原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

STAP事件、理研が初動で研究室封鎖出来たなら…

2015年03月21日 | 時事論評
 先だって3月17日の報道によると、STAP細胞論文問題で理化学研究所が論文の責任著者である小保方晴子・元研究員に対し、英科学誌ネイチャーへの論文投稿費用などの返還を求める方針を固めたことが判明した。 近く理事会で正式決定されるとのことだ。
 STAP細胞論文(昨年7月に撤回)では、理研調査委員会が小保方氏による4件の不正を認定。 小保方氏は同12月に退職したが、理研の懲戒委員会は今年2月「懲戒解雇相当」と判断した。
 理研の規定では、不正が認定された人には、使用した研究費の全部または一部を返還請求すると定める。小保方氏は退職したが、理研在籍中に不正があったため、規定に基づいて返還を求めることが可能と判断した。
 小保方氏は2010年夏から当時理研チームリーダーだった若山照彦氏(現・山梨大教授)と共同研究を始め、その後に若山研究室の客員研究員になった。13年3月からは研究ユニットリーダーなどとして理研に在籍した。理研は、小保方氏の不正認定はネイチャー論文の図表4件のみだったため、研究費全額を請求するのではなく、論文投稿費用など一部とする見通しだ。
 (以上、ネット報道より一部を引用。)


 この報道に先立ち朝日新聞3月12日付朝刊に、理研の一理事氏にインタビューした興味深い記事が掲載されていた。
 「初動で研究室封鎖すれば…」 と題する、理研川合真紀理事へのインタビュー内容を以下に要約して紹介しよう。
 理研川合真紀理事はインタビューに応えて、「(小保方晴子氏の)研究室を封鎖するなど大きなアクションをとれば、社会が受け取るメッセージは違っただろう」と振り返った。
 STAP研究不正をめぐって理研の対応は社会から批判を浴び続けた。 論文に多くの疑義が発覚する中、昨年3月には調査委は6項目中2項目のみを小保方氏の不正行為と認定しただけで調査を終了。 その後9月に再び調査委を立ち上げた。 これに関して川合氏曰く、「当時、マウスの起源ぐらいは分かるだろうが、正体がES細胞ではないかとの疑問には答えられないと判断した。 きちっと調べていれば…」
 一方、理研は調査とは別にSTAP細胞検証実験を進め、小保方氏をこれに参加させた。 川合氏曰く、「彼女はすごく実験がうまい『ゴットハンド』と言われていたので、その点も検証した方がよいと思い実験させた」 「それよりも、論文共著者の若山照彦氏の研究室で)客員研究員だった時になぜ“不正”に気付かなかったかとの悔しさはある」
 STAP論文は理研の大々的な広報で注目を集めたとの指摘に対して、川合氏は「あの論文がこんなにもてはやされたのは、今でも不思議な気持ちだ」 「世界の不正の中でどれくらいたちが悪いかと考えると、『どうなの?』と思うところもある。理研の対応を整理してみると、割とすっきり対応したいた気もする」と主張する。
 (以上朝日新聞記事より要約引用。)


 早速、原左都子の私論に入ろう。

 理研理事である川合氏の最後のインタビュー回答に関しての反論だが、その考え方は“天下の理研”理事にしては甘過ぎやしないか?
 こんなところで、世界中の歴代科学研究不正を比較対象に持ち出してどうする?! それらと比較した場合、STAP細胞事件は不正のたちがさほど悪くない??  理事の立場でそんな甘えた物言いを公表する事が許されると勘違いしているからこそ、理研が世論のバッシング対象となるのだ!

 そもそも何故“不正”満載のSTAP研究をネイチャーに掲載した上、各メディアを通じて若き女性研究員である小保方氏を前面に出して高らかに「STAP細胞発見!」と世にのたまった!?  あの昨年2月の会見は(国の政策に従い新たな組織改革を虎視眈々と狙う)理研が仕立て上げた演出だったことなど、当初より国民は承知しているよ。 だからこそ世論よりバッシングされ続けている事が分からないのか。

 この川合氏インタビューで興味深いのは、まさに“初動で研究室封鎖”に至れなかったのかとの言及である。
 STAP細胞の正体が(盗まれた)ES細胞であった事実を理研が早期に突き止めていさえすれば、小保方氏に科学者としての決定的な墓穴を掘らせる記者会見などさせる必要はなかったし、ES細胞の創始者である笹井氏を自殺に追い込まなくて済んだであろうに…。 さらには、そもそも何故若山氏が小保方氏を客員研究員として理研に迎え入れたのかに関して、もっと当初よりその詳細事情を突き止めていさえすればこんな不祥事を防げたはずだ。
 何故それらが実行不能だったのか。 これこそ(民間とは異質の)公的研究所の甘えた“閉鎖体質”に基づく不祥事と私は結論付ける。


 ところで上記理研理事 川合氏談話の中で、原左都子の目にとまった文言がある。
 それは、小保方氏が“実験がすごくうまい「ゴットハンド」の持ち主だった”との言及だ。

 へえ~~、そうなんだ。

 私自身が元々パラメディカルの分野でこの世に進出した事は何度も語っているが、私の専門医学分野とはまさに“実験上手”を期待される方面だったのである。
 ところが、「原左都子エッセイ集」2014年2月3日バックナンバー 「実験好きと理系頭脳は相関し得るか?」 にても公開している通り、私は子供の頃より徹底した“実験嫌い”である。 ただ単に数学が好きだった故に理系を目指しただけの話だ。
 そんな私は就職後も“実験嫌い”に悩まされ続けたとも言える。(嫌いと言えば過言だが“机上の空論”好きな私としては実験に時間を費やすよりも、脳内で“理屈をこねる”事に時間を使いたかったものだ。) その後ある程度の地位を民間企業内で築いた私が新たな学問に挑もうと志したのは、もしかしたら“実験嫌い”こそがその進路を決定付けた根底思想だったと思えたりもする。

 小保方氏の場合、そもそも「ゴットハンド」と賞賛される程の実験手腕の持ち主だったとの事実には驚かされる。
 これぞ研究者氏達にはもてはやされるであろう事は、その後も医学方面を乏しい“実験力”を食い扶持としてあちこち渡り歩いて来た私には重々想像可能だ。 しかも小保方氏は若くて美人?? (これには賛否両論あるだろうが…)
 要するに、小保方氏に決定的に欠けていたのは「科学者」としての資質(理系頭脳)の無さである事実は揺るぎない事実であろう。
 しかも、小保方氏は我が身を精進出来ないうちに理研との恵まれた職場で長老研究者どもに利用され続けた事態こそが、悲しい結末を招いたとしか結論付けようがない…

 それにしても…。 
 若き小保方氏を報道の前面に出し“おとり”として利用する前に、理研理事達がSTAP事件“初動時”に我が事として対応出来ていたならば、こんな事態に至らなかったはずだ。
 それを理研理事達には今一度真摯に受け止めて欲しい。

 理研は野依氏の後任理事長として、前京都大学総長であられる物理学者の松本紘氏を迎え入れるようだ。
 新たな理事長体制の下、理研が真に再生することに期待したいものだ。