「わずか9億円の取引のために植民地をめぐる紛争からアメリカという最大のお客と対立するのは愚(ぐ)の骨頂(こっちょう)だ。9億円程度の利益は他地域との経済交流で埋め合わせがつく。この際、日本はその植民地をすべて放棄した方がよい。そうすれば、他の欧米諸国を道徳的に圧倒することもできるだろう」 . . . 本文を読む
第一大戦後の、この原の政策は、日本が厳しい国際社会の中で生きていけるだけの力を持とうとしたものでした。それは国際社会、とくに中国大陸において、西欧列強と経済レベルで対等に競争し得るだけの国民経済の力量をつけることが意図されていたのです。 . . . 本文を読む
小村の構想はちがっていました。「ロシアはあくまで韓国を支配するつもりだ。だから、利害を同じにする英国と結んで、ロシアがわが国の希望を受け入れざるをえなくするのが得策である」。小村はこのような意見書を書き、妥協派の元老たちを懸命に説得し、日英同盟の締結を決定させました。 . . . 本文を読む
明治維新で活躍した政治家は数多く暗殺されました。第一世代の坂本龍馬は幕府が滅亡するのを見ることなくたおれました。あとを引き継いだ江藤新平、大久保利通は明治国家の土台づくりをしました。そして、それを明治憲法という形で仕上げたのが伊藤博文でした。明治維新は3つの世代の3段ロケットで完成したのです。 . . . 本文を読む
諭吉は学問を身につけ、文明を取り入れることを熱心に説きました。しかし、諭吉はただの「西洋かぶれ」ではありませんでした。文明を取り入れるのは日本国家の独立が真の目的で、文明はそのための手段にすぎないと言っています。世界を回って西洋人にこき使われるアジア人の無気力なさまを見てきた諭吉の強い願いでした。 . . . 本文を読む
渋沢は、幕末の動乱期に農民から幕臣になった人です。株式会社(当時の言葉で「合本(ごうほん)会社」といいます)の制度をつくることによって、いわゆる明治の元勲と肩をならべ、近代日本を築く指導者の一人となりました。 . . . 本文を読む
大久保利通は薩摩藩の下級武士の出身です。新政府と大久保の今日があるのも、明治維新の行動を共にしてきた武士たちの働きがあったからです。しかし大久保は一切の私情を断ち切って、彼らの身分を廃止する政治を断行しました。古い日本を改革するために働いた人々の利益にならないどころか、その身分さえなくしてしまうような革命は世界でも例がありません。 . . . 本文を読む
私たち夫婦が、シカゴの友人から夕食に招かれたときのことである。友人は肉を切り分ける際に何かヘマをした。私はそれに気づかなかった。もし気づいたとしても、そんなことにこだわるわけがない。けれども、彼の奥さんはそれに気づいて、私たち夫婦の目の前で彼に文句をつけたのである。 . . . 本文を読む
さすがにジョージ・バーナード・ショーは傑物だった。つぎの彼の言葉は、まことに的を射ているではないか。「みじめな気持ちになる秘訣は、自分が幸福であるか否かについて考える暇を持つことだ」 . . . 本文を読む
何年も前のことだが、私が保険業界に飛び込んだばかりのころ、私は仕事に対して限りない熱情を持っていた。ことろが、ある事が起こった。私は落胆のあまり、自分の仕事に愛想をつかし、転業しようかとも考えた。ある日曜の朝、悩みの根源を突き止めてみようという考えが胸に浮かばなかったら、たぶん商売を変えていたにちがいない。 . . . 本文を読む
最後はカブト虫の大群が押し寄せ、その巨木を地上に倒してしまった。虫たちは樹皮を破って侵入し、少しずつではあるが間断のない攻撃によって、徐々に巨木の生命力を破壊してしまったのである。長い歳月に耐え、雷鳴をものともせず、嵐に屈しなかった森の巨木が、人間の指でひねりつぶされてしまう小さな虫たちのために、ついに倒されてしまったのだ。 . . . 本文を読む
苦悩は人並みはずれて頑強な人間をも病気にする。グラント将軍は、このことを南北戦争の終盤に発見した。その話はつぎのとおりである。グラントは9カ月にわたって南軍の首都リッチモンドを包囲しつづけた。リー将軍の部隊は、戦列の乱れと飢えのために敗走してしまった。 . . . 本文を読む
【 카포네처럼 극악무도한 사람도 자기 자신을 악인이라고는 생각지 않고 있었다 】 カポネほどの極悪人でも、自分では、悪人だと思っていなかった。それどころか、自分は慈善家だと大まじめで考えていた。世間は、彼の善行を誤解しているのだというのである。 . . . 本文を読む
育はずっと眠っていた。私たちはそっと近づいて話しかけてみる。「育、育。いい子だねぇ。がんばろうね」。すると指先が動いたような気がした。あるときは祈るような気持ちで、「パパもママもここにいるよ」。育の目から涙が落ちた。「泣いているのかな」。「まさか、眠っているんだよ」。夫と二人で育の顔を眺める。それを聞いていた看護婦さんがいった。「ときどき育ちゃんは泣くのよ」。そうか! 泣いているんだ。私たちの声が聞こえているんだ。私の目にも涙がたまる。がんばれ育! . . . 本文を読む