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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ養殖エビの“奴隷労働” カンボジアでは農地が収奪されサトウキビ農園に その消費者は・・・

2014-06-15 21:18:34 | 東南アジア

(カンボジア 25ドルで先祖伝来の農地をブルドーザーでいきなりつぶされ、できたサトウキビ農園で日給2.5ドルで働く女性 【6月17日号 Newsweek日本版】)

【“よくある話”】
国境を越えて資金と物資を自由に動かす多国籍企業、生産拠点を賃金の安い途上国に移す企業・・・そうした世界規模の経済が展開する今日、普段私たちが食べたり使ったりする安価な商品の多くが海外、特に途上国で生産されたものであることは常識です。

そして、途上国の労働環境が時として劣悪なことも周知のところです。
昨年4月、バングラデシュで複数の縫製工場が入る8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故によって1100名を超える犠牲者が出た際も、劣悪な労働環境で生産された商品を取引していた先進国企業の姿勢が問題になりました。

そんな“よくある話”のいくつか。

****世界で売られる“奴隷労働”養殖エビ 日本にも拠点…国内流通か****
養殖エビの世界最大の輸出国であるタイで、ミャンマーやカンボジアの出稼ぎ労働者がエビの餌となる魚を獲る漁船で過酷な労働を強いられ、少なくとも20人が死亡するなど深刻な虐待を受けていると、英紙ガーディアン(電子版)が10日、報じた。

タイ最大手の食品メーカーが魚を加工した魚粉を餌として買い取りエビを養殖して輸出しており、“奴隷労働”によるエビが欧米の大手スーパーで売られていると警鐘を鳴らしている。この食品メーカーは日本にも拠点があり、国内でも流通しているとみられる。

「死ぬと思った。やつらは私を鎖につなぎ、食事も与えなかった。われわれは動物のように売り払われた」。公海上で操業していた漁船から脱出したという、カンボジアの元僧侶の被害者は、ガーディアンにこう明かした。

ミャンマー出身の被害者は「一生懸命働いても殴られた。数え切れないほどのミャンマー人が奴隷として売られた」と説明し、「20人の仲間が殺されるところを見た」と証言した。

約半年にわたる調査に基づいた報道によると、労働者たちは無給で、1日20時間の労働を強いられた。眠らないように覚醒剤を打たれたり、拷問を受けたり、見せしめに仲間を殺されたりしたという。

労働者たちは、もともと工場や工事現場で働いていたが、ブローカーによって1人250ポンド(約4万3000円)以下でトロール船の船長に売られ、拘束されたとしている。

こうして獲られた魚のうち、食用に適さなかったものが魚粉に加工され、養殖エビの餌として販売されていた。
それを購入していたのがタイ最大の食品会社「チャルーンポーカパン(CP)フーズ」。

タイ最大のコングロマリット(複合企業体)「CPグループ」の食品部門として、年商330億ドル(約3兆3000億円)を誇り、総輸出量50万トンといわれるタイ産エビの約10%を担っている。

CPフーズの担当者は、ガーディアンに対し、過酷な労働によって獲られた魚であることを知っていたと認めた上で、「金もうけのために行われてきたことは明らかなので、解決したい」とコメントした。

CPフーズの取引先には、米国のウォルマート・ストアーズやコストコ、フランスのカルフール、英のテスコという世界4大スーパーが名を連ね、日本の大手もCPフーズの養殖エビを販売しているとみられる。

国際団体、反奴隷制インターナショナルの責任者エイダン・マクウェイド氏はガーディアンに「タイ産のエビを購入することは、奴隷労働で生産した商品を購入することだ」と非難。

タイ政府も「人身売買との戦いは国家の優先事項である」とコメントし、問題解決に本腰を入れて取り組む姿勢を示した。

また、米ウォルマートは「タイのシーフード輸出産業から奴隷制度を根絶するための重要な役割を果たしたい」とし、CPフーズとの取引を見直すことを示唆した。

国際労働機関(ILO)によると、タイでの人身売買や奴隷労働は世界最悪の水準にある。また国際移住機関(PDE)の2011年のリポートは、タイの漁船で奴隷労働に従事した人の59%が、同僚の殺害を目撃していたと報告している。【6月12日 SankeiBiz】
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「蟹工船」の世界のようです。
実を言えば、昨日私はブラックタイガーを食べました。どこの国で養殖されたものかは知りませんが。

“よくある話”をもう一つ。

****EUが目をつむる農民搾取の現実****
対EU輸出でサトウキビ生産が急成長 だがその陰には土地を奪われた農民の涙がある

木造高床式の掘つ立て小屋脇のたき火で、39歳のルーブ・ベウーンは食事の準備に忙しい。彼女がかき混ぜているのは、近くの森の蜂の巣から採ってきたローヤルゼリー。今日手に入れることのできた唯一の食料だ。

「4年前までは、いい暮らしができていた」と、黄色いドロドロの液体をわずかなコメと混ぜながら彼女は嘆く。「今では生きるためにサトウキビ農園で奴隷のように働かなくてはいけなくなった」

8人の子供を抱え、毅然としながらもその目に深い悲しみを宿したループは、数年前までこの村のごく普通の農民の1人たった。

カンボジアの首都プノンペンから75ご西にあるコンポンスプー州の村カウクで、彼女は毎朝早起きし、家族のためにささやかな朝食を作ってから、自分の水田に仕事に出掛けていた。はるか昔から彼女の先祖が耕していた2ヘクタールの土地だ。

夫と共に稲作に従事し、8人の子供たちを学校に通わせられるだけのコメを収穫。暮らしは質素だったが、安定していた。

その生活が一転したのは2010年3月のこと。地元の製糖工場の関係者が警官と兵士を引き連れて村を訪れ、住民が懇願するのにも耳を貸さずにルーブや他の20世帯が所有する土地を奪ったのだ。数時間のうちにブルドーザーが水田をつぶし、サトウキビ農園に造り替えてしまった。

これはカウク村だけの出来事ではない。その前年には別の村で、サトウキビ農園に転換するため土地を回収するよう指示された治安部隊が、村で放火や銃撃を行い、抵抗する村人を殴ったり逮捕するなどして罪に問われる事件が発生した。

奪われた土地で日雇い
事前に何の通告も相談もなく、ループは家と土地を収奪された。彼女の唯一の生きる糧だった水田は、わずか25ドルの補償金に消えた。

「怒りでいっぱいだが、私にはどうすることもできなかった」と、涙をためながら彼女は言う。「地元当局者はカネを受け取ったほうがいいと言った。どちらにしても土地は取られるんだから、と」

今ではルーブは、気の毒に思った親戚が貸してくれたわずかな土地に、間に合わせの家を建て家族と暮らしている。屋根に大きな穴の開いた木造の家は、サトウキビ農園のすぐ脇に立つ。

皮肉なことにループは現在、この農園で日雇い労働者として働いている。1日10時間サトウキビの収穫作業に従事して2.5ドルの日銭を稼ぐ。

自分の土地を奪われ、ほかに収入の当てもない彼女にとって、現実的にやむを得ない決断だった。カンボジア中で多くの人々がルーブと同じ運命をたどっている。それも、ヨーロッパの人々の砂糖への渇望を満足させるために。

現在カンボジアで生産される砂糖の97%が、最大の得意先であるEUに輸出されている。EUへの輸出は、カンボジアの砂糖生産を急成長させた要因だ。

カンボジアでサトウキビ農園の多くが操業を始めた07年から13年にかけて、カンボジア産砂糖の対EU輸出額は6万1000ドルから5300万ドル近くにまで急増した。

その背景にあるのは、「武器以外すべて(EBA)」と呼ばれる貿易規定だ。EUは01年3月、国連が後発開発途上国と指定した国を対象に、武器以外のすべての製品の輸入関税をゼFこするなどの優遇制度を採用した。

コーヒー、ソフトドリンク、子供のバースデーケーキ……。ヨーロッパに住む人なら誰でも、ルーブのようなカンボジアの人々の収穫したサトウキビからできた砂糖を味わっている可能性が高い。

一方、ヨーロッパとは違い、カンボジアでは砂糖はほろ苦いものでしかない。

地元NGOによれば、カンボジアでは06年以降、少なくとも3500世帯がサトウキビ農園のために土地の立ち退きを迫られてきた。抵抗する者は殴られたり逮捕されたりして黙らされた。
大抵の場合、彼らが立ち退きを知らされるのはブルドーザーが到着してからだ。(後略)【6月17日号 Newsweek日本版】
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25ドルで先祖伝来の農地をブルドーザーでいきなりつぶされ、できたサトウキビ農園で日給2.5ドルで働く。
全く関係ありませんが、アメリカ・シアトルでは「最低賃金」が時給で15ドルになったそうです。

****シアトル市が下した最低時給15ドルの「英断****
米ワシントン州のシアトル市議会が、最低賃金を現行の時給9・32ドルから破格の15ドルに引き上げる法案を満場一致で可決した。

アメリカ最高の水準であり、今後7年以内で段階的に導入する計画だ。15ドルの最低賃金は、昨年11月に同州シータック市の住民投票でも承認されている。

「1年前、15プはプラカードに載る『数字』にすぎなかった。それが今日、シアトルの10万人の労働者にとっての現実になった」と、ファストフード店の1年前の大規模ストライキを支援した団体「ワーキング・ワシントン」の広報担当は言う。

法案の支持者は、シアトルは物価が高いだけでなく、現在の最低賃金ではフルタイムで働いても年収約1万9300ドルにしかならないと指摘していた。

「低賃金で生活が苦しいという不満と怒りが、ファストフード店のストライキを生んだのだろう」と、ニックーリカータ市議は言う。「少数の人々の手にどれはどのお金が集中しているか、われわれは分かっている」

マリー市長は最低貫全引き上げを支持し、法案の投票時には議場の後方で見守っていた。有権者も同様で、先月の調査では賛成が74%に達している。【6月17日号 Newsweek日本版】
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タイやカンボジアの話の対極としては、本来は“お金が集中している少数の人々”を話題とすべきなのでしょうが、別世界の話は現実感がないので。

いずれにしても“よくある話”です。
そうした世界でわずかばかりの便益を受けている一人として、どのように考え、どのように行動すべきかは非常に難しい話ですが。
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