電脳筆写『 心超臨界 』

計画に失敗すれば、失敗を計画したことになる
( アラン・ラケイン )

不都合な真実 《 政府の意思決定プロセス――猪瀬直樹 》

2024-07-15 | 05-真相・背景・経緯
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新型コロナウイルス対策にみる最高意思決定は、「御前会議」と「連絡会議」、さらには官邸官僚・今井尚哉と三段構えの構造となっており、きわめて不透明であった。新型コロナウイルス感染症は「歴史的緊急事態」と認定され、関連する会議の議事録などの作成が義務づけられることになったが、政府中枢がこのような状態では意思決定のプロセスは空虚なまま蒸発してしまいそうだ。


◆政府の意思決定プロセス

『昭和16年夏の敗戦』(あとがきより)
( 猪瀬直樹、中央公論新社 (2020/6/24)、p268 )

たとえば2月27日に決定された小中学校の一斉休校について、振り返ってみる。

安倍首相をトップに「新型コロナウイルス感染症対策本部」が立ち上げられたのは1月30日であった。全閣僚に補佐官を加えて30人が官邸のテーブルに就いた。対策本部会合は1月30日から一斉休校が決められる2月27日までの間に15回開かれている。いずれも開催時間は短く、自由討議の時間はない。担当大臣の発言は公表されているが、厚労大臣が5分、他の大臣が1人かせいぜい2人で2分か3分、首相が3分ぐらいの割り振りで、それぞれ発言を読み上げているだけだ。これだけで15分が過ぎてしまう。

対策本部会議の時間を一覧表にする。

①1月30日・10分 ②31日・15分 ③同日・15分 ④2月1日・15分 ⑤5日・13分
⑥6日・11分 ⑦12日・13分 ⑧13日・18分 ⑨14日・8分 ⑩16日・11分
⑪18日・11分 ⑫23日・17分 ⑬25日・19分 ⑭26日・13分 ⑮27日・10分

一斉休校を決めた2月27日の会合は10分間だった。対策本部会議はただの発表の場にすぎなかったのだ。「首相動静」をチェックすると、一斉休校を決めた10分間の対策本部会合の直前、午後5時23分から54分までの31分間、官僚たちが執務室に呼ばれている。

政治家は加藤厚労大臣と菅義偉(すがよしひで)官房長官と2人の官房副長官の4人、その他は事務担当の官房副長官、首相補佐官、内閣危機管理監、国家安全保障局長、主要省庁事務次官など16人。裏の意思決定機関である。表の対策本部はお飾り、「御前会議」のようなものであったことがわかる。

対策本部会合で安倍首相が休校を打ち出す前に、菅官房長官ら20人が官邸で「連絡会議」の時間を設けていたのだ。

戦前においても、政府と大本営(軍部)の「連絡会議」であらかじめ結論をつくり、天皇隣席の「御前会議」で国家意思を決定した。つまり「御前会議」とは、儀式としての会議であり、僕はあえて一斉休校という重大決定をした「対策本部会合」を揶揄してその言葉を使っている。

さらに「首相動静」や関係者の証言を重ねると、むしろ官房長官は一斉休校に反対であり「連絡会議」も中身は空疎だった。すでに午前中、今井尚哉(たかや)首相秘書官兼補佐官が安倍首相に一斉休校を進言していたのだ。その後、午前11時8分から30分間、事務方の文科省事務次官と初等中等局長が呼ばれ、萩生田(はぎうだ)大臣が安倍首相から直接知らされたのは午後1時29分になってからなのである。

新型コロナウイルス対策にみる最高意思決定は、「御前会議」と「連絡会議」、さらには官邸官僚・今井尚哉と三段構えの構造となっており、きわめて不透明であった。

新型コロナウイルス感染症は「歴史的緊急事態」と認定され、関連する会議の議事録などの作成が義務づけられることになったが、政府中枢がこのような状態では意思決定のプロセスは空虚なまま蒸発してしまいそうだ。

安倍首相は新型コロナウイルス対策本部で一斉休校を「決断」した。しかし、その「決断」がどのようなファクトとロジックに基づいていたのか開示されていないし、記者会見でも説明がなかった。そのため、国民はその後の外出規制や自粛要請、経済対策にも不満をつのらせることになった。

政治的リーダーの役割は、数値目標を示しながら、みずからの言葉で国民に説明し協力を求めることなのだ。

しかし記者会見においても安倍首相は、官邸官僚が用意した原稿をプロンプターごしに棒読みするだけである。これでは国民に切実さが伝わらない。

対策本部ができた1月30日より2週間余り遅れて2月26日、感染症対策専門家会議がスタートした。また2月25日に厚生労働省クラスター対策班が稼働し始めた。

そして3月13日、新型コロナウイルス特別措置法の改正・施行によって伝家の宝刀である緊急事態宣言を出すことができるようになり、緊急事態宣言に関わる基本的対処方針等諮問委員会がつくられた。諮問委員会のメンバーは専門家会議とほぼ重なっているにもかかわらず、経済・雇用対策まで検討することになっている。本来、科学者の役割は限定的なものであり、経済対策に連動させた出口戦略、総合的判断は、政治的リーダーシップにもとづかなければならない。

一斉休校を「独断」と批判された安倍首相は、緊急事態宣言以降、逆に専門家に丸投げしているように見える。今後、求められるのは政府の中枢機能の再構築である。官邸のどこで、だれが、どのような情報・周知にもとづいて討議し、意思決定するのか。それをどう記録して公開し、国民に説明するのかが問われているのである。そして、首相自身の内面を通過した言葉がほしい。

東日本大震災、新型コロナウイルスの蔓延、現在のあやまちが過去のあやまちと相似形に重なってはいないか。いまこそ我われの歴史意識が試されている。

  2020年初夏
            西麻布の寓居にて 猪瀬直樹
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