を含めて、弁護人側のいい分はすべて却下された。この不公正なる裁判に対して、パール博士は沈痛なる怒りをこめて、つぎのように述べている。

「かような新兵器の使用に対する世人の感情の激発というものが不合理なものであり、たんに感情的なものといえるかどうか。また国民全体の戦争遂行の意志を粉砕することをもって勝利を得る手段として行なった無差別殺戮が、法にかなったものであるかどうか、本裁判ではこれを却下しているが、これは第二次大戦を通じて最大の課題である。否、この原子爆弾の出現は、将来の人類の運命に関連する非常に重大な問題を含んでいる。国際軍事裁判と銘うったこの裁判において、これを取り上げないというなら、その判決は、歴史が下す以外にないであろう。原子爆弾は、戦争の性質および軍事目的遂行のための合法的手段に対する根本的な変化をもたらしたものとして、人類はこれを銘記すべきであろう」

「もし非戦闘員の生命財産の無差別破壊というものが、いまだに戦争において違法であるならば、太平洋戦争においてはこの原子爆弾使用の決定が、第一次世界大戦中におけるドイツ皇帝の指令、および第二次世界大戦中におけるナチス指導者たちの指令に近似した唯一のものであることを示すだけで十分である。このようなものを、現在の被告の所為(しょい)の中には見出すことはでき得ない」

パール博士は、広島における世界連邦アジア会議で、つぎのことを提言している。

「いったいあの場合、アメリカは原子爆弾を投下すべき何の理由があったであろうか。日本はすでに降伏すべき用意ができていた。ヒロシマに原子爆弾を投下される2カ月前から、ソビエトを通じて降伏の交渉を進める用意をしていたのである。当時日本は、連合国との戦いにおいて敗北したということは明白にわかっていた。彼らはそのことを十分知っていたにもかかわらず、実に悲惨な破壊力をもつところの原爆を、あえて投下したのである。しかもこれは一種の実験としてである。われわれはそこに、いろいろな事情を汲みとることができないでもない。しかしながら、これを投下したところの国から、いまだかつて真実味のある懺悔(ざんげ)のことばを聞いたことがない。これから世界の平和を語るうえにおいて、そのような冷酷な態度が許されていいものだろうか。
 この原爆投下について、これまでアメリカはいろいろと弁明しているが、その説明あるいは口実はどのようなものであったか。われわれはこれを十分考えてみる必要がある。原爆を投下するということは、男女の別なく、戦闘員と非戦闘員の別なく、無差別に人を殺すということである。しかも、もっとも残虐なる形においての大量殺人である。瞬間的な殺人であるばかりでなく、放射能による後遺症は徐々に人体をむしばみ、戦争が終わってからのちも、多数の市民が次から次へと倒れ、あるいは、悪性な遺伝子に悩まされている。生きながら地獄の苦痛にあえいでいる善良なる市民が、今日なお巷(ちまた)にあふれているのである。
 しかしながら、彼らの原爆投下の説明、あるいは口実は何であるか。『もしもこれを投下しなかったならば、幾千人かの白人の兵隊が犠牲にならなければならなかったろう……』。これがその説明である。われわれはこの説明を聞いて満足することができるであろうか。いったい、幾千人の軍人の生命を救う代償として、罪のない老人や子供や婦人を、あるいは一般の平和的生活を営む市民を、幾万人幾十万人も殺していいというのだろうか。その家や財産とともに市街の全部を灰にしてもいいというのだろうか。このような空々しい説明や口実がなされたということそれ自体、この説明で満足する人びとが、彼らの中に多数いることを証明するものである。われわれはこうした手合いと、二度とふたたび人道や平和について語りたくはない」(拙著『平和の宣言』14~15ページ)
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