孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  収まらない深南部イスラム過激派の分離独立運動

2009-02-23 20:39:09 | 国際情勢

(タイのビーチでシュノケーリングを楽しむイスラム教徒
仏教国のイメージが定着しているタイでは国民の95%が仏教徒ですが、南部のナラティワート、ヤラー、パッターニの3県には多くのマレー系イスラム教徒が暮らしています。
この深南部と呼ばれる地域ではイスラム教徒が多数派で仏教徒が少数派と、立場が逆転します。
“flickr”より By tö
http://www.flickr.com/photos/2ni/2484262302/)

【「アジア通貨基金(AMF)」構想】
タイのプーケットで22日開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国の13カ国による財務相会議において、かねてより日本が提案していたIMFのアジア版とも言える「アジア通貨基金(AMF)」構想に近い形の枠組みがつくられることが決まりました。

“対外債務の返済が困難になった国にドルを融通する「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」の規模を総額1200億ドル(約11兆円)に増やすことを決めた。域内各国の経済状況を独自に監視する専門チームをつくり、国際通貨基金(IMF)が支援を決めなくても必要に応じて支援する枠組みにも合意した。
日本政府はアジア通貨危機のさなかの97年に、IMFのアジア版とも言える「アジア通貨基金(AMF)」構想を提案したが、米国の反対で頓挫した。一連の合意案が具体化すれば、「ASEAN+3」が独自の判断で参加国を経済支援できる余地が広がり、AMF構想に一歩近づく。”【2月22日 朝日】

ところで、タイ国内の政治的混乱によって開催が延期され、その後も二転三転していたASEAN首脳会議の日程が、27日から3月1日にかけてタイ中部ホアヒンで開かれることで決定したようです。
タクシン派の一部市民団体はホアヒンでの反政府活動を示唆しており、警察当局は厳戒態勢を敷くとも報じられています。【2月22日 時事】

【深南部 過激派によるテロで3400人以上が死亡】
タクシン派と反タクシン派の抗争は収まった訳ではありませんが、タイには報じられることが少ない、しかし、もっと深刻な対立が存在しています。
マレーシアに近い“深南部”と呼ばれる地域における少数派イスラム教徒による分離独立運動です。
2004年1月以降、過激派によるテロで3400人以上が死亡しています。
歴代政府は懐柔策と弾圧策を繰り返す形で、混乱の収拾に努めてきましたが、成果は上がっていません。

昨年10月には、当時のソムチャイ首相がこの地域を訪れ、南部での分離主義者によるテロは下火になったと表明しました。
“ソムチャイ首相は記者団に対し、「住民の福利に気を配る必要がある。南部の混乱は私の緊急課題の一つだ」と指摘するとともに、「現地情勢の説明を受けた。情勢は改善したと判断しているが、まだ満足できる状態ではない」と述べた。そのうえで首相は「混乱が続く南部での緊急課題は、治安担当者の安全向上と装備の改善、教育の改善、それに主要作物であるゴムの価格を支えることである」と強調した。”【08年10月29日 時事】

しかし、タイ国内のタクシン派・反タクシン派の政治抗争もあって、この地域への対策が充分になされてきたとは思えません。

【3日で3件の頭部切断事件】
****武装勢力が夫婦を射殺、夫の首を切断 タイ南部で****
タイ南部ヤラ県で22日早朝、30代の夫婦が分離独立派とみられる武装勢力に射殺され、夫の頭部が切断される事件が起きた。
警察が事件現場のゴムのプランテーションに到着すると、武装勢力は携帯電話を使って現場に残した爆発物を爆発させた。この爆発で警官1人がけがをした。
ヤラ県で頭部の切断事件が起きたのは過去3日で3件目。20日には教師を地元の学校に送り届けて基地に戻る途中の兵士10人が襲撃され、うち2人の兵士が頭部を切断された遺体で見つかっている。【2月22日 AFP】
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“ヤラ県で頭部の切断事件が起きたのは過去3日で3件目”・・・・3年や3ヶ月ではなく、3日で3件の頭部切断事件というのは、すさまじい状況です。

世界不況の波は当然タイにも及んでいますので、タイ国内、深南部地域の経済情勢は悪化しつつあると思われます。
経済情勢が悪化すれば、過激なテロ活動もまた、活発化することが懸念されます。
タイには、同国軍がミャンマーから船で漂着したイスラム系少数民族ロヒンギャ族を海上に追い返したり虐待した疑惑もあります。

本来は、タクシン派だ、反タクシン派で争っている場合ではないのですが、重要課題をさておき、つまらない抗争に明け暮れるのは別にタイに限った話でもありません。

コメント
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