孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  懸念される「バイ・アメリカン」条項

2009-02-01 11:54:41 | 世相

(随分以前だとは思いますが、いつ頃書かれたものかはわかりません。根強くこうした志向が存在するだけに、熟慮が求められます。
“flickr”より By Photo Mojo
http://www.flickr.com/photos/mojodenbowsphotostudio/170079219/)

随分とあからさまな保護主義が出てきたものだと驚きました。

****米景気対策法案の「バイ・アメリカン」条項に経済界から反発****
バラク・オバマ米大統領が進める経済刺激策の基本となる大型景気対策法案に、米国製品の購入を義務付ける「バイ・アメリカン(Buy American)」条項が盛り込まれ、経済界や貿易相手国からは批判を呼ぶ一方、国内の製造業者や労働組合からは喝采を浴びている。

米下院が28日に可決した総額8190億ドル(約74兆円)の同法案には、景気対策での公共事業には米国製の鉄鋼を使用するとした「バイ・アメリカン」条項が盛り込まれた。
法案は上院に送られたが、上院では「バイ・アメリカン」条項を全ての米国製品に拡大して適用するとの案も出ている。

しかし、経済界からは、こうした動きは貿易摩擦を引き起こし、世界金融危機の影響ですでに低迷する輸出を悪化させるだけだとの懸念の声があがっている。
全米商工会議所のクリス・ブラドック氏も、「世界の消費者の95%は国外の消費者だ。『バイ・アメリカン』条項の報復措置として、ドイツや中国が米国製品の購入を中止すれば、真っ先に苦しむのは米国の労働者だ」と、警鐘を鳴らす。

一方、連邦政府が同条項は公衆の利益に反すると判断した場合は、同条項は無効となる。
また、全ての公共事業に必要な量の鉄鋼を米国産だけで調達することが不可能であったり、米国産の鉄鋼を使用することによって事業のコストが25%以上高くなる見通しとなれば、実施されない可能性がある。(後略)【1月30日 AFP】
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今回の金融危機・世界不況に対して、保護主義的な対応によるかつて犯した過ちは繰り返さない・・・というのが各国政策当局の共通認識だと思っていましたが、国内向けの要素が絡むとそうは言っていられないようです。
この「バイ・アメリカン」条項については、さすがに国際的な批判が高まっています。

****米の「バイ・アメリカン」条項に批判集中 WTO閣僚会合****
世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会合が31日、当地で開かれた。閣僚レベルの会合は昨年7月末に貿易交渉が決裂して以来。米国で浮上している米産業保護を狙った「バイ・アメリカン」条項への批判が相次いだ。閣僚は保護主義を抑えることで一致したが、自国産業保護の動きは各国で相次いでおり、懸念が広がっている。
(中略)米国は通商代表が出席せず、代表代行が米政権に各国の懸念を伝えるとの姿勢を示したのにとどまった。
二階経済産業相は、米国への直接の言及は避けたものの、「昨年11月の金融サミットで保護主義に陥らないことで一致したのに、実際には保護主義的な措置が出てきていて信じられない」と表明。閣僚らは、保護主義的な措置を監視する仕組みを拡充していくことで一致した。

現実には、世界各地で保護主義的な動きが加速しつつある。金融・経済危機を受け、目立つのは雇用確保を理由にした自動車産業への支援だ。米国が自動車大手ビッグ3への支援に踏み出したのに続き、英国も最近、3千億円近い自動車産業向けの債務保証を実施する方針を発表。ダボス会議では「各国の自動車産業支援は保護主義にほかならない」(国際機関トップ)との指摘が相次いだ。
ダボスを訪れているブラウン英首相は31日、主要国の金融機関が新興国などから資金を引き揚げて自国へ移す動きに懸念を表明。「この状態が続けば『金融保護主義』になってしまう」と警戒感をあらわにした。【2月1日 朝日】
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自動車産業保護など、国内雇用情勢を考慮するとやむを得ない面もありますが、アメリカの「バイ・アメリカン」条項は一線を越えた措置のように思えます。
世界経済をリードするアメリカにおいてこうした措置が認められるのであれば、各国はこぞって対抗措置を講ずる動きになるでしょう。
その行き着く先は、世界経済のスパイラル的縮小であり、結局は自分たちの首を絞めることになります。
“国内の製造業者や労働組合からは喝采を浴びている。”とのことですが、慎重な論議を期待したいところです。



コメント (2)
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