与那国町役場では、総務課の田島政之係長が1人で町民の避難計画作りを担っている。
島で暮らす住民は約1700人。
町が避難の手段として検討しているのが、週に2便の民間フェリーだ。
しかし、1度に乗れるのは約120人。
もしものとき、どう輸送手段を確保し、どのタイミングで避難を呼びかけるべきか。
田島さんは頭を悩ませている。
与那国町 田島政之係長
与那国町総務課 田島政之係長
「1回で全員が避難できればいいんですけど、それは無理なので、優先順位をどうつけるのかが難しい。高齢の人や障害がある人などいろいろな要素があると思うんですが…」
安全保障関連法によって、新たに定められた「存立危機事態」や「重要影響事態」。
しかし、これらの事態と、国民保護法との関係は、十分に整理されていない。
そして、「台湾に一番近い島」では、どうやって住民を避難させればいいのか、その計画づくりも、道半ばだった。
台湾をめぐって、せめぎあう米中。
そのはざまに置かれた日本の、いまの現実だ。
“勝者のいない戦争”を起こさないために
2日間にわたって行われた“台湾有事”のシミュレーションを終え、参加者たちが感想を述べ合った。
「事態認定の難しさを痛感した」
「総理に判断してもらう事項を絞り込んでおかないと、本番では通用しない」
実務的な課題を挙げる声が続く中、外務省の元幹部、石井正文氏が語ったことばが、私たちの頭から離れない。
石井正文氏
元外務省国際法局長 石井正文氏
「シミュレーションをやって思ったのは、『こんなシナリオに入ったら、勝者は誰もいない』ということです。だからこそ、平時から、いかにこういうシナリオに入らないような対応をとるかが大切になる。
抑止を強めながら、同時に、中国に対して『ここまで入ったら大変なことになる』ということを、繰り返し話をする。そうした『平時の抑止』が、やはり一番大事なことではないか」
米中・2つの超大国が覇権争いにしのぎを削る、軍事のリアル。
もし、衝突が現実のものになれば、多くの国を巻き込み、地球規模での甚大な被害につながりかねない。
「勝者は誰もいない」という石井氏のことばは、今回のシミュレーションを通し、衝突そのものを絶対に避けなければならないと痛感したからこそ、出たのだろう。
米中の対立は、いったい日本に、何をもたらすのか。
衝突を避けるために、日本が果たすべき役割とは何なのか。
シミュレーションを現実のものとしないための、不断の努力が求められている
。社会部記者
西牟田 慧
2011年入局
4年前から防衛・安全保障を専門的に取材
社会部記者
南井 遼太郎
2011年入局
おととしから防衛省・自衛隊の取材を担当
沖縄局ディレクター
落合 洋介
2018年入局
初任地の沖縄で
米軍基地や自衛隊の動きを継続取材
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220119/k10013434801000.html
中国に対しては、『『ここまで入ったら大変なことになる』ということを、繰り返し話をする。そうした『平時の抑止』が、やはり一番大事なことではないか」』と結論付けているように、「平時の抑止」が一番大事なのである。
何かにつけて中国には、確実かつ実質的な物言い・警告が必要なのである。
そのためには何らかの武力による裏付けが必要となる。もしも中国がそんなことを言ったり、したりしたら、「それ相応の怪我をするぞ」と思わせるものを日本としては用意しておく必要がある、と言うことだ。
(続く)
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