通勤や買い物など、目的があって移動する以外に、ブラブラとただ歩くために歩いている人というのはどれくらいいるだろう。犬の散歩も目的があるとは言えるものの、犬の運動だけに集中していれば、せっせと早足でウォーキングする人と変わりはない。
ブラブラ歩くというのは、途中で何度も立ち止まり、周囲を見渡し、足元を眺め、時にはしゃがみ込んで道端の草花を観察してこそ、本当のブラブラ歩きだ。それを実行しようとすれば、キョロキョロと不審者のように周りを見たり、下ばかり向いて歩くことになる。

道路に熟した梅の実が転がっている。ここには梅の木があるなと気づけば、次には顔を上げて鈴なりに実をつけた梅の木を眺めることになる。

足元の雑草もよく見ればかわいい花が咲いている。これはユウゲショウ。夕化粧なんて芸者さんみたいな趣があるが、実際には朝からちゃんと咲いている。

別名クローバーの名前を持つシロツメクサも、花の時期は終わりに近づいたが、小指の先くらいの小さな葉っぱをたくさんつけて、道端で繁殖している。
これに似ているのが、カタバミ。

葉っぱの一枚一枚がハート形をしているのが面白い。大きさはシロツメクサよりはるかに小さい。以前は雑草のひとつとして気にも止めていなかったが、水色の羽を持つチョウチョのヤマトシジミが、カタバミにしか卵を産み付けず、幼虫にとってカタバミが世界のすべてだということを知ると、つい注目してしまうのである。庭に生えていても、無闇に除去できなくなっている。
「どくとるマンボウ昆虫記」を読んでいたら、「詩人の蝶」という話の中に、ウスバシロチョウのことが書いてあった。ヤマトシジミがカタバミを唯一の生活圏にしているように、ウスバシロチョウは卵をムラサキケマンに産み付け、この植物を食草としているとある。ウスバシロチョウの生活史は、すなわちムラサキケマンの生育のリズムと完全に一致しているのである。

で、これがゴールデンウイークの頃に撮影したムラサキケマン。この花は、今年の春散歩中に気になって、名前を覚えたばかりだ。そう言えば、名前を調べた時にウスバシロチョウの幼虫が食べるみたいなことが書いてあったような気がする。
何はともあれ、下を向いて歩くだけで、昨日までは僕の中には存在しなかった世界が、突如として目の前に開けてくるのは面白いことだ。


































