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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  タリバンとの“取引”に高まる国内批判

2014-06-04 23:49:22 | アメリカ

(ボウ・バーグダル陸軍軍曹の解放を呼び掛ける看板 【6月4日 Newsweek】

【「不釣り合いな捕虜交換」】
一昨日、6月2日ブログ「アメリカ 米軍兵士の解放でタリバンと取引 ナイジェリアの女子生徒は?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140602)で取り上げた、アメリカが拘束中のタリバン幹部5名を解放する見返りに、5年間タリバンに拘束されていた米軍兵士1名が解放されることになった“取引”が、アメリカ国内で問題となっています。

もとより、テロ組織などとの取引には、同様の犯罪を助長することになるという批判はつきまといます。

それでも、オバマ政権は取引を行い、「米国は兵士を見捨てることはない」と、その成果を強調しました。
また、今回の取引が、米軍のアフガニスタン撤退を見据えて、タリバンとの和平交渉の糸口となることも期待されています。

取引批判のひとつは、解放されたタリバン幹部が、遠からず戦線に復帰するであろうことを懸念するものです。

****米兵1人対タリバン幹部5人 「不釣り合いな捕虜交換」に批判****
米政府がアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンに拘束されていた米兵1人の釈放と引き換えに、キューバのグアンタナモ米海軍基地内のテロ犯収容施設に収監されていたタリバン幹部5人をカタールに移送したことに激しい批判が起こっている。

幹部には旧タリバン政権時代の内相や国防次官らが含まれており、野党共和党は「不釣り合いな捕虜交換」(ダンカン・ハンター下院議員)だと指摘している。

オバマ米大統領は5月31日、2009年から米兵としてタリバンに唯一拘束されていたボウ・バーグドール陸軍軍曹(28)が約5年ぶりに釈放されたことを、ホワイトハウスにバーグドール氏の両親を招いて自ら発表した。

オバマ氏は「米国は軍人を決して置き去りにはしない。最高司令官としてバーグドール氏を危機から救ったことを誇りに思う」と述べた。また、タリバン幹部の移送先であるカタールの政府が、米国の安全保障を守る方策を取ると約束したとして、問題はないとの立場を強調した。

アフガンからの全面撤退に向けた行程表を発表したオバマ政権は、今月14日のアフガン大統領選の決選投票を経て発足する新政権とタリバンとの和平交渉を後押しする構えだ。

移送を通じ、タリバンの姿勢を軟化させる狙いもあるとみられる。また、ブッシュ前政権下での収容施設での「敵性戦闘員」の非人道的な扱いを問題視してきたオバマ氏としては、施設閉鎖に向けた一歩にしたい考えだ。

しかし、移送される幹部らが再び野戦司令官に戻るとの懸念は根強い。しかも、国防総省はバーグドール氏が自ら部隊を離れたとしており、5対1の「捕虜交換」が本当に必要だったのかと、共和党や米メディアが異を唱えている。【6月4日 産経】
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この種の批判は当然に予測されたものです。

交換の比率については、考え方次第です。
イスラエルはハマスとの間で、兵士1名と拘束中のパレスチナ人1027人の交換に応じたこともあります。

****ハマスに拉致されたイスラエル兵、5年ぶりに帰国****
2006年6月にパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスに拉致され、同地区に拘束されていたイスラエル軍兵士、ギラド・シャリート曹長が18日、1941日ぶりに解放され、故郷のイスラエル北部Mitzpe Hila村に帰還した。

イスラエルとハマスは前週、シャリート曹長とイスラエルで拘束中のパレスチナ人1027人を交換することで合意していた。1027人の中には、イスラエルへの攻撃に関与したとして終身刑を受け、服役中の数百人も含まれている。(後略)【2011年10月19日】
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脱走?裏切り?】
ただ問題は、タリバン幹部の解放というアメリカにとって大きな代償を払って解放にこぎつけた米陸軍軍曹(28)には、ともに戦った兵士のなかから“脱走兵”“裏切り者”との批判があることです。

****5年ぶり解放の米兵は裏切り者か****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンによって拘束されていた米陸軍軍曹のボウ・バーグダルが先週、5年ぶりに解放された。
だが、この知らせに誰もが手放しで喜んでいるわけではない。

米政府はバーグダルの代わりにキューバのグアンタナモ米軍基地に拘束していたタリバンのテロリスト5人を解放した。共和党をはじめとする一部の米議員は、こうした「人質交換」はタリバンの戦力強化につながると批判。

その上、バーグダルは英雄どころか脱走兵だったという疑惑が持ち上がっている。

バーグダルの小隊の一員だった元軍曹のマット・ビールカントは、バーグダルは脱走容疑で軍事裁判にかけられるべきだと、CNNに語った。バーグダルは09年6月30日にアフガニスタンの駐屯地から姿を消し、5年にわたりタリバンに拘束されていた。

現在はドイツにある米軍の病院施設に移送され、治療を受けている。「彼が姿を消した当時はムカついたが、その後の成り行きにはもっとムカついている」と、ビールカントは言った。「バーグダルは戦争のさなかに脱走し、仲間の米兵は彼の捜索で命を落とした」。

CNNによれば、アフガニスタン東部パクティカで行われたバーグダルの捜索で少なくとも6人の米兵が亡くなったという。

アメリカの戦争に幻滅?27歳の元上等兵ホセ・バゲットはCNNに語った。「彼は警戒任務の最中にいなくなった。逃亡したのか裏切り者になったのか誘拐されたのか、誰も知らない。分かっているのは、米軍を守るべきだった彼がアメリカに背を向け、自分勝手に行動したということだ。なぜそんな決断をしたのか分からないが、私たちは彼の捜索のためにさまざまなものを犠牲にした。数人の米兵の命も犠牲になった」

バーグダルへの怒りをぶつけようと、ソーシャルメディア上に「ボウ・バーグダルは英雄なんかじゃない」と題したウェブページを開いた米兵もいる。

敵意に満ちたコメントが寄せられたが、こんな声もあった。「彼を裏切り者だと決めつける人には、武装勢力に5年間拘束されてみろと言いたい。それでもまだ彼を非難できるだろうか。彼が逃亡するなり拘束されるなりした時にどういうつもりだったにせよ、彼はもう十分過ぎる代償を払った」

ローリングストーン誌は12年、バーグダルがアメリカの戦争に幻滅していたと報じた。彼は両親にこう話していたという。「嘘にまみれて時間を浪費するのはもったいない。人生は短いから、他人のゴタゴタに付き合ったり、ばかな奴らの間違った考えに協力したりする暇はない。彼らの考えをずっと目にしてきて、僕はアメリカ人であることすら恥ずかしく思う。アメリカ人がどっぷり浸かっている独善的で傲慢な態度は恐ろしい。すべてがぞっとする」
【6月4日 Newsweek】
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“ニューヨーク・タイムズによると、軍曹は2009年6月、「陸軍に幻滅した。米国の任務を支持しない。新しい人生を始める」と書いたメモを残し、駐屯地のテントを抜け出した。同紙は「軍曹は現地の言葉を学んでいた」「よく山をじっと見つめ、中国へ行けたらと話していた」などとする元同僚の証言も伝えた。”とも報じられています。

不思議なのは、こうしたバーグダル氏に関する情報は、当然にオバマ政権は把握していたと思われますが、そうした評価についてどのように考えてていたのか・・・ということです。

戦線離脱兵士であろうと、「米国は兵士を見捨てることはない」という点については変わりはないと確信しているのでしょうか。
それはそれでひとつの見識ですが、国内で問題になることは避けられません。

“米陸軍は3日、ドイツで療養中の軍曹の回復を待って拘束の経緯を聴取する方針を明らかにし、デンプシー統合参謀本部議長は「違法行為があったなら見逃さない」とする声明を出した。ただ、野党・共和党はオバマ政権の対応を問題視しており、追及を強める構えだ。”【6月4日 時事】

****タリバン幹部解放 米野党が政権を批判****
アメリカ政府が、アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンに拘束されたアメリカ軍兵士の解放の見返りにタリバンの幹部5人を釈放したことについて、野党・共和党などから議会への説明が足りなかったなどと批判の声が上がり、オバマ政権は釈明に追われています。

アメリカ政府は先月31日、アフガニスタンでおよそ5年前から反政府武装勢力タリバンに拘束されていたアメリカ軍兵士の解放の見返りに、キューバにあるグアンタナモ収容所にいたタリバンの幹部5人を釈放しました。

これについて野党・共和党などからは、議会への事前の説明が足りないままテロリストとの交渉に応じたなどと批判の声が上がっています。

これについてオバマ大統領は3日、訪問先のポーランドで「兵士の健康状態が懸念されるなか解放の機会が訪れた。このチャンスを逃したくなかったので一部の手続きを省いた」と説明し、理解を求めました。

一方、アメリカのメディアは、兵士が部隊から逃亡してタリバンに拘束された疑いがあると伝えており、オバマ政権が解放を急いだことを疑問視する報道も出ています。

これについてマクヒュー陸軍長官は3日、「兵士の健康状態が回復すれば詳しく事情を聞く」とする声明を発表するなど、解放交渉への批判の高まりを受けてオバマ政権は釈明に追われる事態となっています。【6月4日 NHK】
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