私は徐々に自分の症状の重さに気づき始めていた。
自分の周りを見渡すと、多数の点滴、鼻からのチューブ、気道確保のためのチューブ、導尿のチューブ、心電図、血圧、血中酸素濃度測定用の線、いわゆるスパゲッティ症候群って言われる状態だった。
自覚症状は、まず呼吸がまともにできない、酸素マスクを通して送られてくる酸素が口から吸うとそのまま鼻から出てしまうのだ。そして不思議な感覚、動かない手が右手、左手ともう一本あるように感じるのである。血中酸素濃度を改善するために、ついに気道を切開してカニュウレイを挿入する緊急手術を部屋ですることになった。部屋の前には、知らせを聞いた友人や会社の同僚が多数来ていたようだが面会謝絶のため会えずじまいであったが、私が結婚式の司会を務めた、以前会社に勤務していた女子社員の子が、手術寸前の部屋に入ってきて私の姿を見て驚きの余り泣き出したのを今でも覚えている。
手術は無事終わり、口から入れてあったプラスチックのチューブを抜いたとき、家内に舌を見せ曲がってないか確認をして貰った所、何とあれだけ曲がっていた舌がまっすぐに戻っていたのである。