台風が来ているようだが、さほど荒れてはいない。きっと九州北部からはそれたのだろう。
とはいえ、朝から雨。空には分厚い灰色の雲が広がり、どんよりとした一日になっている。こういうときは外出しても面白くないので、大概読書をして過ごすということになるが、今手元にあるのは、ノーベル物理学賞を取った湯川秀樹さんの自伝「旅人」と、詩人の谷川俊太郎さんのエッセイ「ひとり暮らし」。近頃は小説などの創作物を読むよりも、エッセイや紀行文を読むほうがすんなり頭に入る。
谷川さんの本の中に「昼寝」というエッセイがある。「昼寝」とはなんと快い言葉だろう、で始まり、同じ昼寝でも、「午睡」と書くと優雅で品があると言う。「昼寝」は釣り船でもできるが、「午睡」は豪華客船のデッキが似合う。青二才や親のすねかじりなどは「昼寝」でたくさん。「午睡」というからには、還暦が近いか白髪の二三本はあって欲しい。幼稚園児がするような集団ごろ寝は、「おひるね」であって「昼寝」ではない。
というような文章を、半分ニヤニヤしながら読んでいる。半分だけなのは、早くもまぶたが重くなっているからだ。
若い頃から白髪が多く、早々と染め始めたが、半年ほどまえから染めるのを止めた。今はブラックジャックのように、銀髪と金髪が半々になっている。年末には、藤本義一か司馬遼太郎か、はたまたアンディ・ウォホールのような見事な銀髪になる予定である。そうしたら、僕の昼寝もきっと「午睡」に昇格するだろう。