世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

番外編・プリウス急加速問題(44)

2010-06-02 11:27:46 | Weblog

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石油カルテルからの支配を脱せるか?

 かつて内燃機関の自動車市場が世界的に加速拡大していた頃、「国際石油カルテル」と言われるものが存在した。
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世界第3位の天然ガス埋蔵量を誇るロシアのプーチン大統領(当時)は2007年、OPECのようなカルテルを形成したいとの発言をして国際社会から批判を浴びた〔AFPBB News〕

 世界の石油メジャーが、主な石油資源の共同保有から生産、販売、輸送までの手段を支配し、生産量、価格などをコントロールする実質上のカルテルで、1930 年前後に始まり50年頃に最盛期を迎え、その後74 年にOPEC が原油価格を決定するようなるまで続いた。

 その後も原油の確認埋蔵量の76%のシェアを持つOPEC加盟国による価格・供給量コントロールが続き、産油国には大きな利潤がもたらされた。石油産油国の国営石油産業では営業利益率40~50%、さらに石油メジャーも開発部門を中心に高い利益を上げ続けている。

 一方、自動車産業は、世界の需要に応えるべく、絶え間ない技術開発や新製品の開発、さらに日々改善やコスト削減努力を続け、成長を遂げてきた。それでも堅調な成長期でさえ、売上高営業利益率は10%程度、需要が落ちると一気に赤字になるという状況である。

 自動車の普及に貢献すればするほど、利潤は産油国にもたらされるといった構造である。内燃機関中心のこのような構造は、環境問題の本格化により今立ち上がろうとしているハイブリッド車やEVの普及によって、ようやく依存度軽減の可能性を模索できそうな気配が見えてきた。

バッテリーカルテルが起きる可能性を指摘する声も

 ところが、改めてハイブリッド車やEVに目を移してみると、今後、先進国の大きな市場でのハイブリッド車やEV化の普及加速に伴い、そのエネルギー供給のキーを握るバッテリーに関して、原油依存同様のバッテリー依存という状況が起ころうとしている。

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電気自動車用の充電プラグ。ドイツのエネルギー大手RWEは今年4月、世界の大手自動車メーカーなどがプラグの規格統一に合意したと発表した〔AFPBB News〕

 実際には、この場合エネルギー源となるのは電気であり、電気にとってのバッテリーは、ガソリンにとっての燃料タンクに過ぎないという見方もあるが、未来のクルマにとってのバッテリーの重要性はそのレベルをはるかに超えている。

 また、ガソリンは使用期間を通じて必要なのに対して、バッテリーは新車に搭載されるだけで供給量が限定的との考え方もある。

 しかし、プロジェクト・ベタープレイスのような、クルマの使用期間のエネルギー供給源としてのバッテリー提供ビジネスなどが普及するようなことになれば、ガソリンスタンドでガソリンが供給されるように、バッテリースタンドでバッテリーが供給される姿もあり得なくはない。

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日本とアジアの独占に危機感募らせる欧米諸国

 特に欧米から見ると、さらに危機感は大きい。

 リチウムイオン電池がクルマに搭載される量は現状、極めて限定的ではあるものの、その市場シェアを見ると、明らかに地域的に偏在しているのだ。携帯電話やパソコンに使用されるリチウムイオン電池全体における日本企業の市場シェアは65%。

 これに第2位の中国(香港を含めシェア20%)と韓国(シェア8%)と台湾(シェア1%)を含めると、アジア勢のシェアは97%に達する。欧米からはアジア勢によりほぼ独占されているように見える。

 この状態で自動車用も普及し、もしアジア勢が結束を強めるような構造が作られれば、まさに、アジア勢による「バッテリー・カルテル」の脅威が現実のものとなる。欧米から見ると、内燃機関のウェイト低下により、ようやく産油国支配が軽減されると思った矢先に、気づいてみると次世代自動車の世界ではアジア勢によるバッテリー掌握の脅威にさらされる、という状況への危機感が感じられる。

欧米で相次ぎ発足した国家プロジェクト

 欧米では、こうした危機感を背景に、産業・政府・学界挙げて、日本へのキャッチアップと世界での主導権の掌握を図ろうとしている。電池のバリューチェーンにおける前段階(化学素材~セル)では3年程度、その後工程(電池パック~制御システム)では1~3年でのキャッチアップを目指していると見られている。

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日産自動車とNECは2008年、共同でオートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)を設立、2009年までに自動車用リチウムイオン電池の大量生産を開始すると発表した〔AFPBB News〕

 ドイツ政府は、ドイツを電気自動車の中心市場とすることを目指し、2020年までに100万台の電気自動車を実用化する目標を掲げている。「第2次景気対策」でも総額5億ユーロが計上されている。

 2009年3月には、連邦議会予算委員会が次世代リチウムイオン電池の開発計画に総額5億ユーロの予算を承認した。同計画は、高性能、安価、安全な電気自動車用リチウムイオン電池の開発を目的とし、連邦教育研究省(BMBF)が6000万ユーロ、産業界が合計約3億6000万ユーロをそれぞれ負担する。

 さらに、2009年4月には、ドイツ連邦環境省(BMU)が、プラグインハイブリッド車とEVの駆動装置の開発、バッテリーのリサイクルの研究開発等に関し、1億ユーロの補助を発表している。

 2008年12月に戦略提携を発表したダイムラーとエボニックは、高性能リチウムイオン電池市場の規模は向こう10年以内に100億ユーロを超えると見通しており、電池の素材市場だけで40億ユーロ以上に達すると見ており、このような政府補助を積極的に活用する考えだ。

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米国ではオバマ大統領が24億ドルの拠出決める

 また、米国では、オバマ米大統領が、2009年3月、家庭用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車やこれに使用する先進電池の技術開発のため24億ドル(約 2300億円)の資金が用意されていると語った。数万人の雇用創出と、外国産原油への依存軽減効果も想定している。

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今年4月、デトロイトで開催されたSAE(米自動車技術者協会)主催の見本市で、GMは「ハマー」ベースのハイブリッド車を公開した〔AFPBB News〕

 米エネルギー省自動車技術局(DOE-OVT)は、自動車技術プログラム(Vehicle Technology Program=VT)を通じて、ハイブリッド車やEVや電池を始めとする次世代技術開発をサポートする。

筆者注、DOE-OVT:The U.S. Department of Energy-The Office of Vehicle Technologies

 DOE-OVT の下では、様々な自動車技術プログラムが同時進行中で、電池関係ではUSABC支援プログラムで電池システムの技術開発、応用技術開発(Applied Technology Development=ATD)プログラムや応用電池研究(Applied Battery Research=ABR)プログラムでセルレベルでの研究開発、先進輸送技術用バッテリーー(Batteries for Advanced Transportation Technologies=BATT)プログラムで材料レベルでの基礎研究を行っている。 

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14年前に創業した中国のBYDは、自動車用バッテリーで成功を収め2008年には世界で初めてプラグインハイブリッド車の大量販売を始めた〔AFPBB News〕

 さらに欧米以外でも、中国では携帯電話用リチウムイオン電池で世界シェアトップのBYDを中心に、政府の支援により、研究開発が加速している。

 中国政府はエネルギー不足と環境汚染対策にもなるとし、ハイブリッド車などのエコカーを対象に計200億元(約2800億円)の補助金を準備していると言われている。

 BYDオートの本拠地深セン市をはじめ、各地方政府からメーカーへの開発補助金もあり、また、これに伴って加速度的に増加する電力需要に対しても対策にもなるとし、原子力発電の積極的な開発・設置で対応しようとしている。
戦略シナリオと実行力が求められる日本

 一方、日本はハイブリッド車では先行し自動車用高性能二次電池(充放電可能な電池)ではニッケル水素電池の分野で圧倒的なポジションを築いた。さらに、まだ自動車用での本格搭載以前の段階ではあるもののリチウムイオン電池でも大きなシェアを維持している。

 今後、是が非でもそのポジションを維持しつつ環境技術普及のリーダーとして貢献度を高め、世界市場拡大の中で付加価値を維持していく必要がある。

 半導体や太陽電池では、日本が先行した後、他国に国家を挙げた強力な追随を許し追い越されてしまう状況もあったが、ハイブリッド車やEV用電池においてリーダーとしての地位を確保するためには、どのような方向性があるだろうか。

 国内市場を中心にいち早く普及させて経験やノウハウの蓄積と規模の経済性獲得により競争力の飛躍的向上を狙うのか。それとも、海外メーカーも含めて幅広い搭載車種展開でグローバル市場を対象とした圧倒的ポジションを再度海外新興バッテリーメーカーから奪還していくか。あるいは、海外で加速するハイブリッド車やEV用電池の開発を後方支援する格好で付加価値の高い要素技術を核に世界の電池技術の進化と市場拡大をリードして行くか。

戦略シナリオの想定と実行力が問われる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/993
(続く)
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