孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

西アフリカで深刻な「エボラ出血熱」流行 「もはや制御不能」とも

2014-06-24 21:47:21 | 疾病・保健衛生

(現地で対応にあたる「国境なき医師団(MSF)」スタッフ 車の窓に貼られたシールは“武器は持っていません。攻撃しないで!”というものでしょうか? “flickr”より By PortalPE 10 https://www.flickr.com/photos/125339423@N06/14307030549/in/photolist-nvnzeN-nxrzaY-nxqtmX-nRLjxd-nzpYWT-nzqN8p-nzqXTr-nzp3L8-nTFvNt-nCn53W-nvnxkN-nm6H8v-nCn8rQ-nEnjjR-cfSDY9-nUABVG-nYbmbJ-nwVEva-nNggJv-nUzyhU-nLSS2a-ngwTGh-nxJkD2-nxALme-nMgRvM-nKC7sC-nMdyhh-ny3AHW-nNe8vu-nxM5mE-nMYxjm-nxZrDH-nxdmNh-nJD1pR-nMfCjv-nED7wX-nFSQEq-nJvnWs-nWtxWS-nsGvrs-nqkrXt-nNgNXZ-nHzx9m-nxi1ES-nFUoNG-nJ5Fov-nJ6G8H-nVY9Xe-nxRQTp-ncBGfn/)

過去最悪の流行 「もはや制御不能」】
「エボラ出血熱」については、2012年8月1日ブログ「ウガンダ エボラ出血熱で14人死亡」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120801)で、当時のウガンダでの流行を取り上げたことがあります。

西アフリカ・ギニアでの発生に関する報道を目にしたのは今年3月で、当時は「謎の病気」という扱いでした。

****ギニアで謎の病気発生、6週間で23人死亡****
西アフリカ・ギニアの保健省は20日、同国南部で正体不明の病気が発生し、6週間で少なくとも23人が死亡したと発表した。病気の正体については、まだ明確な特定には至っていないという。

同保健省で疾病予防を担当するサコバ・ケイタ医師は「、2月9日に発症例が初めて観察された発熱性の病気が、これまでに計36人で確認され、うち少なくとも23人が死亡した。死亡患者の中には、マセンタの病院の院長と職員3人が含まれている」と語った。

同医師は「被害が最も大きいのはゲケドゥ行政地区で、患者19人のうち13人が死亡した」と付け加え、「症状には発熱、下痢、嘔吐(おうと)が含まれ、一部の患者には出血もみられる」と指摘した。

この病気の症状は、ラッサ熱、黄熱、エボラ出血熱に似ており、感染力は非常に強い。ゲケドゥには、病気の特定を目指して医療専門家チームが派遣された。(後略)【3月21日 AFP】
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この報道直後の3月22日、ギニア保健省は同国南部で流行している非常に感染力の高い伝染病はエボラ出血熱だと確認されたと発表しました。この時点で死者は59人に上っていました。【3月23日 AFPより】

3月24日には、カナダにおいて、西アフリカ・リベリアへの旅行から帰った男性がウイルス性出血熱とみられる症状で重体となっていることも報じられるなど、人の移動に伴って遠隔地への感染拡大も懸念されました。【3月25日 CNNより】

前回2012年8月1日ブログで、“ウイルス感染によって引き起こされるエボラ出血熱は、感染したときの致死率が50~89%と非常に高いこと、現在のところ治療法が確立していないこと、自然界における宿主も定かでないこと、全身の内外出血というショッキングな症状を呈すること・・・などから、映画や小説のアウトブレイクものを連想されるところがあります。”と書いたように、強烈なイメージがある病気ですが、これまでも2008年のコンゴ、2011~2012年のウガンダで発生したように、散発的にアフリカで発生していますので、「またか・・・」という感もありました。

エボラ出血熱は毒性が非常に強いため、感染が拡大する前に感染者が死亡してしまい、インフルエンザのように爆発的に感染が拡大する心配はない・・・ということもあって、やがて終息宣言が出されるのだろう・・・と考えていました。

しかし、その後も犠牲者数が増え続け、範囲もギニアから隣国のリベリア、更にシエラレオネと拡大する“過去最悪の流行”となっています。

****西アフリカのエボラ、死者337人に 過去最悪の流行****
世界保健機関(WHO)は18日、西アフリカ3か国でのエボラ出血熱による死者が、これまでに起きたエボラ流行としては最多の337人に達したと発表した。

WHOによると、死者数は最も深刻なギニアで264人に達し、シエラレオネで49人、リベリアで24人。死者を含めた感染者数は3国で計528人となっている。

ただ、患者数の増加は感染の急速な拡大を意味しているわけではなく、同地域における警戒の高まりと、疑い例の感染が確認されたためにもたらされたものだと、WHO報道官は説明している。

今回発表された感染者数のうち、ギニアでの感染者は398人と、4月末時点で確認されていた121人の3倍を超える数となっている。

同国のアルファ・コンデ大統領は4月末、当局は十分な対応を取っており、これ以上の感染者は発生しないだろうと楽観的に語っていた。

一方、3週間前に最初の死者が出たシエラレオネでは、97人の感染が確認された。リベリアでは流行が数か月前に終わったとみられていたが、感染は再び拡大し、これまでに33人の感染者が確認されている。【6月19日 AFP】
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WHOは“患者数の増加は感染の急速な拡大を意味しているわけではない”と抑制気味ですが、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は“もはや制御不能”と深刻さを訴えています。

****西アフリカのエボラ出血熱、「もはや制御不能」 MSF****
西アフリカで流行しているエボラ出血熱について、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は23日、感染が深刻な地域が60か所を超え、「もはや制御不能」な状態だと語った。

「国境なき医師団」は報道発表文のなかで、「現在のエボラ出血熱流行は地理的な拡大、感染者および死者の数において前例をみない規模にある」としている。

致死率が最大90%とされるエボラ出血熱のまん延が、あまりに急速なため支援団体や医療関係者らも手に負えず、感染地域の住民たちは恐怖に陥っていると、MSFのオペレーション・ディレクター、バート・ジャンセンズ氏は言う。

「新たな感染地域がギニア、シエラレオネ、リベリアで見つかっており、(エボラ出血熱が)他の地域へも拡大する危険が現実に迫っている」(後略)【6月24日 AFP】
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「もはや制御不能」と言われても困るのですが・・・。

WHOと国境なき医師団(MSF)は、以前から事態の評価に関して差がありました。
4月時点でMSFが“前代未聞”の状態と発表したのに対し、WHOは“過去の流行に比べ異例の規模ではない”と反論していました。

****エボラ熱流行「前代未聞」=医療団体が警告―西アフリカ****
国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は31日声明を出し、西アフリカで広がりつつある致死性の高い伝染病エボラ出血熱について、「これまでにない規模の流行であり、前代未聞」の事態だと警告した。【4月1日 時事】
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****エボラ熱流行、異例ではない=医療支援団体に反論―WHO****
世界保健機関(WHO)は1日、西アフリカのギニアで感染が相次いでいる致死性の高いエボラ出血熱について、過去の流行に比べ異例の規模ではないとの認識を示した。

国際医療支援団体「国境なき医師団」は「前例のない規模」との認識を示しているが、これに反論した。(後略)
【4月1日 時事】 
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現場サイドの見方であるMSFと、国際的な影響なども考える必要があるWHOの立場の違いもあるのでしょう。
WHOが決定を下すと、各国はそれに対応した対策(市民生活を制約するものを含め)をとる必要があり、事態は一気に拡大します。新型インフルエンザなどでも、どの時点でパンデミックを宣言するか、WHOは非常に難しい決定を強いられます。

抑制気味なWHOですが、事態の深刻さは否定していません。

****西アフリカ:WHO専門家「エボラ出血熱、深刻な状況****
世界保健機関(WHO)の感染症の専門家フォルメンティ博士は28日、ジュネーブで記者会見し、ギニアなど西アフリカで3月以降流行したエボラ出血熱について「依然として深刻な状況だ」と指摘、今も終息に向かっていないとの見解を示した。

フォルメンティ氏は最近ギニアからジュネーブに戻ってきたばかり。「地理的に感染が広がっており、憂慮すべきだ」と警告、地元住民にエボラ出血熱の危険性を周知させることが最優先課題だと強調した。(後略)【5月29日 毎日】
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葬儀の準備で遺体を手で洗うという風習が感染を拡大
今回の感染拡大の背景には“葬儀の準備で遺体を手で洗うという風習”があることが指摘されています。

****ギニアでエボラ感染拡大、原因と対策は****
・・・原因のウイルスは血液などの体液を媒介に伝染。進行すると、発症者の口腔や鼻腔、消化管などから激しく出血する。
世界保健機関(WHO)によると治療法は確立されておらず、致死率は90%に達する場合もあるという。

ニューヨークにあるコロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院、ジョン・スノウ冠教授(疫学)のイアン・リプキン氏に話を聞いた。

◆ヒトはどのように原因ウイルスと接触するのでしょうか?

コウモリや霊長類など、発症した動物が感染源と考えられます。ヒトへの流行以前に、近隣地域でゴリラなどの類人猿が死亡するケースも確認されています。ただし今回は、霊長類の死亡に関する情報はまだありません。

◆動物からヒトに伝染する原因は?

最初の感染は野生動物の肉が媒介しました。コウモリや霊長類をタンパク源として食用処理する過程で、動物の血液に触れることになります。

◆ヒトからヒトへ伝染する経路は?

簡単には伝染しません。しかし、ある地域には、葬儀の準備で遺体を手で洗うという風習があります。魂を来世に送るための愛情深い方法なのです。このような行為を通じて患者の体液に非常に接触しやすくなり、感染してしまうんですね。

基本的に空気感染しないウイルスなので、遺体を洗う行為に歯止めがかかれば、流行のコントロールは比較的容易と言えるでしょう。

◆性的接触ではどうでしょう?

一部には性行為による伝染の証拠もありますが、大きな問題とは思いません。主な原因は、感染した動物の肉食と葬儀の習慣です。

◆今回のケースでは、ウイルスがギニアの地方から首都へ、さらに国境を越えて広がっているようです。

そこが通常とやや異なる点で、ヒトがキャリアになっていると見られます。エボラ出血熱の流行は、野生動物の肉と接触するジャングルや地方で発生するのが一般的です。

今後、疫学的調査を行えば、どのように国境を越えたのか興味深い事実が判明することでしょう。遺体の搬送も、有力な拡大原因の1つです。

ある地域で誰かが亡くなった場合、関係者が現地で遺体の世話をすれば、それ以上は感染が拡大しません。埋葬のために遺体をほかの場所に搬送したり、都市部の人間が地方の葬儀で往復するような場合、感染が広がる可能性があります。

◆エボラ出血熱は必ず死に至るのですか?

回復するケースもありますが、極めて危険な感染症です。感染の兆候を示した患者の大部分は死亡しています。

◆治癒は可能でしょうか?

まだ有効な治療薬はありませんが、研究が進められています。

◆ワクチンは効果がありますか?

ワクチンは基本的に、大規模な感染症の予防のために用いられます。有効なワクチンがある場合でも、使用には常に潜在的なリスクが伴います。

それよりも、患者の治療法をオンラインで公開する方が効果的ですね。回復した患者から採取した治療抗体も重視されています。ワクチンの迅速な作成や、ウイルスの自己複製を抑える医薬品開発につながるためです。

まだ流通している薬はありませんが、一部の動物実験では、ワクチンを接種して発症を抑えた例があります。

◆今回の流行はいずれは阻止されるでしょうか?

通常は、国境なき医師団のような国際団体が現地に入り、地域を封鎖します。さまざまな診断検査でスクリーニングを行い、感染者を特定します。葬儀の習慣のような行為があれば、やめるように指示します。このようにしてパンデミックが抑えられるのです。

しかし報道によると、今回は期待どおりには抑えられていません。多くの犠牲者が出るかもしれませんが、自然治癒性の流行であるよう願っています。既に死者は60人を上回っており、予断を許さない状況ですが。【3月28日 ナショナルジオグラフィック】
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“基本的に空気感染しないウイルスなので、遺体を洗う行為に歯止めがかかれば、流行のコントロールは比較的容易と言える”と思われていたのですが、事態は悪い方向に進んでいるようです。

前出【6月24日 AFP】にあるように、最前線で対応にあたっているMSFが「もはや制御不能」と言っていますので、残念ながら感染は更に拡大しそうです。

手が付けられない山火事が燃えるだけで燃えて自然鎮火するのを待つしかない・・・・そんな悲観的状況も想起されますが、遺体への対処法など、これまで以上に住民への周知徹底をすることで極力犠牲者を減らすように関係者の努力が望まれます。

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