
(麻生首相の政権基盤も相当怪しくなっていますが、メドベージェフ・ロシア大統領、この人の権限がどれほどあるのかもよくわかりません。
“flickr”より By World Economic Forum
http://www.flickr.com/photos/worldeconomicforum/374718127/)
戦後はじめて日本の首相としてサハリンを訪れた麻生首相は、18日午前、サハリン州ユジノサハリンスクでメドベージェフ大統領と会談を行いました。
麻生首相は北方領土問題について、「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した」、「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と語っています。
また両首脳が、プーチン首相の5月の訪日でも合意したことを明らかにしています。
一般的には、北方領土問題の実質的進展については、これまでの経緯、また、権限を持つプーチン首相が譲歩に否定的とも見られていることもあって、悲観的な見方が強いようです。
常識的にはそういうことでしょうが、個人的には解決の可能性がまったくないとも思っていません。
従来のしがらみに囚われ、自分の主張がいれられることだけを求め、対立の姿勢を崩さないままでは何も変わりません。
逆に言えば、そうしたしがらみをいったん捨てて、相手に相手の立場・主張もあることを前提に、何がお互いにとって得策なのかを考えれば新たな発想も生まれる余地はあるのではないでしょうか。
【中国・ロシアの領土問題の事例】
昨年7月、ロシアのラブロフ外相と中国の楊潔外相が中露間の東部国境に関する追加議定書に調印し、未解決のまま残されていたアムール川(中国名・黒竜江)とウスリー川の中州の国境線が画定しました。
かつて69年にはウスリー川の中州ダマンスキー島(珍宝島)をめぐって武力衝突さえ起した両国が、平和裏に問題を決着させたことは非常に感慨深いものがありました。
この合意は、ロシアが実効支配していた領土の一部を中国に「割譲」するかたちとなっています。
これは異例のことですが、プーチン政権は、地元ハバロフスク地方の議員の反対に対し、地元への経済支援と強権で反発を抑え込んで実現させました。
「極東の発展には中国との関係強化が不可欠」という考えも背景にあったとみられています。
“ソ連崩壊に伴って極東部が激しい人口流出に見舞われた中、経済発展と人口増加の著しい中国との国境を画定させることがロシアの安全保障上、重要だったことが大きい。ロシア側にはまた、欧米諸国に対抗して国際政治上の地位を回復するうえで、中国との協調関係が得策と判断された事情もある。中国側も、需要の急増する石油・天然ガスなどエネルギーの供給源として、ロシアとの友好関係を重視した。”【08年7月22日 産経】
結局、不毛の対立より、関係改善を選択した指導者の“決意”でしょう。
具体的には、係争地を面積でほぼ等分する方策がとられました。
こうした互いの利益を重視した関係改善策の延長として、例えば今日のニュースで伝えられるよなことがあります。
****ロシア:中国に20年間石油供給 250億ドル融資見返り****
中露両国は17日、中国がロシアに対し250億ドル(2兆3000億円)を融資する見返りとして、ロシアが20年間にわたり中国に対し石油を供給する長期契約に合意した。これにより東シベリアの原油を太平洋岸に輸送する「太平洋パイプライン」の中国支線の建設など、2国間のエネルギー協力事業が加速するとみられる。(中略)
両国は昨年10月、東シベリアのスコボロジノから中国・大慶まで延びる同パイプライン中国支線の建設で基本合意したが、融資条件など条件交渉が長引いていた。ロシアでは経済危機の影響を受け、ロスネフチ、トランスネフチ両社とも資金不足に陥っており、パイプラインの建設続行に際して、中国からの融資を求めていた。
【2月18日 毎日】
***********************
【ロシアの関心を極東へ】
日ロ関係で見ると、今回会談の表向きの目的である、日本企業も参加する石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」液化天然ガス(LNG)製造工場が稼働します。
LNG出荷のうち、約65%が日本向け、残りは韓国と米国に出荷されるそうです。
開発段階で、ロシア政府から環境法違反などを指摘され、主導権がロシア側に強引に奪われるといったこともありましたが、日本にとっても資源輸入先の多チャンネル化は重要な問題です。
一方、ロシアは、原油価格の下落で政府が見込んでいた歳入が3分の2の水準となったことを受けた予算の再編成作業について、政府支出を削減するか、金融危機対策費を削減するか、難しい選択を迫られているとも伝えられます。【2月16日 ロイター】
また、ロシアの国内総生産(GDP)が09年、ドル換算で20%のマイナス成長となる見通しで、クレジットリスクが高まる恐れがあるとの見方も出ています。【2月18日 ロイター】
麻生首相ならずとも、ロシアの関心を極東に向けさせる好機であると考えます。
【例えば、面積ニ等分案など】
“独創的で型にはまらないアプローチ”が何を意味するのかは知りませんが、麻生首相の「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。」といった発言からすると、中ロ間でとられたような面積による二等分方式も想定されているのでしょうか。
四島を面積で等分し、歯舞、色丹、国後島と択捉島の南部を日本領とする考え方です。
もちろん日本側に批判は多々あるところであり、ロシア側もおいそれと乗れない案でしょうが、別にこの案に限らず、要は解決へ向けた“意志”があるかないかの問題です。
国内からの批判を避けるためには、今までどおり自己主張し、結局相手がこれを認めないから進展しない・・・そうした対応を繰り返せばすむ話ですが、それでいいのか?という問題です。
【変革の意志】
“チェンジ”“変革”という言葉は非常に魅力的な言葉です。
しがらみを捨てる覚悟を持てば、今まで到底不可能に思えたことも現実のものになる可能性があります。
反米の先頭を走るチャベス・ベネズエラ大統領ですが、アメリカ国務省のデュギッド副報道官代行は17日、国民投票で大統領や国会議員の再選制限を撤廃したベネズエラについて、「われわれは引き続き前向きな関係の維持に努める」との見解を示し、関係修復の道を閉ざしていない考えを明らかにしています。
イランのアハマディネジャド大統領は17日、同国の国営テレビとのインタビューで、米国が真に政策の転換を行えば、米国とイランおよび同地域との関係を変えることは可能だと改めて強調しています。
どれが本心で、どれが口先だけなのかはともかく、変革の意志があればこうした関係改善も不可能ではありません。
プーチン首相の来日は5月とのことですが、「政治が決断しなければいけない」という麻生首相の決断を期待したいものです。
ロシアだけでなく、日本経済もガタガタで余力を失いつつあります。
お互い不毛の対立を続けている場合ではないと思うのですが。
ただ、麻生首相がその時期までもつのか、はなはだ心もとない政局になっていますが。