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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  「辞任は問題になっていない」というメイ首相 求心力低下が鮮明に

2017-10-06 21:58:56 | 欧州情勢

(党大会演説で演説途中に咳が止まらなくなり、ハモンド財務相から受け取ったのどあめを口に入れるメイ首相【10月5日 WSJ】 のど飴をなめながら演説ができるのでしょうか?)

【「歩くデッドウーマン」メイ首相、「辞任は問題になっていない」とは言うものの・・・・
日本の政局は、賑やかに取り沙汰されてはいますが、結局は現状を補強するだけに終わりそうでつまらないので、イギリスの話。

8月末に訪日したイギリス・メイ首相は2022年までの続投、更には22年の後も・・・との政権保持への意欲を示しました。

****メイ英首相、2022年総選挙後の続投に意欲****
日本を訪問中のメイ英首相は、次の2022年の総選挙後も首相としての務めを果たすことを望むと明らかにした。与党・保守党が今年の総選挙で惨敗し、求心力の低下が懸念されるメイ首相を巡っては、英国の欧州連合(EU)離脱後、早ければ2019年に退陣するとの見方があったが、これを否定した。

ITVニュースのインタビューでは「(首相職を)簡単には投げ出さない」と述べた。

また、BBCのインタビューで、次の総選挙に保守党党首として臨むつもりか問われると、「私は長期の政権運営のためにここにいる。私と政府は、EU離脱を履行しているだけではなく、英国により明るい未来をもたらすことに努めている」と答えた。【8月31日 ロイター】
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メイ首相が。EU離脱に対する政権基盤を強めるために、やる必要もなかった総選挙に“勝てる”と踏んで打って出て、結局、思わぬ“返り討ちに”にあって過半数さえ失うことになったこと、それによる求心力低下でEU離脱交渉も“予想通り”に難航し、与党内でも意見がまとまらない状態にあること・・・などから、メイ首相が非常に厳しい状況に追い込まれていることは周知のところです。

もちろん、政権を運営している以上、上記のような“強気”の発言をせざるを得ないのでしょう。
そうした“敢えて”の発言ではあるものの、当時も与党内では波紋が広がりました。

“この発言に保守党のモーガン前教育相は「次の選挙に向けて我々を率いていくのは難しいと思う」と発言。シャップス元幹事長も「驚きがあるのは確かだ」と述べた。”【9月2日 朝日】

****メイ英首相が「歩くデッドウーマン」とののしられる理由****
英国のメイ首相が2022年の次期総選挙まで続投する意向を表明した。総選挙の前倒しに踏み切った結果、与党・保守党の過半数割れに追い込まれた首相の責任論がくすぶっていただけに、政界には驚きが広がっている。

求心力を失った弱体政権のまま、欧州連合(EU)離脱にどう立ち向かうのか。英国の先行きは一層不透明になってきた。(中略)

批判していた「少数政党との連立」
メイ首相が就任したのは昨年7月。サッチャー氏に次ぐ2人目の女性宰相として高い支持率で政権運営をスタートさせたが、改めてこの1年を振り返ると、発言に実行が伴わなかったことは否めない。

そもそもメイ首相は就任以降、「解散・総選挙はない」と言い続けてきた。だが、ライバルの野党・労働党に支持率で20ポイント以上の大差をつけると、4月になって突然、解散を宣言。前言を翻した理由を「EU離脱には強い政権が必要だ」と説明した。
 
選挙期間中は、労働党と少数政党との連立を「英国をカオスに陥らせる」と批判。単独の政党が政権を運営してこそ安定政権であるとの認識を示した。ところが、いざ保守党が単独過半数を割り込むと、北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)との閣外協力で合意。DUPの10議席と引き換えに北アイルランドに2年間で10億ポンド(約1420億円)の追加予算を措置する「袖の下」を贈り、政権維持を優先させた。
 
「メイ氏は『デッドウーマン・ウォーキング』だ」。ジョージ・オズボーン前財務相は、死刑台に向かって歩く死刑囚を描いた映画「デッドマン・ウォーキング」になぞらえ、政権にしがみつくメイ首相を痛烈に批判した。(後略)【9月9日 毎日】
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6月にロンドン西部の公営住宅で起きた火災もメイ首相にとっては痛手となりました。住民の間には、コスト削減や安全規制を緩和し続けた保守党政権の失政がもたらした惨事だという捉え方も少なくありません。

冒頭の“続投発言”からひと月以上が経過して、事態は改善していません。

****メイ英首相、辞任検討せず=スカイニュース****
スカイニュースは5日、英首相官邸の情報としてメイ首相は辞任を考えていないと報じた。「辞任は問題になっていない」としている。メイ首相と与党保守党の報道官はいずれもコメントを控えた。【10月5日 ロイター】
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「辞任は問題になっていない」と敢えて発表しないといけない状況というのは、とりもなおさず非常に追い込まれている、“もう辞めるのでは・・・”、あるいは“早く辞めてほしい”との見方が多く出ていることを示してもいます。

与党内からは党首交代要求も
メイ首相が4日に行った党内の結束を呼び掛けた党大会演説もトラブル満載だったようです。

****苦境のメイ英首相、トラブル続きの党大会演説****
英国のテリーザ・メイ首相は4日、与党・保守党の年次党大会の閉幕に際し演説し、党内の結束を呼び掛けた。

だが、ひどいせきが止まらず、演説を何度も中断したほか、途中に乱入者の妨害が入り、さらには背後にあった保守党スローガンの文字の一部が落下するというトラブルまで発生した。
 
この演説で、メイ首相の求心力の弱さが改めて浮き彫りになった。自ら前倒し実施に踏み切った6月の総選挙で過半数割れに追い込まれて以来、メイ氏は欧州連合(EU)離脱方針を巡り、党内に広がる溝を埋めようと努めてきた。
 
メイ氏の演説中、1人の男性が「 P45フォーム」(離職時に雇用主から発行される証明書)をボリス・ジョンソン外相からだとしてメイ氏に手渡した。同外相はEU離脱に対するメイ氏のアプローチを公然と批判している。
 
このハプニングの後、メイ氏はせきが止まらなくなり、声はかすれ、何度も演説を中断した。フィリップ・ハモンド財務相がメイ氏にのどあめを渡すと、会場は拍手に沸いた。演説の最後には、メイ氏の背後にあった保守党スローガンの文字の一部が落下した。
 
メイ氏は党員に対し、総選挙で大敗した責任を認め、「あまりにマニュアル通りでトップダウンすぎた」として、選挙運動に問題があったと謝罪した。
 
昨年10月の年次党大会はお祭りムードだった。6月の国民投票でEU離脱が決まったことや、メイ氏が党首選で勝利し、同大会で正式に党首に就任したことを受け、政府関係者や党員は意気揚々だった。
 
だが、今年の党大会は、メイ政権の基盤の弱さが露わになり、沈滞した雰囲気が漂っていた。
 
メイ氏は4日、EU離脱交渉の遅れやジェレミー・コービン氏率いる最大野党・労働党の躍進に不安を抱く党員たちの士気回復に努め、「気を引き締め、英国が必要としている政府を作り上げようではないか。われわれの地位が危ういなどと考えてはいけない。心配するなら野党のことを心配してあげよう」と呼び掛けた。
 
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のサイモン・ヒックス政治学教授は、空回りで終わったメイ首相の演説には国民からある程度の同情が集まる可能性があるとの見方を示した。
 
教授は「思うように出ない声や体調不良に悪戦苦闘する生身の人間としての姿が見えた。しかも周りは彼女を追い落とそうとしている敵だらけ。まるでロボットという彼女のイメージが変わった」と語った。
 
一方、政府は壊滅状態にあるという一部の人たちの見方が正しいことが立証されることにもなったという。「メイ氏は秋を乗り越えられるだろうか。全く分からない」と教授は述べた。
 
メイ氏は演説で、住宅建設を増やすことや大学授業料値上げの方針を撤回することを約束し、若年層の支持回復に務めた。
 
だが、EU離脱交渉については少し触れただけだった。合意が成立しないまま離脱するというシナリオも含め、あらゆる結果に備えているとし、「英国と欧州の双方にとって都合の良い着地点が見つかると確信している」と述べた。

また、早急に合意を形成するよう交渉団に求め、英国に住むEU市民に対して英国にとどまるよう呼び掛けた。【10月5日 WSJ】
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スローガンの文字の一部が落下したのはメイ首相のせいでもなんでもありませんが・・・。

まあ、評価は様々です。上記のような“悪戦苦闘する生身の人間”に対する同情論も出るのでしょうか?
支持勢力は、どんなことも“良い方向”に評価します。

“デービス欧州連合(EU)離脱担当相はロイターに対し「非常に良い演説だった。国民が懸念している問題すべてに触れていた」と評価。他の閣僚も称賛した。ある党員は「ハプニングがなかったら、もっと硬い演説になっていただろう」と述べた。”【10月5日 ロイター】

一方で、批判的な勢力からは、“「見ていられない」として一部の保守党議員の間で退陣論が再燃している”【10月5日 読売】

実際、苦境に立つメイ首相に対し、与党内から党首交代要求が公然と出されています。

****英保守党で党首交代論浮上、メイ氏支持派と対立鮮明に****
英国のグラント・シャップス元保守党議長は6日、メイ首相は党首選を実施すべきだと述べ、最大30人の議員が党首辞任を支持しているとの見方を示した。

一方、一部の閣僚はメイ氏の続投を支持する立場を表明し、同氏の進退を巡る党内対立が鮮明になった。

シャップス元議長はBBCラジオ5で「メイ首相は党首選を行うべきだ」とし、6月の総選挙敗北や閣内の不一致、党大会の状況などを踏まえると「悪い予兆がある」と述べた。

閣僚経験者5人を含め最大30人の議員が党首交代を支持しているとした。ただ、必要な数が集まるかどうかは不透明だと述べた。

党首選実施には48議員による書面での要請が必要になる。

一方、ラッド内務相はテレグラフ紙に寄稿し、メイ氏の続投を支持する立場を表明。政権ナンバー2のグリーン筆頭国務相もBBCテレビで「メイ氏はこれまでと同様に強い決意で職務を遂行する。それが自身の責任だと考えており、引き続き職務を遂行し、政権を成功に導くだろう」と述べた。

大衆紙サンがメイ氏の交代を支持する議員の話として伝えたところによると、現時点で党首選実施に必要な支持は集まっていないという。

党をまとめられる明確な後継者が不在であることに加え、保守党関係者の間では、党首選を行えば欧州政策を巡る党内の不一致がいっそう深刻になるとの懸念が強い。党首選が総選挙の引き金になり、労働党に勝利をもたらしかねないとの不安もある。【10月6日 ロイター】
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シャップス元保守党議長の政治的スタンス、EU離脱に関する立場などは知りませんが、同氏は“最大30人の議員”のなかには「EU残留派もいれば離脱派もいる」と述べています。

難航するEU離脱交渉 イギリス側の閣内不一致への不満も
肝心のEU離脱交渉の方は、EU側との溝が埋まらず、難航しています。

****英EU離脱交渉、進展不十分 将来の関係協議できず=欧州委員長****
10月3日、欧州委員会のユンケル委員長(写真)は、英国との欧州連合(EU)離脱交渉について、十分な進展がなく、将来の英国との関係について協議する「第2段階」に入る準備はできていないとの認識を示した。(後略)【10月3日 ロイター】
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****離脱交渉、清算金などで「深刻な意見の相違」=EU首席交渉官****
10月3日、英国の欧州連合(EU)離脱交渉でEU側の首席交渉官を務めるバルニエ氏(写真)は、交渉に十分な進展が見られず、清算金を含む問題で「深刻な意見の相違」が続いているとの見解を示した。(後略)【10月3日 ロイター】
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イギリス側の意見が与党・政権内でもまとまっていないこと、特に強硬論を振りかざすジョンソン外相への不満がEU側にはあります。

****欧州議会の有力議員、英外相の解任求める EU離脱交渉巡り****
欧州議会の最大会派を率いる有力議員で、メルケル独首相と連携するドイツのマンフレート・ウェーバー議員は3日、メイ英首相が欧州連合(EU)離脱交渉の進展を望むのであれば、同国のジョンソン外相を解任すべきだとの認識を示した。

EU離脱交渉を巡る欧州議会の審議で述べた。

同議員は、英政府内の見解の相違が、離脱交渉の進展を妨げていると指摘。「ジョンソン(外相)を解任してほしい」とし「ロンドンの誰と話をするかが大きな問題だ。メイ(首相)か、ジョンソン(外相)か、デービス(EU離脱担当相)か」と述べた。

欧州議会は、英国とEUの合意内容を承認する必要がある。

ウェーバー議員は、EU離脱強硬派のジョンソン外相が離脱に関して「超えてはならない一線」を独自に表明したことについて、英政府が「党内対立に陥っている」ことを示していると批判した。【10月3日 ロイター】
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当のジョンソン外相は・・・

****英閣僚、首相のEU離脱計画を「一言一句支持」=ジョンソン外相****
英国のジョンソン外相は与党保守党の党大会に先立ち、閣僚は団結して、メイ首相が9月にイタリアのフィレンツェで発表した欧州連合(EU)離脱計画を「一言一句」支持していると表明した。

外相は2016年に行われた離脱の是非を問う国民投票時、EU離脱(ブレグジット)支持派としてキャンペーンを展開していた。

外相は「メイ首相は、フィレンツェでの演説に基づいて英国を素晴らしい離脱協定へと導くため、不動の姿勢を取っており、英国全体が首相から恩恵を受けている。全閣僚は結束しており、演説を一言一句支持している」と述べた。

ただ、その数時間後には別のイベントで、離脱を巡る憂うつさが強すぎるとも話した。

外相はさらに「私はキャンペーンで『自分の国にかじを取り戻そう』というスローガンを掲げていた。首相も同じことを強く信じていると思う」と主張。「実行しようとするなら、上手くやらなければならない。英国にとって素晴らしい結果が得られる方法でやらなければならない」とし、「EUの周りを回る制限された軌道に閉じ込められるだけにならないよう、取り決めが必要だ」と主張した。【10月4日 ロイター】
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メイ首相は閣内の結束を強調していますが・・・・。

****メイ英首相、EU離脱交渉巡り閣内結束を強調****
英国のメイ首相は3日、欧州連合(EU)離脱交渉で最良の条件をいかに引き出すかを巡り閣内で様々な意見があることを歓迎するとした上で、閣内の結束を強調した。

メイ首相率いる保守党の年次党大会は、開幕前日に離脱強硬派のジョンソン外相がEUとの交渉で個人的に譲れないとする4条件を提示したことから、党内の結束に暗雲が漂っている。

メイ首相はBBCテレビとのインタビューで、全員がイエスマンではなく、異なった意見を持つ人達が議論し、合意に達し、その政府見解を提案することをできるようにすることがリーダーシップだと説明し、それはまさにわれわれが行っていることだと述べた。【10月3日 ロイター】
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“全員がイエスマンではなく、異なった意見を持つ人達が議論し・・・・”
そうなんですが、どうも実態は各自がバラバラに好き勝手にふるまうような状況にも見えます。

もっとも、こうした事態はメイ首相を引きずり降ろして、首をすげかえても、EU離脱という難題に関して与党内にも意見の対立がある状況では恐らく解消しないでしょう。

変えるべきは首相・党首ではなく、EU離脱への固執の方だ・・・と、個人的には思うのですが、まあ、どっちにしても反対論は残るのでしょう。民進党のように党を割らない限り。



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