孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  イランのタリバン対策 減少したケシ栽培 アメリカからの奉加帳

2009-02-02 21:03:16 | 国際情勢

(オバマ新大統領の就任式をアフガニスタンの基地で観るアメリカ軍兵士 “flickr”より By anslatadams
http://www.flickr.com/photos/freckles55/3214044307/)

注目されていたイラクの地方選挙は概ね平穏に行われたようです。
これを受けてオバマ米大統領は1日、NBCテレビとのインタビューで、イラク駐留米軍の「相当数」が1年以内に帰還できるとの見通しを明らかにしています。
また、イラク当局によると、1月にイラク国内でテロや戦闘に巻き込まれて死亡した民間人は140人で、2003年のイラク戦争開戦後では最低となったそうです。

イラクから部隊を引上げ、アフガニスタンへ軸足を移していく(更に、それでアフガニスタンが多少なりとも安定すれば、早々にアフガニスタンからも手を引き国内問題に専念する)という、アメリカの思惑にとって、順調な滑り出しのようです。
ただ、そのアフガニスタンは相変わらず出口が見えません。

今日2月2日も、アフガニスタン南部ウルズガン州の州都タリンコートにある警察施設で自爆テロがあり、訓練中の警察官が少なくとも19人死亡、8人が負傷しました。
自爆犯の男は警官の制服を着て徒歩で施設に侵入、朝の訓練のために集まっていた警官隊に近づき犯行に及んだそうです。【2月2日 共同】

そんなアフガニスタン関連で目にとまったニュースを3件。

****タリバンとの対話に反対=日本政府との連携期待-イラン駐日大使*****
イランのアラグチ駐日大使は30日、時事通信のインタビューに応じ、アフガニスタン問題をめぐり米政権内にイスラム原理主義勢力タリバンとの対話を推す声があることについて、「テロ組織との対話は認められない」と述べ、対話に反対する姿勢を明確にした。
また、米軍のアフガン増派戦略については「状況が改善するとは限らない」と指摘、カルザイ政権の基盤強化や職業訓練などソフト面の政策を重視すべきだとの考えを示した。

一方でタリバン打倒や麻薬対策などアフガン安定の必要性では西側諸国と利害が一致すると説明、「安保理常任理事国入りを目指す日本が中東地域などで積極的な外交的役割を果たすことは重要であり、イランは日本を支援できる」と述べ、アフガン問題での日本政府との連携に期待感を表明した。【1月31日 時事】 
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かつてタリバンがアフガニスタンを支配した時期、シーア派のイランとスンニ派イスラム原理主義のタリバンは敵対関係にあり、全面戦争の危機もありました。
イランのモッタキ外相も昨年10月19日の記者会見で、米欧が治安改善に向け、旧支配勢力タリバンとの直接対話に前向きなことに対し「失敗は避けられない」「(へびの)一つの穴で二度(指を)かまれないよう気を付けるべきだ」とペルシャのことわざを引用して警告しています。

一方で、アメリカからは、イランがタリバンに武器支援しているとの話も聞こえてきます。
以前も書いたように、イランにとってはタリバンが権力を握るのも困るが、アメリカがアフガニスタンの泥沼にはまるのは歓迎・・・というところでしょうか。

アラグチ駐日大使もあげている麻薬対策がらみで、アフガニスタンでのケシ栽培が減少しているとのニュースがありました。
ただ、これは政府・アメリカの施策が功を奏したというより、市場原理にもとづく結果のようです。

****アフガンでケシ生産が2年連続減少…価格高騰の穀物に転作*****
国連薬物犯罪事務所(本部・ウィーン)は1日、アフガニスタンでのケシ栽培状況に関する最新報告をまとめ、アヘンやヘロインの原料となるケシの生産量が今年、2年連続で減少するとの見通しを示した。
ケシが市場でだぶついて取引価格が下がる一方、世界的な食糧危機などで2008年に穀物価格が高騰したことを背景に、ケシ生産者の一部が穀物栽培に転じているためという。(中略)
アフガン保健省は「政府や国際社会の締め付けが厳しくなり、リスクと価格をはかりにかけて転作が進んでいる」と指摘する。
アフガンは、世界に出回るケシの約90%を生産しており、ケシは旧支配勢力タリバンなどイスラム過激派勢力の資金源となっている。【2月2日 読売】
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ケシ栽培は記事にもあるように、タリバンにとって資金源という重要な意味合いがあります。
キロ当たり価格は07年当時の半額程度に落ち込んでいるそうです。
資金がなければ武器も調達できない、武器がなければ戦闘も継続できない・・・ということで、アフガニスタンの今後には大きな影響がある問題です。
それにしても、タリバンに武器を売っているのは誰なのでしょうか?

資金がなければ戦闘ができないのはアメリカも同じです。
特に、世界不況で国内経済対策にいくら資金があっても足りない時期です。

****アフガン支援で「奉加帳」 米、韓国に要請か*****
アフガニスタンへの支援を巡り、米オバマ政権が湾岸戦争時と同じように各国に負担を求めて「奉加帳」を回す可能性があるとの情報を韓国政府が得ていたことがわかった。韓国政府は支援の検討を始め、1月30日には農業や職業訓練分野での支援協力について日本側と協議。日韓で視察団を派遣する案も浮上している。

韓国側によると昨年12月、オバマ氏の政権引き継ぎチームで外交政策を担当していた関係者が韓国の米韓関係専門家と面会。アフガンへの米軍駐留費用が年間300億ドル(約2兆7千億円)に達する状況を説明し、「各国に提示するため、米国が求める支援のリストを作る予定だ」と伝えた。
そのうえで韓国に対しては「軍事分野に限らず、教育でも医療でも、韓国ができることはたくさんある」と要請した。日本と同様、アフガニスタン派兵に慎重論が強い韓国の国内事情に配慮したとみられる。「湾岸戦争を思い出してほしい。最初に支援を断った日本は、後で色々助けてくれたが、感謝されなかった」とも語ったという。
また1月になって同チームの別の関係者は、訪米した韓国政府関係者らと会った際、「オバマ氏が要請する前に支援を発表すれば、オバマ氏は非常に感謝するだろう」と伝えた。(後略)【2月1日 朝日】
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ゆすり・たかりとの線引きは難しいところもありますが、感謝しない金なら今からでも返してもらいたいものです。
クリントン国務長官の最初の訪問国が日本になるかも・・・というニュースがありますが、日本にも同様の“奉加帳”がまわってくるのではないでしょうか。
出す以上は、和解工作を含めた方針・見通しを明確にしてもらうことが必要です。
もちろん応分の感謝も。

コメント
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