天気が良くなるという天気予報を信じて、安達太良山の表登山道に出かけることにした。ここは秋に行き、リスと遭遇した場所だ。運が良ければまた遭えるかもしれない。
この登山道はほかの登山道に比べると、頂上近くまで雑木林の中をゆるかやかに登り続ける。道幅もあり危険な場所もないので、山歩きに慣れていないドリでも大丈夫だ。そこで今回はドリとタミちゃんも一緒。どうせ雪で頂上までは歩けないだろうから、目標は仙女平まで。雪がなければ片道約2時間の道のり。そこでお弁当を広げる予定だ。

登山口ではうっすらと白くなっていた登山道は、すぐに真っ白な雪景色へと変化した。雪がしまっているので思ったよりは歩きやすい。ザクザクとトレッキングシューズが雪を捉えてくれるので、アイゼンもいらない。

雑木林の中は風もなく、歩き始めるとすぐに汗びっしょりになる。トトもドリも暑くなると雪に顔を突っ込み、火照った体を冷やしている。2匹とも鼻の頭が白くなる。

表登山道に来ているのは、僕らの前にひとりだけ。たったひとつの足跡が山頂へむかって伸びている。その足跡も、途中から雪の深さのために雪道を歩くためのワカンを装着したと見えて、大きなカンジキのような形に姿を変える。
野鳥の声は聞こえるが、なかなか姿を見つけることができない。木々は風で吹き付けられた雪で、半分だけが真っ白だ。幾何学模様の木肌持つ、まるでカーテンの生地のようなテキスタイルデザインの木を見つけ、何の木だろうと頭をひねる。

それにしても雪はますます深くなる。凍っていた雪の表面もいつしかさらさらのパウダー状になり、一歩一歩が膝まで雪に埋もれながらの行軍になる。歩いても歩いても前には進まない。目的の仙女平どころか、半分の水飲み場までも行き着けそうにない。
と、上から下りて来る人がいる。「どこまで歩きました?」と尋ねると、「雪が深くて仙女平までしか行けなかった」という返事。ワカンを装着してもそこまでしか行けないとなれば、僕らはとてもじゃないが、今日はそこまで行くのは無理だ。「水飲み場まではあとどのくらいですかね」と聞くと、「あと500メートルか1キロくらいかな」と言う。雪のない平地であれば500メートルなんて目と鼻の先だ。が、雪の深い山での500メートルは、気が遠くなるほどの距離に感じる。

腕時計を見ると、時間は正午に近い。これ以上は先へは進めそうにないので、とりあえず正午まで頑張って歩き、そこでお昼を食べたら下山することにする。
雪の上にレジャーシートを広げ、大きなおにぎりにかぶりついていると、犬たちが「オレにもオレにも」とワサワサとレジャーシートの上で暴れるので、そそくさとお昼を済ますと、雪の中を転がるようにして雪まみれになって下山した。ああ、楽しかった。