孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  新内閣発足するも、厳しい先行き

2009-02-14 16:55:49 | 国際情勢

(WHOは、昨年8月以降のジンバブエにおけるコレラによる死者数は3397人、感染者数は6万9317人になったと発表。過去15年間ではアフリカで最悪の事態となっています。
かつては豊かだったジンバブエですが、10人に8人が失業するという経済危機により、医療制度は崩壊。粗悪な医療施設や公衆衛生がコレラのまん延を助長しています。【2月10日 ロイター】
写真は新たにつくられた医療キャンプのようですが、医療チームが到着したとき、患者達は汚物まみれで床に横たわり、死体と新たに運び込まれる患者が混在している状態だったそうです。
“flickr”より By Teseum
http://www.flickr.com/photos/teseum/3231671982/)

【副農業相予定者の逮捕】
昨年3月の大統領選後混乱が続いたアフリカ・ジンバブエ情勢については、1月31日ブログ「インフレとコレラ ようやく連立成立か」で、野党・民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長が、ムガベ大統領との連立政権に参加すると発表したことを取り上げました。
(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090131)

“一応”そうした方向で、13日、旧野党勢力を含む連立政権の閣僚らが就任宣誓し、新体制がスタートしました。

****ジンバブエ:新内閣が発足****
旧単独与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線」(ZANU-PF)を率いるムガベ大統領と旧最大野党「民主変革運動」(MDC)党首のツァンギライ新首相らが閣僚ポストを分け合い組閣。
現地からの情報では就任宣誓した閣僚は当初予定より多い36閣僚。ZANU-PFは国防相、外相を確保。
MDCからは財務相、保健・児童福祉相などが任命された。また新副首相に就任のムタンバラ氏率いるMDC分派から3閣僚が誕生した。
また、同日、MDCが副農業相に任命したベネット氏を当局が逮捕した。容疑は不明だが、ベネット氏はムガベ政権が推進してきた白人農地を強制収用し、黒人農家に再配分する「農地改革」により、農地を奪われた元農場主の一人。 【2月14日 毎日】
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拘束されたベネット氏はMDCの財務担当者を務めていた白人農業従事者ですが、ムガベ大統領の殺害を計画していたとの容疑をかけられ南アフリカに亡命。
先月、3年ぶりに帰国して副農業相に就任することが予定されていました。

ムガベ政権は、自らの失政を人種問題にすりかえ糊塗する形で、白人農場主の土地を暴力で強制的に収用し黒人に与える黒人化政策・農地改革を推し進めており、そのことが経済崩壊・歴史的なハイパーインフレーションの原因にもなっています。
また、この人種差別的政策は、イギリスなど欧米諸国との軋轢をも生んでいます。
そうしたことから、黒人農家への再配分により農地を奪われた白人元農場主の副農業相起用は、ツァンギライ新首相の政策転換をうかがわせるものとして注目されましたが、ムガベ大統領側はこれを認めなかったようにも見えます。

【ムガベ大統領権力維持 続く欧米対決姿勢】
ムガベ大統領は旧宗主国・イギリスなど欧米諸国との対決姿勢を依然続けており、連立発足に向けた合意文書では、欧米による制裁の契機となった白人農場主からの土地強制収用が事実上容認されています。
このため、最重要課題である経済改革に向けて必要な欧米の制裁解除と援助増額、投資についても、その実現は困難とも報じられています。

****ジンバブエ:復興の見通し立たず ムガベ大統領が権力維持****
ムガベ大統領による独裁が続いていたジンバブエで11日、野党党首が首相に就任、連立政権が発足した。背景にはインフレが年率2億%を超えるなど経済が破綻(はたん)、コレラで3400人超の死者を出すなど国民が困窮を極め、危機打開を迫られた事情がある。周辺国の強い勧めで妥協を重ね、連立政権を発足させたものの、大統領は権力を維持、欧米を批判する姿勢を緩めておらず、欧米の制裁を解き、復興する見通しは立っていない。

ジンバブエ(人口1334万人)では国連推計で約700万人が緊急な食糧支援を必要とする。昨年8月からのコレラ感染者は約7万人だが、病院は機能していない。開校する公立学校は2割以下で、職を得られる人は10人に1人だ。国外脱出も後を絶たない。
こうした惨状に加え、南アフリカなど南部アフリカ開発共同体諸国が大統領に妥協を促したことで、連立政権が発足した。

新政権は経済改革を最重点課題としている。これには欧米の制裁解除と援助増額、投資に頼らざるを得ない。
しかし、連立発足に向けた合意文書では、欧米による制裁の契機となった白人農場主からの土地強制収用が事実上容認されている。また、ムガベ大統領は旧宗主国・英国など欧米諸国との対決姿勢を続けており、このまま欧米が制裁を解除するのは難しい情勢だ。
首相に就任した最大野党「民主変革運動」(MDC)ツァンギライ議長は逮捕や暴行をたびたび受け、野党の政治犯がいまだに多数、拘束されたままだ。欧米の記者が逮捕されたり、入国を認められない状況も続く。新政権が民主化・自由化に取り組むかも、欧米の制裁を解除するカギとなりそうだ。【2月11日 毎日】
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【スタートしたものの、遥かな道のり】
経済再建、コレラ対策、民主化・自由化・・・どれも緊急かつ重大な課題ですが、ムガベ大統領が権力を維持したまま、これら問題へメスが入れられるかはなはだ疑問です。
スタートしたばかりの連立政権の今後の存続すら危なく感じられます。

不毛の対立を続けていたずらに時間を浪費してきたこれまでに比べれば、格段に事態は進展した・・・と考えるべきなのでしょうが・・・。

コメント
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