この前、山に行こうと誘ったら、とんでもなく悪天候になり急遽取りやめた。そうこうしてたら知人から「明日休みが取れたし、天気も良さそうだから出かける?」と連絡が来たので、すかさず「じゃあ、一目山に行こう」と誘った。
午前8時に迎えに来てもらって、そのまま運転してもらって九重山系に向かう。まるっきり山登りなんて考えたこともないという初心者なので、車を下りてすぐに登れる一目山がとりあえず目的地だ。なにしろ駐車場の前にこんもりと盛り上がる一目山は、登りは急斜面だが30分もあれば登れ、頂上では阿蘇山、九重山が一望でき、眼の前には九重スキー場、八丁原地熱発電所を見ることができる。
で、いざ出発。初めて来たときの一目山は、ススキが一面銀色に輝き、まるで積もった雪に光が反射しているようだった。今回はちょっとだけ時期が遅かったようで、ススキはあるものの、ススキの穂が寂しくなり、茶色が目立っていた。
それでもススキに覆われた山は珍しく、パチパチと撮影会となる。すぐに頂上を目指すと、普段ランニングで鍛えているつもりの僕でも結構足に来る。知人は運動不足で太ももが動かなくなったと悲鳴を上げる。それでも短時間で登頂を果たすと、 360度の絶景に疲れも吹き飛ぶ。風は冷たいものの、汗だくの体には気持ちよく、持参した冷たいお茶をグビグビ飲む。
あっという間に目的を果たしたので、次はもう少し足を伸ばしミソコブシ山まで歩いてみることにした。ほとんど高低差がない登山道なので、山歩きといったところか。尾根伝いに歩くと、両側には草原が広がり、歩いて来た者にしか見ることができない光景が広がる。
ミソコブシ山はもう何度来ただろう。ひとりだったら更に足を伸ばし、目の前に鎮座する涌蓋山まで行くのだが、そのルートだと夜明けとともにスタートしなければ日暮れまでに下山できない。もっとも今回は、最初からここが最終目的地なのである。
上から下りてきたカップルとすれ違ったので、「涌蓋山までですか」と尋ねると、本格的な登山ルックに身を包んだふたりは、「ミソコブシ山までです」と答える。そこまでなら普段着でも十分なので、ちょっと照れくさそうだ。
ミソコブシ山でひと息つくと、体が冷える前に戻ることにした。山を下りると女性ふたり組が前から登ってきた。まっさらな新品の登山ルックのふたりだ。時間的に見て、ミソコブシ山が目的地に違いない。と、向こうから「こんな泥道がまだまだ続くんですか」と半泣きで聞いてきた。「いえ、もうあとは歩きやすいですよ」と答えたが、今日のルートはまるっきしマシなほうだ。少しぬかるんだところはあるものの、傾斜はないし、水たまりもない。注意すれば滑ることは少ないのだが、おそらくふたりの期待している登山道は、しっかりと舗装しているか、木道になっていることだったのだろう。そういう山を期待するのなら、高尾山みたいな都会にある山に登るしかないのである。
とうわけで、お昼すぎには車まで戻ったので、途中で昼飯にして帰ることにする。
帰り道、最近テレビでも取り上げることが増えてきた「宇佐のマチュピチュ」を通ったので、途中下車した。
ただ尖った山と小さな集落がある風景なのだが、誰ともなくマチュピチュに似ていると言い出した。そのうち村おこしとして、展望台までこしらえ、盛り上げようと頑張っている。ただ、「どこがマチュピチュなの」と突っ込まれそうなのを予想して、展望台には本物のマチュピチュの写真もパネルにしていた。
親切心が旺盛なのか、立ち寄った人のために、記念写真を撮るための椅子まで設置してあった。が、さすがに座ろうとは思わなかった。