孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

経済ナショナリズムと外国人排斥 インドネシアからの介護士受入れ

2009-02-10 21:09:19 | 世相

(スイスで大きな力を持つスイス国民党のポスター 言葉はよくわかりませんが、“外国人連中の好き勝手にさせるのか?否!”といったような感じでしょうか。
“flickr”より By rytc
http://www.flickr.com/photos/rytc/3265636617/)

【広がる保護主義】
公共事業に米国製品の使用を義務付けるアメリカの「バイ・アメリカン」条項については、2月1日ブログ“懸念される「バイ・アメリカン」条項”でも取り上げたところです。
バイデン米副大統領は「自由貿易主義者の一部には保護主義の前兆ととらえる向きもあるが、私はそうは思わない」と、「バイ・アメリカン」条項に関する議会下院の決定を擁護しています。

その後、オバマ大統領の修正方針に基づき、上院で「国際協定順守義務との整合性を考慮する」との一文が付け加えられましたが、条項削除には至りませんでした。
景気後退の深刻化で米国は、自国優先の姿勢を強めており、条項の運用、解釈次第では保護主義に傾斜する可能性があります。【2月8日 毎日】

1929年からの世界恐慌下、アメリカが多くの品目の関税を大幅に引き上げる法案を成立させたのをきっかけに、保護主義の動きが世界中に拡大。景気悪化を更に深刻化させた上、第二次世界大戦の引き金になったとされています。
保護主義の台頭を懸念する世界貿易機関(WTO)は9日の会合で、直接的なアメリカ批判は避けましたが、経済危機への対応を急ぐ各国が保護主義的な動きを強めないよう、国際的な監視体制を強化することで一致しました。

こうした保護主義的な動きはアメリカ以外でも広がっています。
“フランス・サルコジ大統領は5日夜の会見でチェコにある仏シトロエン社の工場を例に挙げ、「仏市場で売るための車をチェコの工場で製造するのは、(仏国民の雇用を奪うため)認められない」と表明。これに対し、欧州連合(EU)議長国チェコのトポラーネク首相は「こうした保護主義的発言はEU内での摩擦を助長する。モノやサービスの移動の自由はEUの基本原則で、チェコへの工場進出は企業の自由意思だ」と強く抗議した。”【2月7日 毎日】

9日サルコジ大統領は、金融危機の余波で不振に陥っている自動車業界を救済するため、優遇利率による融資の形で総額78億ユーロ(約9300億円)規模の新たな公的支援を行うと発表しましたが、この公的融資は自動車業界が仏国内の生産拠点と雇用を維持することが条件になっています。

【外国人排斥の極右思想】
保護主義は単に経済問題に留まらず、経済ナショナリズムと外国人排斥を主張する極右思想が結びつく流れも見えてきています。

****深まる世界同時不況、台頭する経済ナショナリズム
世界的な景気後退が進む中、各国の労働者らが賃金の安い外国人労働者たちを敵視する傾向が高まっており、暴力事件や極右政党の台頭につながる危険があるとアナリストや組合関係者が警鐘を鳴らしている。(中略)

■高まる反発、身の危険感じる労働者も
前月、英国北東部イミンガムのリンゼー石油精製所で行われた非認可ストライキは、イタリア人やポルトガル人の契約労働者の雇用に抗議するものだった。
EU各国の企業の経営者らが労使紛争の激化に身構える中、ストライキは全英20か所の石油・ガス精製所に飛び火。新規雇用の半数を英国人労働者に割り当てるとの妥協案により、ようやく収束した。
身の安全に不安を感じた一部のポルトガル人労働者は、帰国。彼らは、英国人の同僚から人種差別を受けたと主張している。

■各国で保護主義が台頭
一方、フランスでは自動車業界への融資計画をめぐって、外国に新規に工場を建設するメーカーを融資枠から外すとニコラ・サルコジ大統領が発言した。
米国では、失業率の上昇に伴って、技術力の高い外国人労働者の流入に対する反感が高まり、反移民団体が就労ビザの発行中止を求めるテレビコマーシャルを流した。
マレーシアは、工場での外国人労働者の雇用を禁止する措置を取った。

■極右思想に対抗できるかは政府次第
こうした中、労働組合側は、人種差別思想を持った組織が雇用の不足に便乗し、労働力の輸入に対する反発を煽る目的で、労働運動を乗っ取ろうとしているとの懸念を表明している。
歴史的に見て、不況時には、特に失業率が高い地域で、極右組織が支持を獲得する傾向がある。大恐慌時の1930年代には、欧州でファシズムが強固な支持を築いた。 
こうした極右勢力は、地元労働者の不満を移民への敵対意識につなげ、時には襲撃を扇動することもある。ドイツのイエナ大学の社会学者、クラウス・デーレ教授は、「極右組織が外国人労働者問題に乗じて勢力を広げるのを防げるかどうかは、政権与党の手腕にかかっている」と話している。【2月9日 AFP】
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派遣切りや雇い止めが問題となっている日本でもそうですが、国内経済状態が悪化すると先ず立場の弱い外国人労働者がその影響で雇用を失うことになります。
国内に家族的な支援のない彼等は失業という事態で、犯罪・違法行為に走るものも出てきます。
そうした“外国人の犯罪”は、外国人一般に対する警戒・敵視に容易に繋がっていきます。

【インドネシア介護士 高すぎるハードル】
先日1月28日、日本とインドネシアが結んだ経済連携協定(EPA)に基づいて来日したインドネシア人の介護士およそ100人が半年間の日本語研修を終え、全国各地の受け入れ先の施設に向いました。
多くのTV番組でその様子を放映していましたが、大きな希望を持って来日し、努力を重ねて日本社会に溶け込もうとしている彼等が、日本への失望と敵意を抱いて帰国するような事態にならないよう願っています。

それにしても4年以内の国家資格取得という条件は実質的に1回しかチャンスがなく、高すぎるハードルのように思えます。
また、現在日本で行われている6カ月の日本語研修のうちの4ヶ月について、インドネシアでの研修に変更することで日本・インドネシアが基本合意しました。
金融危機の影響などを踏まえて、日本の財政的負担を軽減するため日本側が申し入れたそうです。
いくら教材・教師を日本側が保証するとは言っても、言語はその地で暮らしてはじめて身につくものです。
これで、ハードルはますます高くなりそうです。
財政危機とは言いますが、20年後、30年後を考えた戦略があってもいいと思うのですが。

TVである方が言っていましたが、あまりハードルが高くなると、最初からまともに対応する気はなく、別目的で来日するような者が出てくるかも・・・という懸念もあります。


コメント
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