孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  成果を出せない国連の対話仲介 進む形式的“民政移管”への動き

2009-02-04 20:44:53 | 世相

(一昨年9月の僧侶等の抗議活動 ミャンマー社会で大きな影響力を持つ僧侶等の行動に期待を感じたのですが、現実の壁は厚いものでした。
僧侶も封じ込まれた今、ミャンマーの政治・社会を変えられる力は・・・思いつきません。
“flickr”より By racoles
http://www.flickr.com/photos/racoles/1438234496/)

【成果ないなら今後あわない】
ミャンマー訪問中の国連のガンバリ特別顧問(ミャンマー問題担当)は今月2日、自宅軟禁下にある同国の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとヤンゴンの政府ゲストハウスで面会しました。
面会は昨年3月以来で、約11カ月ぶりとなります。

ガンバリ氏は潘基文国連事務総長がミャンマー訪問を模索していることを伝えましたが、スー・チーさんは、国連側に対し、事務総長訪問前に自分の自宅軟禁解除と2000人を超える全政治犯の釈放など、政治解決を目指す仲介プロセスの具体的な成果を強く求め、不満をあらわにしたと報じられています。
“昨年8月にガンバリ氏との会談を拒否し、ミャンマーの民主化問題に対する国連の取り組みに不満を示した。今回は応じたものの、「成果が伴わない会談なら今後は応じられない」とガンバリ氏に伝えたという。”【2月2日 朝日】

“06年5月に始まった特使の訪問は今回で7回目。軍事政権は07年10月、スー・チーさんとの対話を調整する担当大臣を置くなど、一時は対話再開ムードが高まった。しかし、スー・チーさんが昨年1月、「軍事政権側は本気で対話する気がない」と不満を表明して交渉が途切れて以来、両者の関係は冷え込んだままだ。在ヤンゴンの外交関係者は「両者ともかたくなな姿勢を強め、仲介の糸口さえ見いだせない状態だ」と話す。”【2月3日 毎日】
軍事政権と民主化勢力の対話仲介という国連特使の任務は具体的成果をだせないまま暗礁に乗り上げ、国連は関与手法の練り直しを迫られています。

【見せかけの民政移管】
軍事政権は昨年5月の国民投票で、軍に国会議席の4分の1を割り当てるなど軍の権限維持を可能にする新憲法を成立させました。今後は、来年の総選挙で形式的な民政移管を行い、国際的批判をかわそうとしています。
“ミャンマー軍事政権が、2010年実施予定の複数政党による総選挙に向け、有権者の約7割にあたる約2400万人が構成員とされる翼賛組織を、今年4月をメドに二つに分ける形で政党化する構想を進めていることが分かった。軍政は、2党を第1、2党として勝利させ、一党独裁の批判をかわす見せかけの「2党連立政権」の発足をもくろんでいるものとみられる。”【1月1日 読売】

【民主化封じ込め】
その一方で、最大野党NLD党員や民主化活動家を次々と拘束して封じ込めを強めています。
“ミャンマー軍事政権が、密室法廷で民主活動家らに長期の禁固刑判決を連発し、民主勢力の排除を徹底している。
昨年11月からわずか3か月で300人近くが裁かれて有罪となり、最高刑は禁固104年。国際社会は非難を強め、1月31日には国連のガンバリ事務総長特別顧問も同国に入ったが、軍政トップがまともに応じる気配はなく、受刑者らが生きて出られる望みは薄い。”【2月2日 読売】

今回のスー・チーさん側の強硬な姿勢の背景には、こうした軍事政権側の既成事実づくりが進行していることへの危機感・不満があるとも報じられています。

【難民を待ち受ける過酷な運命】
軍事政権の圧政からタイに逃れた少数民族ロヒンギャ難民に対するタイ軍の海上放置などの非人道措置については1月19日ブログでも取り上げましたが、インドネシア海軍は3日、数隻の小舟でスマトラ島沖を漂流していたロヒンギャの男性約200人を保護したと発表しています。

“難民たちは保護を求めてタイに漂着したが、殴るなどの暴行を受けたあと、10隻ほどの木製の小舟に乗せられ沖に流され、水や食料がないまま3週間ほど漂流していたという。
これまでにも複数の国際人権団体が、前年末にタイ沿岸部に上陸したロヒンギャ難民約1000人が、わずかの食料とともに小舟に分乗させられ、海上に放置されたと主張している。”【2月4日 AFP】

タイ政府はロヒンギャ難民への暴行や海上放置を激しく否定していますが、1月7日にスマトラ沖で保護されたロヒンギャ難民174人も同様の証言をしています。

【無力感】
タイ政府が批判されるのは当然ですが、こうした難民を生み出したおおもとはミャンマー軍事政権にあります。
国内の野党・民主化運動活動家にしても、国外に逃れる難民にしても、彼等に対する不当な扱いは幾度となく報じられていますが、ミャンマー軍事政権の基盤は微動だにしない、国連仲介もなんの成果もだせない・・・この現実に無力感を感じます。

コメント
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