原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

生命体を育む喜びと住民の苦悩

2017年04月25日 | 時事論評
 (写真は、私の自宅がある集合住宅南側道路を挟んで前面に今冬設営された「区民農園」。)


 我が家の南側に程近い土地が都主要道路計画地に指定されている事は、本エッセイ集バックナンバーにも記した事がある。

 当該都道路計画は、十数年前に我が家が現在の集合住宅物件に買替購入したずっと以前より存在していたようだ。 そのため物件売買契約に当たり重要事項説明書にもその旨が明記されていたし、販売営業担当者も繰り返しそれを伝えてくれた上で我が家は契約締結に至っている。

 ところが何処の道路計画も同様なのだろうが、この計画がいつまでも“宙ぶらりん状態”でほとんど進展しないのだ。
 おそらく道路計画反対派市民が多い実情なのだろう。 我が視察及び推測に寄れば、道路計画に賛同する該当物件より取り崩しを着手しているようだ。 計画地の所々に既に建物が撤去され空き地になっている箇所がある一方で、反対派住民はこの地にそのまま住み続けている様子だ。
 まったくもって一旦自己所有物件が道路計画などに運悪く引っかかったものならば、賛同派、反対派にかかわらず長年に渡り理不尽にも不自由な扱いを強いられるものだ。


 写真の「区民農園」の前身は、都心にして珍しく「農地」だった。 土地所有農家が昨年まで野菜中心の農作物を細々と育てていた様子だ。
 これまた我が憶測だが、都道路計画に一部がかかっているこの土地の転売を都から禁止されていたのか、あるいは片隅が道路計画に引っかかっている土地など誰も購入しなかったのであろう。

 事態が急変したのは、昨年末の事だ。
 私が住む自治体である都内23某区より、「区民農園のオーナー募集」のチラシが自宅ポストに投函された。  それを見ると、まさに我が家の目の前の農地を区民農園にするとの事のようだ。
 要するに、やっとこの地を区が農家から買い取ったのであろう。 そしておそらく道路計画が実行に移される事が決定した暁には区が自らの施設でも建設するか、あるいは転売しようとの魂胆と憶測する。


 さて、このチラシをみた我が亭主が目を輝かせながら、「僕がその一角のオーナーになる!!」と言い始めるではないか!
 これは大変!  “根がお気軽かつ新しもの好きミーハー三日坊主”で名高い我が亭主が、その“生業”を全う出来るすべもない。
 私応えて、「ちょっと勘弁してよ。 やるなら一人でやって。途中でギブアップして私にバトンタッチと言われても引き継がないよ!!」と捨て台詞を吐くしかない。

 それでも亭主未練タラタラ状態の中、幸いにもすぐさま「区民農園募集」は応募総数に達したようだ。


 さてさて年が明けた今冬、「区民農園」は開園した。
 まだ真冬の厳寒の下、少しずつ区民農園のオーナー達がやって来る。 この様子を日々ベランダから興味深く見学している私だが…。

 驚かされたのは、農作業の大変さだ!  区民農園オーナー皆様の働きぶりが凄いのだ!!
 狭い区画農園とは言えども、まず皆さん土を耕すところから取り掛かる。 凄い人は、地下1,5m程まで掘り下げている。 (えっ? こんなに深いところまで掘り下げて、まさか死体を埋めるのでは…)  なる私の心配はご無用のようだ。

 どうやら皆さん、農園経験者であろうと推し量るのだが、とにかくその手際の良さは素人には真似が出来ないと私は結論付けた。
 我が軟弱亭主にもその姿を一見させるべきと考えた私は、早速その「農作業」の様子をベランダから亭主にも見学させたのだが…  案の上「こりゃ、無理だ。」とすぐに納得してくれた事に安堵した。


 土地を耕す時期から3,4か月の月日が流れ……

 春の訪れと共に、当該「区民農園」の農作物のそれぞれが成長を遂げている。
 ある区画は色とりどりの綺麗な花が咲き、また別の区画は野菜が青々と育っている。 冬の時期から本格的にハウスを設営した温室栽培の農園では如何なる食材が実っているのだろうか。

 特に春満開になったこの頃は家族総出で「区民農園」に来園する一家も多く、近頃の週末など狭い農園が人出ラッシュ状態だ。 おそらく「区民農園」で育む農産物と共に、ご一家皆が存分に“にわか農場主”として成長されている事であろう。

 その一方で一体いつ、この「都民農園」は都道路計画の実行と共に消え去る運命にあるのだろうか? 
 都政としては道路計画など今まで通り一番後回し政策として放置し、実行に移される日の見通しがつかないものと推測する。

 そんな地域住民の苦闘を知ってか知らずか、いつまで存続するのか見通しがつかない「区民農園」を楽しんでいる区民の姿をベランダから日々垣間見る私だが……。
 今後の道路計画の行く末を懸念しつつ、もしかしたら遠い未来までも共に農園にて育ちゆく生命体の姿を楽しませて頂くはめと相成るのだろうか??