孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  米軍増派への対応をパキスタンと協議へ、されど大雪・・・

2009-02-19 20:46:36 | 国際情勢

(アフガニスタン国境に近いパキスタン北西辺境州のチトラールも、昨年10月から積雪のため外界と同地を結ぶ交通手段が途絶しています。
そのため、自分の足で歩くしかありません。
通常こういう場合はアフガニスタン領内を経由するルートがとられるのですが、昨年来アフガニスタン政府は自国領内通行を禁止しています。
このため、州都ペシャワルへの移動は歩いてロワライ峠(3200m)を越えるしかなく、住民は毎日生命の危険をおかしながら雪の中を歩いて峠越えしています。
この写真が撮影された時期も、生後1ヶ月の赤ちゃんが凍死したそうです。
雪の中の民族衣装が美しい写真ですが、そんな厳しい現実を写したものです。
“flickr”より By groundreporter
http://www.flickr.com/photos/16901703@N06/3141064781/)

【オバマの戦争】
オバマ米大統領は17日、アフガニスタンへの1万7000人の米兵増派を決断しました。
これによりアフガン駐留米軍は現在の約3万2000人から5万人近くに増強されることになります。
また、ゲーツ国防長官はNATO国防相会議が開かれるポーランドへ向かう機中で、「オバマ政権にはアフガンへの義務をさらに果たす用意があるが、同盟国ももっと努力すべきだとの要望があることも明らかだろう」と指摘し、8月大統領選挙前までの同盟国の増派を求めています。【2月19日 時事】

ただ、今回の増派は、8月のアフガン大統領選を前に、現状では選挙の実施さえままならない現地情勢に対する対症療法にすぎないもので、オバマ政権内では、軍事力による効果には限界があるとの見方で一致しています。
“オバマの戦争”“オバマのベトナム”といった言葉も散見されます。

一昨日16日のブログでも取り上げたように、オバマ政権は、アフガニスタン・パキスタンも参加した“対テロ戦略見直し”を4月までに行い、軍事、外交、経済など包括的な戦略指針を打ち出すことになっています。
来日したクリントン米国務長官も17日の中曽根弘文外相との共同記者会見で、日本のアフガニスタン復興への貢献を評価したうえで、アメリカのアフガン戦略見直し作業に日本が参加するよう求めたことを明らかにしています。

【両当事国 米軍増派への対応協議へ】
当事国でもあり、“見直し作業”にも参加が予定されているアフガニスタン・パキスタン両国ですが、これまで必ずしもその関係は良好とはいいがたいところがあります。
アフガニスタンは、パキスタンが北西部の部族支配地域等国境隣接地域におけるイスラム武装勢力を充分に押さえ込んできていないことが、アフガニスタンでのタリバン攻勢の背景にあると考えています。
パキスタンは16日、北西辺境州スワート地区の武装勢力と、和平協定の締結で合意しましたが、このような武装勢力との停戦は、武装勢力のアフガニスタンでの活動を活発化させる懸念があります。

一方、パキスタンは、インドとの関係が強いアフガニスタン現政権の基盤強化を望んでいないとも見られています。
ただ、両国と自国内での米軍の行動による自国民被害に関しては、国内世論を意識して、批判を強めています。
その両国首脳が、アメリカの増派決定への対応を協議すると報じられています。

****アフガン:パキスタンで両首脳、対応協議へ 米増派受け****
17日のオバマ米大統領によるアフガニスタン増派決定を受け、カルザイ・アフガン大統領は19日に急きょパキスタンを訪問し、ザルダリ大統領らと会談することを決めた。両政府の幹部が毎日新聞に明らかにした。両国とも、武装勢力との対話による和平を模索しており、会談では米国増派への対応を協議する見込みだ。

アフガン国内では増派決定は、米国に対し武力重視の従来路線の転換を求めてきたカルザイ氏の訴えを「オバマ氏が考慮しなかった」(内務省幹部)と、受け止められている。
カルザイ氏は「米軍の攻撃による住民の犠牲が、反米感情を強めタリバンの勢力拡大を招いている」として、繰り返し米国に対し住民の犠牲を防ぐよう求めてきた。だが16日には西部ヘラート州の村を米軍機が空爆し、現地からの報道によると、女性や子供ら住民15人以上が死亡した。

ただ、8月の大統領選での再選に米国の後ろ盾が必要なカルザイ氏は、増派決定を真っ向から非難できない弱みもある。
パキスタンでも、増派はアフガン、パキスタン両国の武装勢力の反米闘争を一層あおるだけだとの失望感が濃い。ただ、当初3万人の増派計画が現時点では1万7000人にとどまったことについて、「対話解決への選択肢を残したつもりかもしれない」(情報省幹部)との見方もある。
タリバンのザビウラ報道官は毎日新聞の電話取材に、「米国は(79年にアフガンへ軍事侵攻し、10年後に撤退した)ソ連と同じ道を歩むだろう」と語った。【2月19日 毎日】
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【異例の大雪】
もっとも、このカルザイ大統領のパキスタン訪問は、豪雪でカブール空港が閉鎖されたため延期となった模様です。アフガニスタンでは2月、北部を中心に異例の大雪が断続的に続いているとか。【2月19日 毎日】
カルザイ大統領のパキスタン訪問はともかく、アフガニスタンの豪雪で懸念されるのは、アフガニスタン国内の難民の生活です。

****アフガン:避難民続出、困窮さらに 国際人権団体が警告****
国際人権保護団体「アムネスティ・インターナショナル」(本部ロンドン)は18日、アフガニスタンで続く戦闘で国内避難民が続出し、厳冬の中で深刻な食糧不足に直面していると警告した。国連は同国に約23万5000人の国内避難民がいるとみているが、同団体は「そのほとんどが戦闘から逃れた人々だ」と指摘した。
同団体が現地調査で実態を確認。避難民の多くが支援を求め、カブールなど主要都市を目指しているが、食糧や水、住居など生活支援はなく、多くの子供たちが暖房器具もない中で地面に寝ているという。
米国は兵士1万7000人の増派を決定し、戦闘は激化するとみられる。同団体は、こうした「戦闘避難民」への早急な国際的支援の必要性を訴えている。 【2月19日 毎日】
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“多くの子供たちが暖房器具もない中で地面に寝ている”状況での異例の大雪・・・厳しい試練が続いています。

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