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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク  スンニ派イスラム武装勢力の活動で混乱が拡大  サウジアラビアは路線変更?

2014-06-08 22:43:48 | 中東情勢

(アンバル州の州都ラマディ 5月21日 反政府勢力と治安部隊の戦闘で火災にあった住宅 【6月8日 AFP】)

イラク国内の治安はここ数年で最悪
イラクでは4月30日に行われた連邦議会選挙の結果、マリキ首相が率いるイスラム教シーア派主体の党派「法治国家連合」が92議席(定数328)を獲得して、最多の議席を確保しました。

その他の政党については、シーア派の他の有力2党派が計57議席、スンニ派主体の3党派が計54議席、少数民族クルド人の5党派が計62議席を占めています。

第1党となったマリキ首相派ですが、過半数には届かないため、連立政権の発足に向けてスンニ派やクルド人勢力も含めたほかの政党連合との交渉が行われています。

ただ、マリキ首相については、その強引な政治姿勢について他派からの批判が強く、また、シーア派とスンニ派の宗派間対立が激化している状況では、連立交渉は難航することが予想されます。

その宗派間の対立、スンニ派のイスラム過激派を中心とするテロ活動は激しさを増しています。

****イラクのイスラム武装勢力、大学で学生らを人質に*****
イラクの首都バグダッドの西に位置するアンバル州の州都ラマディで7日、イスラム武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が市内の大学に立てこもり、学生と職員数百人を人質にとったが、特殊部隊の突入で人質は全員解放された。イラク政府が発表した。

地元警察によると、ISILの戦闘員らは、付近のアルタシャ地区からアンバル大学に侵入し、警備員数人を殺害した後、正門に通じる橋を爆破した。

現地のAFP記者によると、特殊部隊が突入してキャンパスを奪還したが、その際に携行式ロケット弾を使用するなど、武装勢力との間で激しい銃撃戦になったという。

アドナン・アサディ内務副大臣は電子メールで声明を発表し、治安部隊は「アンバル大学の学生寮から人質となっていた男女の学生全員を解放」し、出入り口にある検問所は復旧したと述べた。

またサード・マーン内務省報道官はAFPに対し、人質は全員解放されたと述べたが、死傷者については言明しなかった。

イラク北部では、治安部隊とイスラム武装勢力との激しい戦闘が2日目に入り、59人が死亡している。バグダッドでは、相次ぐ爆弾攻撃で少なくとも25人が死亡した。

武装勢力は、この数日間に複数の州で大規模な作戦に乗り出しており、これまでの死者は200人を超える。イラク国内の治安はここ数年で最悪となっており、武装勢力の拡大が浮き彫りになっている。【6月8日 AFP】
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国際テロ組織アルカイダから派生し、今ではアルカイダのコントロールも無視して独自の活動を続けるイスラム過激派組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は、イスラム国家の樹立を掲げてイラクからシリアに至る各地を占拠し、世界中の過激派を引き寄せています。

アメリカはシリア反体制派を支援してきましたが、アサド政権が崩壊すれば、今度はシリアがISISなど過激派の拠点になりかねないとの懸念を強めています。

イラクにおいては、スンニ派の多いアンバル州を拠点としています。
“イスラム教スンニ派が大半のアンバル州で昨年末、シーア派のマリキ首相に対するデモが激化。強制排除で死傷者が出たため、治安部隊が事態の沈静化を狙って中心部から引き揚げた隙にISISが入り込み、警察署などを占拠した。4カ月が過ぎた今も奪還のメドは立たない。”【4月30日 朝日】

この事態に、アメリカもイラク支援に乗り出しています。
“米国のオバマ政権は米軍の撤退後、イラクとは距離を置いてきた。だが、ISISが勢力を伸ばしはじめた昨年末に方針を転換。イラクに対して空対地ミサイルやアパッチ攻撃ヘリコプターなどを供与し、米軍特殊部隊も隣国ヨルダンで訓練を始めたとされている。”【同上】

前出【6月8日 AFP】にもあるように、モスルなど北部で治安部隊と戦闘が続いており、首都バグダッドでも連続爆弾テロが起きています。

****バグダッドで連続爆弾テロ 過激派犯行か****
イラクの首都バグダッドでおよそ1時間の間に7か所で連続して爆弾テロがあり、少なくとも20人が死亡し、イスラム教の宗派間の対立をあおろうとする過激派の犯行とみられています。

イラクの治安当局によりますと、バグダッドで7日夜、買い物客でにぎわう市場や交通量の多い大通りなど7か所で、自動車に仕掛けられた爆弾がおよそ1時間の間に相次いで爆発し、これまでに少なくとも20人が死亡し、80人がけがをしました。
爆発があったのは、イスラム教のシーア派の住民が多く暮らす地域で、治安当局は、スンニ派中心の国際テロ組織・アルカイダ系の過激派による犯行とみて捜査しています。

イラクでは、ことし4月に行われた国民議会選挙でシーア派のマリキ首相率いる政党連合が第1勢力となりましたが、スンニ派を中心にマリキ政権は独裁的だと反発が強まっています。

こうした状況のなか、イスラム過激派勢力は宗派対立をさらにあおろうと活動を活発化させていて、7日には北部のモスルでも市街地を占拠する過激派が治安部隊と激しく衝突し双方に多数の死傷者が出るなど、治安の悪化に歯止めがかからない状況が続いています。【6月8日 NHK】
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増加する国内難民 戦闘で支援も困難
宗派間内戦再燃が懸念される状況で、国内難民が増大しています。

****イラクの国内避難民、戦闘激化で48万人近くに UNHCR****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6日、イラク西部アンバル州で数か月にわたって続いている戦闘により、自宅を追われた国内難民の数が48万人近くに達した可能性があると明らかにした。

スイス・ジュネーブで記者会見したUNHCRのエイドリアン・エドワーズ広報官は、「イラク政府によると、今年1月に同州での戦闘が激化し始めて以降の国内避難民は、本日(今月6日)現在で約43万4000人に上っている。しかし、イラク当局は1か月ほど前から、不安定な情勢を理由にやむなく避難民の登録受け付けを中止しており、実際の状況は把握できていない」と説明。
「UNHCRは、現在の国内避難民の数は48万人に近いとみている」と述べた。

こうした危機的状況の影響を受けた人たちのため、UNHCRは今年3月から支援を呼び掛ける活動を開始した。しかし、集まった金額はこれまでのところ、必要とされる2640万ドル(約27億円)のわずか12%にとどまっている。

内戦が続く隣国シリアと国境を接するアンバル州では昨年12月、州都ラマディでイスラム教スンニ派のアラブ人が長期にわたって運営してきたデモキャンプを治安部隊が排除。これをきっかけに周辺地域は危機的状況に陥った。

■長期化する戦闘
デモキャンプの排除後、反政府勢力は首都バグダッドに近い同州ファルージャの全域とそのさらに西方のラマディの一部を掌握。その後、戦闘が長期にわたってもなお、砲撃やミサイル攻撃は州内各地で続いており、問題解決の糸口は見えていない。

エドワーズ氏によると、反政府勢力側が州内のダムを破壊した後、国内避難民は急増した。水浸しになったダム周辺の約7万2000人が自宅を離れて避難した。さらに、ダムの破壊によって人々が清潔な水の入手に苦しむことになり、健康リスクが増加。危機は一層拡大した。

「地元当局者によると、この地域には毎日、給水車28台分の飲料水が輸送されているが、これは必要量の半分にすぎない」という。ファルージャでは先ごろ病院と水処理施設が砲撃を受けたため、さらに多くの市民の流出が懸念されている。

しかし、同氏によると、切実に援助を必要とするこれらの人々を支援する取り組みは、戦闘の継続によって妨げられている。

「われわれは緊急に対応を強化する必要に迫られているが、3つの理由によって困難になっている。(その理由とは、)州内の治安悪化により、支援が必要な人々の元への訪問が妨げられていること、人々の避難先が国内各地に及んでいること、支援が不足していることだ」【6月8日 AFP】
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サウジアラビア:イランとの関係修復に動く?】
イラク・シリアの状況を悪化させているイスラム過激派組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」のスポンサーはスンニ派の盟主を自任するサウジアラビアだとも言われています。

しかし、サウジアラビアでは、これまでイスラム過激派を支援してきたとも言われているバンダル王子が4月に総合情報庁長官の地位から解任されています。

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今回バンダル王子からシリア反政府勢力「支援」を引き継いだのは、ナエフ内相だとされている。

ところがこのナエフ内相の父親ナエフ王子は、内相を30年以上勤めて国内のアル・カイダ勢力を潰滅させた人物であるばかりでない。2011年12月にはイランのモスレヒ情報相とも会談しているのである。

この(父)ナエフ内相は2012年6月、スイスで79歳で「急死」している。その後を継いだのが、現在のナエフ(息子)内相なのである。アル・カイダとは関係が良くないのだろう。【6月5日 Japan-World Treds】
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こうしたサウジアラビア国内の路線変更もあって、シーア派の盟主、宿敵イランとの接触を申し出ているとも報じられています。

****イランと関係改善も=サウジ外相****
サウジアラビアのサウド外相は13日、首都リヤドで記者団に対し、長年緊張状態にあるイランとの関係を改善する用意があると表明した。AFP通信が伝えた。

サウド外相は「イランは隣国であり、彼らと交渉を行う」と述べ、既にザリフ・イラン外相にサウジ訪問を招請したことを明らかにした。【5月13日 時事】 
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過激派支援をサウジアラビアが止めて、マリキ政権を支援するイランとも関係改善を図る・・・という話になれば、シリア・イラクの状況にも変化が生まれることも考えられます。

まだ、先行きは不透明な話ではありますが。
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