おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

根拠のない信用

2022-02-02 11:19:46 | 日記

 熊本の天然アサリが、実は3パーセントに過ぎず、あとの97パーセントは韓国産だったり中国産だったりしたニュースに、「そういうことは大いにあるだろうな」としか思えなかった。今さら、「国産じゃなかったの」とビックリしているほうがどうかしている。

 少し前に、中国のアサリから毒が検出され、輸入禁止になったことがある。それでも日本のスーパーでアサリが品薄になることはなかった。なぜなら、中国のアサリを北朝鮮や韓国の海岸で撒き、数日置いてから再び収穫して日本に輸出していたからだ。

 まったく外国はアテにならないなんて思っていたら大間違いで、日本だって同じことをしている。北朝鮮から来たアサリを、日本の海岸に一旦撒いてから収穫すれば、それは国産だからである。僕が福島に来る前に住んでいた大分県の宇佐市は、周防灘という遠浅の海岸に面している。かつては日本一のアサリの漁獲量を誇っていたが、今では農地の土壌改良により、海岸は泥で埋めつくされ、天然のアサリはほぼ全滅した。漁師さんたちは仕方がないので、海岸の一部に稚貝を撒き、それを育てて収穫しているが、時々この稚貝を狙う連中がいて、ごっそり盗んだ後は、別の海岸で育てるのである。

 国産の表記はアサリに限ったことではない。牛肉はアメリカから輸入した牛でも、日本で数ヶ月育てればブランド牛となる。松坂牛や神戸牛だって、日本で生まれたとは限らない。

 魚の産地に至っては、1匹丸のままスーパーで売っていれば、水揚げされた場所を表記しなければならない。カツオが丸のまま売っていれば、「高知産」と書いてあれば「高知産」だ。が、加工品となると加工した場所の表記で良くなる。つまり鰹のタタキとしてスーパーに並べば、アフリカ産だって高知で加工しさえすれば「高知の鰹のタタキ」となる。

 ひどいのは刺身の場合だ。単品の刺身の場合は、実際に水揚げされた場所の表記になるが、刺身の盛り合わせの場合は、あくまでも加工品ということで、加工した地名の表記になる。「富山の刺身の盛り合わせ」と表記があっても、それぞれの刺身や貝は富山で採れる必要はない。外国からいくら輸入してもいいのである。

 熊本の漁協関係者が、「アサリの産地偽装は数十年前からやっていた。食べるためには仕方がないことだった」と発言している。食べるために犯罪を犯してもいいのなら、家族を養うためなら泥棒だって許される理屈である。食べるために仕方ないことだと考えながら、消費者の健康は無視してしまうのは、どこの国でも似たり寄ったりである。

 有名企業のやることだから、役所のお墨付きだから、などというのは、よくよく考えれば根拠のない信用である。アサリを買っていた消費者が、「これからは自分で潮干狩りでも行かなければ信用できない」とインタビューに答えていたが、潮干狩りで収穫するアサリもまた、潮干狩り用に撒かれたアサリだということは忘れないほうがいい。

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