孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン  ドゥテルテ大統領の高支持率が急落 国民からの批判に暴力が及ぶ懸念も

2017-10-14 21:34:05 | 東南アジア

(官邸前で焼かれる大統領の肖像画 【9月22日 BBC】)

誤った事実認識による、いつもの過激発言
フィリピン・ドゥテルテ大統領の進める“麻薬撲滅戦争”という名前の“超法規的大量殺人”に対する欧州議員からの批判に対し、ドゥテルテ大統領がブチ切れたようです。

****なめるなよ!」 比大統領、EU加盟国の大使らを国外追放と脅迫*****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は12日、欧州諸国がフィリピンを国連から追放しようとしていると非難し、そうした国々の大使らを24時間以内に国外追放すると脅迫した。
 
ドゥテルテ大統領は報道陣に対し「お前らがわが国に言っている『国連から追放される』という言葉をそのまま返す。やってみろ」と述べ、欧州諸国を非難。
 
またフィリピンの貧しさに付け込んでいるとし、「お前らはわが国にお金を与えた後、わが国で行われるべきこと、起きてはいけないことについて口を出し始めた。ふざけるな。わが国が植民地だったのは過去のことだ。なめるなよ」と批判した。

「お前らはわが国をうすのろの集まりだと思っているのだろうが、うすのろはお前らだ。今この話を聞いている欧州諸国の大使ども。今のうちに何とか言ってみたらどうだ。わが国は明日にも外交ルートを断つことができる。わが国から24時間以内に出ていけ、お前ら全員、全員だ」
 
欧州連合(EU)はフィリピンを国連から追放したい意向について一切公式なコメントを出していない。また、ドゥテルテ大統領はフィリピンが国連から追放されるのではないかと思うに至った理由についても説明しなかった。
 
ドゥテルテ大統領の発言について、エルネスト・アベリャ大統領報道官は、欧州議員などの少数グループが9日に首都マニラで記者会見を行い同大統領が推し進める「麻薬撲滅戦争」を非難したことに対する「怒りの表れ」だと述べた。
 
ドゥテルテ氏は昨年、麻薬撲滅戦争を推し進めると公約して大統領に就任。以来、警察による麻薬取り締まり作戦で少なくとも3850人が殺害されている。人権団体は麻薬撲滅戦争が人道に対する罪に当たる可能性があると警鐘を鳴らしている。【10月13日 AFP】
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この発言に関しては、欧州議員の一部グループ発言をEUとしての公式見解として認識した、ドゥテルテ大統領の事実誤認もあったようです。

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今回の大統領の言動は、社会民主党系議員らの国際代表団が今月初旬に訪比し、麻薬対策に絡む殺害が続くならフィリピンはEUが付与する一般特恵関税を失う可能性があるとする警告への反応とみられる。

ただ、EUは代表団はEUの使節ではなく、その声明はEUの立場を反映したものではないと説明した。ドゥテルテ氏の大使追放の発言は、今回の批判の出所を誤解した可能性もある。

これに対し比大統領は声明で、代表団は自らをEU使節と誤って名乗っていたと指摘。「フィリピンの国内問題に不当に干渉する全てのグループや個人は主権国家としての我々の立場をおとしめている」と主張した。【10月14日 CNN】
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フィリピン側は、いつものように大統領発言の後始末・火消しに追われています。

*****EU各国大使の国外追放計画はない」 フィリピン大統領報道官****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が12日に、欧州諸国がフィリピンを国連から追放しようとしていると非難し、そうした国々の大使を24時間以内に国外追放すると発言した問題で、エルネスト・アベリャ(大統領報道官は13日、大使らを国外追放する計画はないと発表した。
 
アベリャ報道官は12日夜に声明を発表し、ドゥテルテ大統領が大使らを国外追放すると発言したことを認めたものの、翌13日に記者団に対し、大使らを国外追放せよという指示は出されていないと述べた。
 
アベリャ報道官は、ドゥテルテ大統領が怒りをあらわにしたのは、フィリピン・マニラを訪れた欧州諸国の議員や関係者らの少人数の一団が今月9日に記者会見を行い、多数の死者が出ている同国の麻薬戦争を非難したという報道がきっかけだと説明。

「大統領は基本的に、自分が読んだ記事の内容に反応している」と述べ、大統領は報道されている内容が正しいと「想定していた」と付け加えた。

「つまりこれは基本的に、クリティカルに(正確さや妥当性などを評価しながら)報道することや、クリティカルにニュースを読むことが必要だという、私たちにとっての教訓でもある。大統領は、国家主権を侵害された時にどんな指導者でもするであろう反応をした。われわれはメディアに正確な報道をしてほしいという大統領の要請を聞き入れるよう求める」(アベリャ報道官)
 
大使らを国外追放するというドゥテルテ大統領の「脅迫」を受けて、EUの駐フィリピン代表部は、今回フィリピンを訪れたのはEUが派遣した代表団ではないと発表。アベリャ報道官も13日、EU代表部の発表は正しいと認めた。
 
今回フィリピンを訪れた欧州諸国の議員らの公式声明や地元の大手メディアによる報道によれば、この議員らの一団が、フィリピンが国連から追放されるとの見通しを示した事実はない。

ドゥテルテ大統領がなぜ、欧州の議員らが国連からのフィリピン追放を望んでいると考えるに至ったのか、アベリャ報道官は明らかにしなかった。【10月14日 AFP】
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“ドゥテルテ大統領がなぜ、欧州の議員らが国連からのフィリピン追放を望んでいると考えるに至ったのか・・・”
被害妄想にとらわれているのか、何か悪いものでも飲んだか食べたのか・・・。

いきさつは別にしても、まるでチンピラの喧嘩のようなような発言でもあり、国家指導者としての品格も何もありません。子供の喧嘩のようなトランプ大統領の発言といい、昨今はこの手が世界的に流行っています。

急落し始めた支持率
もっとも、ドゥテルテ大統領の下品な発言にはいまさら驚きませんが、大統領をとりまく環境が大きく変わってきていることには驚きました。

従来は、“超法規的大量殺人”を含め、大統領の言動の問題を指摘する際、必ず“しかしながら、大統領は国内では高い支持率を維持している”という話が最後についてまわっていました。

そのあたりに大きな変化が出ているようです。

****比大統領、EU圏大使の国外退去要求 支持率減少の中で****
・・・・ドゥテルテ氏の今回の演説は12日のことで、「馬鹿者」などの言葉を交ぜる激しい内容。外国指導者を対象にした同大統領の痛罵(つうば)は過去にもあり、オバマ前米大統領もやり玉に挙がったことがある。

一方、今回の演説の背景には、大統領の支持率減少が絡むとの見方もある。比世論調査機関は演説の数日前、支持率が大統領就任後初めて50%を割り、48%だったと発表した。

警察などはこれまで少なくとも1万2000人を殺害したともされ、過酷な麻薬対策に国民が嫌気をさしているとの指摘もある。【10月14日 CNN】
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支持率が50%を切った・・・改めて、そのあたりの情報を探してみると、ここ1~2か月で大きく支持率が低下しているようです。

****ドゥテルテ大統領の支持率が急落、それでも株価が上がる理由***
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領に対する「市場の評価」は上がっている。つまり、同国ではここ3か月ほど、株価の上昇が続いているのだ。

だが、大統領の支持率はこのところ大幅に下落している。どうやらフィリピンの株式市場は、大統領が一部国民の信頼を失っても、それを意に介さないようだ。

フィリピンのニュースサイト、インクワイアラー・ドット・ネットが9月末に行った調査によると、大統領の支持率は前回調査時(6月)の66%から、48%へと大幅に下落した。一方で同国の主要な株価指数PSEiは、過去3か月間に8%上昇している。

「着目点」が変化
株価が上がっているのには、もっともな理由がある。株式市場は経済を反映するものだ。そして、ドゥテルテの経済政策のかじ取りはうまくいっている。今年6月に世界銀行が発表した報告書「世界経済見通し」では、フィリピンの経済成長率は今年、世界第10位となる6.5~7.5%の伸びが予想されている。

また、フィリピン経済が大きく依存するアジア太平洋地域への輸出も好調だ。今年4月の輸出額は、前年同月比12.1%増の48億1000万ドル(約5400億円)となった。国内総生産(GDP)に占める同地域への輸出の割合は、30%近くに上る。

こうした好調なフィリピン経済と、ドゥテルテを切り離して考えることはできない。大統領は安定したマクロ経済環境を維持しており、インフレ率と債務残高対GDP比は低く保たれている。そして、これらが国内需要の健全な成長の維持に役立っているのだ。

ドゥテルテの支持率急落に対する株式市場のこうした反応は、昨年とは全く対照的だ。南シナ海問題で大統領が態度を二転三転させるなか、主要な株価指数は1か月で7.2%下落した。

投資家らは明らかに、地政学的な問題よりもフィリピン経済のファンダメンタルズに焦点を移している。そして、少なくとも現時点では、国内で続く政治的混乱の一方で、活気を維持するフィリピン経済の現状を好意的に見ている。

不安要素は残る
ただし、フィリピン経済にとっての大きな問題は、先ごろ発表された世界経済フォーラム(WEF)の報告書でも指摘されているとおり、依然としてなくならない汚職だ。

この問題はフィリピン経済の将来にとって、大きな懸念事項だ。腐敗と政治的な抑圧は、過去にも経済成長を犠牲にしてきた。この問題を制御不能のまま放置すれば、今後も同じことが繰り返されていくだろう。【10月12日 Forbes JAPAN】
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経済政策は順調に推移しているようです。

****終焉?】ドゥテルテ大統領の支持率が下降、国民もいい加減気付き始めた模様****
国民の圧倒的な人気を集めていたドゥテルテ大統領ですが、最新の世論調査で支持率に陰りが出てきたことが分かりました。

このほどソーシャルウェザーステーションが行った世論調査で、ドゥテルテ大統領が就任以来、最低の支持率を記録しました。

9月に行われた世論調査で、支持率が前回6月の78%から67%への11%の下降となりました。

満足から不満足のポイントを差し引いた純満足度は、前回の66ポイントから48ポイントとなり、18ポイントの大幅な下落となりました。

特に貧困層になるほど支持率の低下が激しく、最も貧しいクラスEでは前回67ポイントから35ポイントと32ポイントの下落となり、薬物戦争や経済政策などへの失望が広がっているようです。

野党のトリリャネス上院議員が、「国民が大統領の本当の姿に気づき始めている」と評価する一方、大統領府は「ハネムーン期間が終わっただけ」と指摘し、支持率の下降が想定内であると主張しました。【10月12日 「フィリピンのニュースあれこれ」】
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貧困層では支持率が半減していますが、一体何があったのかは知りません。“麻薬撲滅戦争”の被害者の大部分が麻薬売人などの貧困層であるのは間違いありませんが。

フィリピンでは大統領就任時には支持率が異様に高く、その後急落する・・・というのは一般的傾向であり、「ハネムーン期間が終わっただけ」という大統領府説明もその傾向に依ったものです。

今後、高まる大統領批判に“暴力”が牙をむく懸念も

****フィリピンで大規模デモ ドゥテルテ氏「独裁主義」に抗議****
フィリピンで21日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(72)が推し進め物議をかもす厳格な治安政策に抗議する集会に何千もの人々が集まった。

大統領の反対派は、ドゥテルテ大統領が戒厳令を復活させるかもしれないと公言していることや、多くの死者を出した容赦のない「麻薬戦争」を批判した。21日には、ドゥテルテ氏を支持する集会も開かれ何千もの人々が参加した。

一方、ドゥテルテ大統領の息子でダバオ副市長のパオロ・ドゥテルテ氏(42)は麻薬密売疑惑に直面している。

大統領は記者団に対し、疑惑が事実であればパオロ氏の殺害を承認すると語った。「お前が捕まれば私は殺害を命ずる。疑惑が事実であれば、私はお前を殺害する警察を擁護する」とパオロ氏に伝えたという。(中略)

ドゥテルテ氏は市民と警察に対して容疑者たちを超法規的に殺害するよう繰り返し呼びかけており、国際社会から人権侵害にあたると批判されてきた。

独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領が45年前に行ったのと同様に、ドゥテルテ大統領がフィリピン全土に戒厳令を敷くことを懸念するデモ参加者たちは、「殺害をやめよ」、「戒厳令にノー」などと書かれたプラカードを街頭で掲げた。

大統領選でドゥテルテ氏と同じ陣営ではなかったリベラル派のレニー・ロブレド副大統領は、マルコス政権下の圧制の記憶を思い出すよう、国民に呼びかけた。
「過去の記憶をとどめなければ、過ちを繰り返すことになる」と副大統領は言った。

ドゥテルテ大統領はマルコス一家に同情的な態度を取っていることを批判されており、圧制を強いた過去にも関わらず、マルコス氏を尊敬していると公言した。

デモは、マニラの大統領官邸前のほか、大学や軍本部前でも開かれた。
デモの中で大統領の肖像画が焼かれ、ロブレド副大統領は「独裁政治が勢いを得つつある」兆しがあることを国民は見逃すべきではないと警告した。

しかし一方で、反政権デモに対抗する集会にも多くのドゥテルテ支持者が集まった。ドゥテルテ氏への支持率も、物議をかもす政策や発言にも関わらず依然として高い。【9月22日 BBC】
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9月時点での上記記事では、“ドゥテルテ氏への支持率も、物議をかもす政策や発言にも関わらず依然として高い。”となっていますが、状況が変わってきているのは前述のとおりです。

今後、大統領の拠り所であった高い国民支持が失われ、国民から公然と批判が高まる状況になったとき、“超法規的大量殺人”に示される大統領の“暴力性”がどういう形で誰に向かうのか・・・懸念されるところでもあります。
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