20世紀に入って人類は食事を急速に変化させていったのだが、変化させていく力は経済力、つまり豊かさであることがわかるのは、変化がかなり進んだ後である。その食の大変化は伝統的な食事の放擲(ほうてき)によって生じたもので、ある程度変化が進むと食の伝統の断絶を意味するけれども、それには国境がなく、経済的に豊かになった国では、みな同じ一定の方向への変化が起きていき、わが国も例外ではなかった。 . . . 本文を読む
私の大学時代の友人から聞いた話です。彼女のお父さんが、「一日一個ゴミを拾う」という運動を始めたそうです。それには会則も、会員組織も存在しません。年会費やニュースレターもありません。「今日から、自分は一日一個ゴミを拾う会のメンバーになる」と決めるだけでいいというのです。 . . . 本文を読む
ニューヨークのコロンビア大学で教えることに決め、契約を交わした。後は、当時の学長で、数年後に米国大統領へ就任するドワイト・アイゼンハワーが署名するだけ。授業の下準備をするためにコロンビアを訪れると、なんとアイゼンハワーは財政難を理由に署名を拒否したことを知ったのである。突然失業の身になって茫然(ぼうぜん)としながら地下鉄の駅へ向かうと、ニューヨーク大学(NYU)のビジネススクールで教えている顔見知りの男に出くわした。 . . . 本文を読む
プレゼンテーションや勉強法など、自分なりのユニークな手法を広める傾向が目立っている。共通するのは単なる自己流ではなく、直接的なわかりやすさを追求し、誰でも実践できること。「オレ流メソッド」ブームの背景とは。 . . . 本文を読む
いろいろなタイプの経営者がいる。だが、どの経営者にも必要とされる共通の資質がある。そのことを、ドラッカーは次のように語る。「経営者がなさねばならぬ仕事は学ぶことができる。しかし経営者が学び得ないが、どうしても身につけていなければならない資質が一つある。それは天才的才能ではなく、実は、その人の品性なのである」 . . . 本文を読む
ここしばらくの間、ユージン・スミスをめぐり人の縁をたどる旅が続いた。旅をつらぬくタテ糸は、ヒューマニズム。ヨコ糸は、写真。写真はいずれも、ありふれた日常に尊い人間の営みを見る。 . . . 本文を読む
アーネスト・セリアーニから始まったユージン・スミスをめぐる知の旅は、『ユージン・スミス 楽園へのあゆみ』に解説を書いた長倉洋海さんで終わる。夢から多くのことを学ぶ伝統をもつクレナック族を始めとしたアマゾンの先住民を取材した写真集『人間が好き―アマゾン先住民からの伝言』を出したフォト・ジャーナリストだ。ユージンは、取材対象となった人と長い時間をかけて生活を共にするなかで写真を残してきた。長倉さんも世界の紛争地を取材する13年間の体験を通じて、取材に時間をかけるスタイルになっていく。時間をかけることによって初めて見えてくるものがあるのだ。 . . . 本文を読む
日本人の食事に起こしたのは、米国人とは全く逆の方向の変化である。米国の畜産業者が国内で減少した消費量の穴を輸出で埋め合わせたいと思うのは当然のことで、日本はまさにそれを吸収するような変化を、構造的に食事に起こしていたのである。 . . . 本文を読む
近年、憲法改正の論議が盛んになっています。いわゆる保守派の方々も憲法改正をやるべきだという声を高くしておられます。私も憲法改正は必要なことだと思いますし、決して改憲そのものを批判するわけはありません。しかし、ここで立ち止まって、「憲法とは何か」ということをもう一度考えてみる必要があると思うのです。 . . . 本文を読む
もし再び桂・ハリマン協定が復活し、シベリア鉄道が南満洲鉄道と一体運用されヨーロッパと連結すると、一番困るのはどこか。答えはドイツです。ドイツが心配していたのは、太平洋方面からのロシアへの武器の供給です。南満洲鉄道が日本とアメリカのものになり、東清鉄道やシベリア鉄道と有機的につながった効率的運用が始まると、ロシアがカナダ(英国)やアメリカから、武器を輸入するルートができてしまいます。 . . . 本文を読む
当時の共産主義ソ連は、すなわちスターリンは、諸国がソ連に攻めかかる際に、日本こそがその尖兵の役割を担うと信じていたのですね。その見通しが当たっていたかどうかはさておくとして、ソ連が日本をひじょうに恐れていたことは事実のようです。それは、おそらく身の毛もよだつ怖ろしさだったでしょう。ゆえにソ連を防衛し安全を確保するためには、なにがなんでも日本の国内を大混乱におとしいれ、できることなら革命を惹き起こさせなければなりません。したがって、日本共産党が性根をすえて階級闘争を闘ってくれる大波瀾が、祖国を守りぬくため絶対に必要な第一の課題となりました。 . . . 本文を読む
連合軍が押収して1946年にニュルンベルク裁判に提出されたドイツの記録文書は、恐怖をあおるためにドイツ人征服者が組織的に強姦したことを立証している。ポーランド、ユダヤ、ロシアの女たちが強姦され、多くの場合、むごたらしく殺された。情容赦なく何百人もの少女や女性が迫害され、軍用娼家へ追い込まれ、そこで強制売春に使役された。いわゆる『慰安勤務』である。それが管理的に行われた大量殺人の前段階だったこともしばしばだった。 . . . 本文を読む
北朝は、元来は武家方が状況処理の便宜上から作ったものであるから、どちらかといえば状況倫理的であった。足利尊氏などは、どこから見ても固定倫理を持っていた人間とは思われない。それに反して南朝は、楠木正成から北畠親房に至るまで、正統論という固定倫理で支えられており、これが力の根源であった。しかし、南朝の柱石とも言うべき楠木氏が状況倫理に動かされるや、立ち続けることができなくなったのである。 . . . 本文を読む
日本の記録で最初に死んだ例は、火神であるカグヅチをお産みになったイザナミノミコトであるが、このときの『古事記』の表現は神避坐也(かみさりましぬ)となっているし、『日本書紀』のほうでは、終矣(「一書ニ曰ク」として神退去矣)と漢文ふうに書いてあるが、これも「かみさりましぬ」と読むのである。「避」にしろ「終」にしろ、「退去」にしろ、バラバラになって消えてしまうのでないことは、これに続く記紀の記事を読めばよくわかる。 . . . 本文を読む
若き日の山本周五郎は五幕の喜劇を書こうとしていた。それは共産主義のドグマに挑んだ主題で、最小限度にでも頭脳と胃袋と生殖器の能力が均一でなければ、公平なる分配はあり得ない。との判断を主題とする構想であった。人間においては生殖器の能力が均一ではないのだとの主張は非常に重大な提唱である。 . . . 本文を読む