孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コソボ  独立から1年、熱狂からさめて厳しい現実

2009-02-17 22:16:32 | 国際情勢

(今年正月 コソボの首都プリシュティナの夜を彩る新年を祝う花火
“flickr”より By AMWRanes
http://www.flickr.com/photos/awelch/3155381583/)

昨年2月17日、セルビアからの独立を宣言したこコソボは、独立から1年を迎えます。
欧州においてもコソボ独立以降、グルジア問題やウクライナのガス騒動など日々新たな問題が発生しており、また、いまや全世界の関心が世界不況に向かっているなかで、正直なところコソボに向けられる関心はあまり多くないようです。
最近ではその状況についての記事を目にすることも殆どなくなりましたが、さすがに1年経過ということで、昨日珍しく下記の記事がありました。

****コソボ:独立1年…向上しない市民生活 無法状態の地域も*****
コソボは17日、セルビアから独立を宣言してから1年を迎える。コソボ人で構成される「コソボ治安部隊」が発足し、米国や欧州など主要18カ国の大使館開設が進むなど、防衛や外交の面でも新生国家の体制を整えつつある。しかし失業率は40%を超えるなど人々の生活は向上せず「独立後も暮らしはよくならない。期待が膨らんだ分、失望は大きい」と落胆の声も漏れている。

多数派アルバニア人とセルビア系住民がイバ川をはさんで分かれて住む北部ミトロビツァ。民族分断を象徴する町で、民族間の交流を促進する地元住民団体「コミュニティー建設ミトロビツァ(CBM)」のバルデータ・イドリズィ代表は「生活を取り巻く環境は悪くなる一方だ」と表情をくもらせた。
今もたまに爆発騒ぎが起こる。1月初めにセルビア系住民が住む北側で、アルバニア系住民が営む店舗2戸が火災に遭った。消火に当たった消防士3人が負傷し「爆弾による火災」との憶測が広がった。ナンバープレートがない乗用車が公道を走り、銃や麻薬の密輸など組織犯罪が横行する。イドリズィ代表は「民族対立は関係ない。北側では、司法の空白による無法状態が続いている」と嘆く。

双方を隔てる橋を人々が頻繁に行き交うようになった。しかし、治安維持は、北大西洋条約機構(NATO)軍のコソボ駐留部隊に頼り、民族衝突が繰り返されないように警戒を続けている。国際社会からの支援の担い手は、国連から欧州連合(EU)に移ったものの、セルビアやロシアはコソボ独立を承認せず、形式上は国連暫定統治が続いたままだ。

コソボのサチ首相は12日、自治体関係者を前に「コソボ独立が、だれかの脅威になることがあってはならない」と強調し、セルビア系を含めた多民族国家としての結束を呼びかけた。しかし、セルビアのタディッチ大統領は14日、セルビア北部ノビサドで「コソボの独立を認めない。セルビアは、コソボに住むわが同胞の権利を守る」と語った。【2月16日 毎日】
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コソボの経済的困難は独立以前からのものですが、独立前TVのニュースで見た、コソボ独立を訴える若者達が「独立さえすれば、この状況は改善される」と人々に熱く語っていた映像を思い出します。

コソボを国家として承認した国は、昨年末段階で、米国や日本など53カ国にとどまっています。
更に、国際的関心も低下したなかで、セルビアとの対立は依然改善せず、経済的苦境は深刻さを増していく・・・おそらく国民の間でも一時の熱気がさめていく・・・そんな様子が窺える記事です。

治安に関しては、昨年12月9日から、国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)から司法・警察分野の権限を引き継ぐEUの文民支援隊が活動を開始しています。

****コソボ:EU文民支援隊が活動開始****
支援隊は2000人規模で、司法・警察分野を中心に、コソボ政府を支援、行政担当者に助言し、汚職や組織犯罪を防止できる行政機構の確立を目指す。しかし、セルビアが反発したため、EU支援隊の活動開始は遅れ、当初予定されたコソボ憲法施行時の6月から半年遅れとなった。
コソボのサチ首相は8日、「EU支援隊がコソボ全土で活動できることを期待する」と述べた。セルビア系住民居住区では「中立的な立場を守る」とされるEU支援隊に、アルバニア系住民の一部が反発を強めていることを意識した発言だ。【08年12月9日 毎日】
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更に今年1月には、コソボ独自の“軍”も発足しました。

****コソボ:独自の軍が発足 セルビア側は反発****
AP通信などによると、昨年2月にセルビアからの独立を宣言したコソボで1月21日、独自の軍が発足した。セルビア側は「違法」(イェレミッチ外相)と強く反発している。
国際社会の監督下での独立を勧告したアハティサーリ国連事務総長特使案に基づくもので、2500人規模でスタート。
当面は小火器で武装し、自然災害時の救援活動などを行う。コソボに1万5000人が展開する北大西洋条約機構(NATO)などの監督下に置かれる。【1月22日 毎日】
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少しずつ国家としての枠組みは整備しつつあるようですが、セルビア系住民との対立という基本問題が全く進展せず、世界不況で余裕を失った国際社会からの支援も多くは期待できない状態で、当分は厳しい現実に向き合わねばならないことが予想されます。
経済的困難に対する不満が、多数派アルバニア系住民と少数派セルビア系住民の衝突という最悪の結果にならないことを願います。


コメント
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