原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

NHK番組 「美の壺」が醸し出す粋な美学

2017年12月23日 | 芸術
 私は、NHK BSプレミアムにて毎週金曜日夜7時半より放映されている「美の壺」のファンである。

 金曜日の夜は何をさておいても「美の壺」にチャンネルを合わせ、週末の一時、独特の美の世界に酔いしれるのが長年の習慣となっている。

 冒頭に流れるあのサキソフォンのジャジーなテーマミュージックが素晴らしい。
 落ち着いた雰囲気のナレーションも的を射ている。
 草刈正雄氏のすっとぼけムードの絶妙な演技もいい。
 「妻がね……」と草刈氏が発語するが、その妻が一切画面に出ない演出も私のお気に入りだ。(それが出たら、おそらく番組が俗っぽく厭味になるだろうと想像する。)


 昨夜も日本フィギュアスケート選手権2017「男子ショート」を一旦中断して、BSプレミアムにチャンネルを切り替えた。

 ただし、昨夜の「美の壺」が残念だったのは、テーマが「雑煮」だったことだ。 季節柄、そのテーマが設定される事には必然性があろうが、何分“料理嫌い”な私。  
 「なんだ、料理か……」とかなり意気消沈させられた。
 しかも、その料理を作っているシーンに登場するのは女性ばかりで、これまたNHKも感覚が古い。
 ついでに言うと、“いくら”が大好物の私だが、“いくら”は海苔巻き軍艦寿司で食するのが最高に美味い!ことも絶対に譲れない。  昨夜の「雑煮」場面でその“いくら”をトッピングに使用している雑煮が紹介されたのだが、あれは私に言わせてもらうと至って邪道だ。 “いくら”が汁に浸かると中途半端に湯だってしまい変色する。 あれは美的感覚観点からもいただけない。
 
 参考だが、そう言いつつも、我が家では毎年新春には私が雑煮を作って家族に振る舞っている。
 我が家の雑煮は過去に私が郷里にて食したものを思い出しつつ自分なりにアレンジしているのだが、毎年家族皆(とは言っても私以外2名しかいない)が“美味しい”と言ってくれる。(決して、お世辞を言えるような面々ではなく至って天然質の我が家族だが。
 一昨年までは実母が作りたての丸餅を郷里から宅配してくれていたが、高齢者施設入居によりそれが終焉した。 やむなく市販の四角餅を購入したが、特段まずくもない。
 我が制作「雑煮」は何よりもシンプルが取り柄だ。
 昨日見た「美の壺」の雑煮群はすべて“奇をてらっている”と表現すればよいのだろうか、具沢山だ。 
 もちろん「雑煮」の語源とはまさに雑煮(ざつに)であり、色々な食材をまぜこぜに入れ混んだ歴史があるのだろうが。


 昨日の「美の壺」テーマだった「雑煮」の話題が長引いたが。
 以下に、ウィキペディアより、当該「美の壺」に関する情報の一部を紹介しよう。

 『鑑賞マニュアル 美の壺』(かんしょうマニュアル びのつぼ)は、NHKが2006年4月7日に放送を開始した教養番組(美術評論番組)である。
 毎回一つのテーマを採り上げて古伊万里や盆栽、アールヌーボーなど人の暮らしを彩ってきたアイテムの選び方や鑑賞法などをいくつかの「ツボ」(押さえどころ)に絞ってわかりやすく解説する。 
 開始当初は旧家の当主役に扮する谷啓が案内役を務め、NHKアナウンサーがナレーション(谷家に古くから伝わる「壺」の中の声の主との設定)を担当した。 基本的には谷の家を舞台に展開されるが、時折スペシャル版で谷が旅行に出ることもある。 谷の住む家は重厚な造りの古民家で、床の間には紫舟の書いた「壺中天」という掛け軸が掛かっている。 設定では谷の父親が異常な趣味人であったということになっていて、蔵からは毎回毎回、高価な名品が登場する。 加えて谷本人も収集癖があり、谷の妻が万華鏡を集めていたという設定になっているので、家族ぐるみで何かしら集めている。 谷の妻はちょくちょく話題に上るが、画面には登場しない。 代わりに遠方に住む親族や畳職人、泥棒、和服美人などのゲストが谷家に現れる。 谷家には他に、ネズミ取りのうまい「ハナ」という飼い猫が存在する設定である。
 2009年4月3日放送のFile 124「木の椅子」の回からキャストを一新、洋館に住む草刈正雄(谷の甥との設定)が谷家の壺を譲り受けるという設定で新たに案内役を務める。
 2005年「英国家具」の回から放送波が教育テレビからBSプレミアムに変更になり、草刈はそのままだがナレーションがNHKアナウンサーに変更された。
 BGMはすべてブルーノートを中心としたジャズで統一されており、曲目リストが公式サイトの各放送回の紹介ページに掲載されているほか、BGMで使用された楽曲を集めたコンピレーション・アルバムも発売された。
 (以上、「美の壺」に関するウィキペディア情報の一部を紹介した。)


 このウィキペディア情報を見て思い出した。
 私は、元クレイジーキャッツメンバーのトロンボーン奏者でもあられた谷啓氏が案内人だった時代から、確かにこの「美の壺」のファンだった。 
 顔面神経痛を患われているらしき谷啓氏だったが、その頃の谷氏は独特の魅力を醸し出されていて、「美の壺」でもその芸術的キャラを十分に発揮されていた記憶がある。 
 そうそう。 この時代からこの番組は案内役に家族がいる設定であるのに、決して画面に家族を登場させないスタイルを保っていた。 これぞ、芸術的番組にしてその“粋(すい)”を極めることが可能となった原点と私は評価する。


 国民からの受信料強制徴収により成り立っているNHKには、安易に民放の低俗番組制作を模倣することなく、今後共「美の壺」のような良質な番組制作に期待したいものだ。