電脳筆写『 心超臨界 』

心地よいサマーレインのように
ユーモアは一瞬にして大地と空気とあなたを洗い清める
( ラングストン・ヒューズ )

◆「民のかまど」を歴史の教科書に入れませんか

2024-07-11 | 05-真相・背景・経緯
§7 心が臨界質量を超える――誇りある日本を取り戻すために
◆「民のかまど」を歴史の教科書に入れませんか


「もしも仁徳天皇の人間像も、『民のかまど』の逸話もみな創作で、神話に近いものだとするのなら、それは実在された天皇陛下の実話であるよりも、もっと凄い。はるかに強烈な日本の誇りです。われらアジアでいかに成すべきかを考えるための、より大切な宝物になります」。「なぜなら、創作であればあるほど、記紀が編纂された奈良時代という古い時に、民こそが主である、おのれの欲を超えて民に尽くすことこそが指導者であるという現在の民主主義のもっとも高い理念を、すでに持っていたことになります」。


◇「民のかまど」を歴史の教科書に入れませんか

『危機にこそぼくらは甦る』
( 青山繁晴、扶桑社 (2017/8/2)、p139 )

著名な国立大学の先生から一度、手紙を頂いたことがあります。

「あなたを信頼して講演を聴きに行ったのに、伝承にすぎない『民のかまど』の話を聞かされた。仁徳天皇自体、実在しないと思われる。神話ではないが神話に近いような伝承をなぜ真実味を込めて熱心に話すのか」という趣旨が書かれてありました。

ぼくはまず、わざわざ手紙を頂いたことに、こころから感謝しました。

そして、こう返したのです。

「仰るとおり、仁徳天皇はおふたりの天皇陛下を合わせて創られた天皇像だという学説が、播磨国風土記(はりまのくにふどき)などを頼りに出されていたり、諸説あります。『民のかまど』も、記紀(『古事記』と『日本書紀』)による創作だという説もあります。ぼくは、ぼくなりに資料を読み込んで仁徳天皇は実在され、たとえば皇后陛下にとってはすこし頭の痛いところのあった、いわば人間的なお方だと考えていますし、『民のかまど』もまさしく実話だと判断しています。しかし、このお返事の肝はそこにはないのです。僭越ながら、仰っていることは、話が逆さまだと考えます」

「もしも仁徳天皇の人間像も、『民のかまど』の逸話もみな創作で、神話に近いものだとするのなら、それは実在された天皇陛下の実話であるよりも、もっと凄い。はるかに強烈な日本の誇りです。われらアジアでいかに成すべきかを考えるための、より大切な宝物になります」

「なぜなら、創作であればあるほど、記紀が編纂された奈良時代という古い時に、民こそが主である、おのれの欲を超えて民に尽くすことこそが指導者であるという現在の民主主義のもっとも高い理念を、すでに持っていたことになります」

「これこそ誠に失礼ながら、お手紙から覗(うかが)えるのは、神話であるのなら、それは駄目だという観念ではないでしょうか。ギリシャ神話ならなぜロマンで、日本の神話ならなぜ右翼的な話なのですか」

「神話や伝承は、洋の東西を超えて、その民族や国民の理念、哲学そして本音を表すものです。神話や伝承に、オリジナルな日本型民主主義の根本哲学が盛り込まれているのなら、そこにこそわたしたちは学び、活かすべきを活かして、敗戦から今日まで日本国民を分けて分けて分けてきた日々を乗り越えていく力にすべきではないでしょうか」……教授からの返信は、ついにありませんでした。

それでもぼくは今も感謝しています。

たった一通づつのやり取りであっても、こうした議論を通して、ぼくもささやかな哲学を整理できる。
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