原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

試験問題漏洩とコネ採用、どっちが許し難い?

2015年09月12日 | 時事論評
 その答えとは、どっちも許し難いに決まっている。 


 ただ、“現役就活落ちこぼれ娘”を抱える親の身としては、現時点では後者の「コネ採用」の方が我が身に照らして許し難い。
 いえいえ、だからと言って決して泣いて暮らしてなんかいませんよ。 

 8月末時点での大学生就活内定率が7割との報道を見聞しているが、おそらくその後半月が経過した現在、もっと内定率が上昇している事であろう。
 それでも、私は(亭主も含めて)決して娘を責めたりはしない。 何故ならば、我が娘の“就活頑張り力”が相変わらず凄い故だ!
 落とされても落とされてもへこたれない。 次から次へと自力で就活先を見つけてきては、夜な夜な膨大な字数の応募用紙を書き上げ封書にて郵送している。 ダブルヘッダーで就活を2コマこなす日も多い。 「必ず昼ご飯をちゃんと食べるのよ!」と送り出す以外何の役にも立たない親だが、それでも、いつも元気に帰宅する。
 
 9月初旬には、大学の就職課へ相談に行ったようだ。 果たして未だ「内定」が取れていない学内学生が如何程かは不明なれど、一応大学側からも就職先の紹介を受けた様子である。 ただ娘の意思の程は固い。 自分の適性や希望と照らして少しでも“違和感”を抱く就職先には、たとえ大学からの紹介とは言えども、決して首を縦には振らない娘だ。
 これに対し、亭主はせっかくの大学からの紹介を利用したらどうかとアドバイスするのだが、私はあくまでも娘の方針に賛同したい。 下手に大学紹介に迎合して「内定」を取ったとて、“違和感”を抱いたまま就職してどうなる?? ここは娘の判断に任せよう、と亭主を指導している。
 そんな事より、「残り者には福がある!」と私は娘を前向きに応援している。 「来春4月の就職まで後半年もの余裕がある。7割以上の新卒者が既に内定を取ってくれているお陰で、現在就活競争率が低下している。今後こそが狙い目だ。きっと貴方に相応しい就職先があると私は信じている。」と日々娘に語る母の私だ。
 

 ところで、そんな“就活落ちこぼれ娘”が8月末頃、国家省庁下部に位置する団体法人(要するに“天下り団体”だが)の新卒採用試験を受けた。
 この試験の競争率たるや、物凄いものがあったとの娘の話である。 少人数採用枠に押し寄せた就活学生数は何千人規模に及んだとの事だ。

 それに先立ち、私は郷里の母と娘の就職に関して電話で会話をした。
 定年まで地方公務員を務めた母の言い分は、「国家省庁をはじめ国や地方自治体の息がかかっている団体は、必ずや“コネ採用”に頼っていたよ。 新人採用と言ったところで、毎年採用されてくる新人皆が現役職員の子供等ばかりだった。コネがなければまず役所には入れないと思っていた方がよい。 よほど筆記試験で高点数を取れない限り、不採用となる事を覚悟しておくべきだ。」
 実際その通りだったのだろう。 おそらく筆記試験で高得点が取れなかった娘に早々に「不合格」の通知が届いたということだ。

 ただ、どうなのだろう?
 確かに国家公務員上級試験の関門を通過して将来官僚を嘱望される程の人材ではない、たかが国家省庁「天下り団体」の現場で、如何なる優秀な人材が必要なのだろうか?? 
 誰でもよければ、どこの馬の骨とも知らぬ他人を採用するより、職員等のコネを利用する方がそのDNAに頼れる利点もあると判断しているとも捉えられるのかもしれない。
  
 と言いつつも、安易にコネ採用にばかり依存している団体とは、今後の発展もコネ者達の(失礼ながら)乏しきDNA力や更なる縁故力に依存してのはかなき生命力なのだろうね……


 ここで、話題を大幅に変えよう。
 
 今年(2015年度)の司法試験で、問題作成を担当する考査委員を務めていた明治大学法科大学院教授氏が、問題の一部を漏洩したとして、法務省は氏を告発した。
 同省によると、氏は2006年から司法試験考査委員を務めていた。 今年の司法試験では論文試験のうち憲法に関する問題の作成を担当。 同大学院を修了した教え子の20代女性に対し、担当した問題内容を事前に漏らした疑い。同省は氏を考査委員から解任した。
 女性については今後の受験を禁止し、今後5年間司法試験受験を禁止する行政処分を下した。
 (以上、朝日新聞9月8日夕刊一面記事より要約引用したもの。)

 その後のネット報道によれば、当該明治大学教授は既に懲戒免職の処分下にある様子だ。(以下にネット情報を引用紹介しよう。)
 司法試験問題の漏洩事件で明治大学は9月11日理事会を開き、法科大学院の青柳幸一教授を12日付で懲戒免職にすることを決めた。「大学の信用を傷つけ名誉を汚した」としている。
 法務省によると、青柳教授は今年5月の司法試験で憲法分野の問題作成などを担当。2~4月に研究室で自分が作った論文試験の問題を教え子の20代女性に示し、論じるべきポイントを繰り返し説明していた。
 明治大学は、「司法試験制度の根幹を揺るがしかねない事態であると受け止め、厳しい姿勢で臨んだ。継続して調査や再発防止に尽力する」とのコメントを出した。

 一旦、原左都子の私論に入ろう。
 この事件、もしかしたら明治大学の青柳教授とやらが一方的に一人の女子学生を気に入り、今回の事件を引き起こしたものとも捉えられるのが辛いところだ。
 相手の女子学生もそれに応じたからこそ、事件が勃発してしまったのだろうか??

 いやはや、如何なる角度で考察しても恐ろしく残念な事件としか言いようがない。
 青柳教授が諸悪の根源としても、女子大学院生にもその誘いに乗ってしまった罪を償う責任はあろう。 その罪が「将来5年に及ぶ司法試験受験停止」!

 これは、過去の我が身に照らしても“厳しい!”
 私の場合「司法試験」ではなく、大学院修士課程入学のために法学関連の筆記試験の鍛錬を繰り返した時期がある。
 司法試験同様、その課題のすべてが「筆記論文解答」を要求されていた。 自身で「設問」を設定して、その模範解答も自分自身で創り上げ、その回答を暗記する作業を大学院入試日までやり続けた。 
 ただそんな経験がある私として、もしも当日の課題である論文試験課題を承知していたとしても、その模範解答を創り上げる事自体が困難だったと推測する。
 それに比し、明治大学女子大学院生は試験委員も驚く程の理想解答をしていたのだと言う。 これぞ、青柳氏が「模範解答内容」まで綿密に教えたい程に女子大学院生を“溺愛”していた証拠ではなかろうか?

 いやはや、そこまで“溺愛”されてしまっては、その被害女性氏にとっては鬱陶しいだけでは済まず、今後の人生までも潰されたとの悲惨さであろう。


 冒頭に戻って、我が就活娘よ。
 貴女の未来は、未だ輝いているよ!
 まさか、どこかの誰かから貴女に惚れたから「就活を保障する」などと言われる訳はないだろうが、もしもそんな事態が発生したなら、すぐさまこの鬼母に告げなさい。
 私が即刻鬼退治に参上するからね!