一日動きまわっていると、夕飯を食うとどっと疲れが出て眠くなる。おまけにテレビ番組も面白いと思うものが少ないので、いつの間にやらコックリコックリやっている。家からDVDのソフトも持ってきていたが、全部観てしまった。小さな活字の本を読むのも睡眠薬にしかならない。
こういうときは、レンタルビデオ屋で映画を借りてくるに限る。けれども借りてきたものが面白いとも限らず、昔観たものが中心になってくる。先週は「パピオン」と「バグダッドカフェ」を観た。「パピオン」は子供の頃に観たものだったので、記憶がいろんな映画とごちゃ混ぜになっていた。今週は新しい映画を観たかったのでスピルバーグの「スーパー8」、動物のノンフィクション「ライフ」、そしてまたまた古い映画「卒業」を借りた。
「スーパー8」は子供たちが主演の冒険活劇みたいなものを考えていたのだが、スピルバーグにしては中身の薄い映画で、監督も少し老いぼれたかなと感じてしまった。「ライフ」はまだ出だしを観ただけだが、さすがに映像はきれいで、自然界のシビアな環境と、信じられないほどの美しい映像に、よほど頭がはっきりしているときに観たいと、後回しにしている。
「卒業」は言わずとしれたダスティン・ホフマン主演の映画である。もう何度も見返した映画だが、若い頃に観たときとは印象はずいぶん変わって来た。初めて観たときは、ドラマチックな恋愛映画だと思っていたが、あるときから恋愛はあまり扱っていないのに気付いた。ミセスロビンソンとの不倫にしても、恋人のエレーンとの関係しても、映画の中で描かれるのはほんのわずかである。恋愛らしいものは、どこを探してもないのだ。描かれるのは、将来に対して漠然とした不安を抱える若者の、エゴと倦怠である。
後のドラマに多大な影響を与えたと言われる花嫁奪取のラストシーンも、ただの恋愛映画ではないと感じさせるのは、ふたりが手と手を取り合って教会から逃げ出し、バスに乗り込んだ瞬間、「このふたりはすぐに別れるだろうな」としか見えないからである。これは観客ばかりが感じることではない。当の本人たちからして、そんな顔をしてバスに乗っている。今見ても新鮮なのは、このドラマがハッピーエンドを迎えることなく、やはり人生は難しいなあと思わせるところなのである。