原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

安易について行かない教育が肝要

2008年02月21日 | 教育・学校
 朝日新聞2月17日(日)朝刊社会面に「被害少女は悪くない」と題した記事が掲載された。 これは先だって沖縄で起きた米兵による女子中学生暴行事件に反応した“ついてゆく方も悪い”との被害少女への社会からの一部の批判に対し、被害少女を“一応弁護したように見せかける”朝日新聞記者の反論記事である。

 まずは、この朝日新聞の反論記事の一部を以下に要約しよう。
 今回、被害にあったのは14歳の女子中学生であるが、彼女はアイスクリーム店を出てきたところを米兵に声をかけられた。街に出れば米兵と行き会うのは日常のこと。同世代の子たちは「繁華街に出かけると、米兵にプリクラや携帯電話の番号を交換しようと話しかけられることも多い」と言う。「米兵の友達を作ることが悪いんじゃなくて、悪いのは性犯罪をする人でしょ?」(繁華街でたむろする女の子達の言い分である。)

 以上が朝日新聞記者、山田菜の花氏の反論記事からの、被害少女の当日の行動に関連する部分の要約である。

 申し訳ないが朝日新聞記者の山田菜の花さん、あなたの記事は少しも被害少女を弁護できていませんよ。これじゃ、この被害少女の墓穴を掘っただけじゃないですか。 もしかしたら、どうせ新聞の読者なんて記事の見出しだけ見て詳細は読まないと見込んだ上で手抜き記事を書いているんじゃないですか? それはとんでもない話ですよ。 この種の反論記事で読者に訴えたいならば、被害少女周辺をもっと念入りに取材した上で理路整然と弁護しなきゃ!


 さて、私論に入ろう。

 結局この少女が米兵について行ってしまったことについては間違いないようだ。その事実は残念ではあるが認めざるを得ない。事実は事実として認めた上で、まだ未成年しかも義務教育過程のこの14歳の少女を責めることなく救うためには如何なる理論武装をするべきか。
 米兵について行った被害少女に落ち度があったとして安易に片付けてしまうのではなく、周囲の大人が冷静にこの問題を議論しないと、残念ではあるが今後同様の事件は続く恐れがあり、道は開けないのではなかろうか。

 性犯罪をする側が悪いのは自明の理であり、この米兵は当然ながら法的に然るべき処罰を受けることになろう。

 そこで、今回議論の対象とするべきはやはり被害少女の行動及びその心理的背景であると私は考える。
 そもそも米兵と出会う確率が高い繁華街を女子中学生がたむろすることについても、社会では賛否両論あることと察する。
 これに関しては、私は容認派である。異性(特に米兵という特殊な異性)の存在は思春期に入ったばかりで好奇心旺盛な少女たちにとっては魅力的な対象なのであろう。そんな異性に誘われたい“下心”で繁華街をうろつくことに関しては、ある意味自然な欲求なのではなかろうか。 この私にだっていい年をして未だに下心はある。“下心”というのは一種の文化の土台となる重要なエネルギー源であるとも考える。加えて、法的にも内心の自由は尊重されるべきである。(話がずれたが…)
 少女達のそんな“下心”は認めた上で、忘れてはならないことがあるのだ。この“下心”を生かすも殺すも自分次第なのである。
 結論から言うと、キーワードは“自己管理力”である。これを大人は子供達に早いうちから身に付けさせなければいけない。“自己管理力”と言ってしまうと範囲が広くて大袈裟であるならば、この事件の場合、“危機予知力”でもいい。とにかく、知らない異性に誘われたいという“下心”を行動に移す場合“下心”だけではダメなのだ。頭の片隅に必ず“危機予知力”のアンテナを張り巡らせておくべきなのである。それなくしてこのような行動に出る資格はない。それははっきりと子どもに伝えよう。
 
 それでは、その“危機予知力”ひいては“自己管理力”を子どもに身につけさせるためには大人、特に親は何をすればよいのか? 頭ごなしに「こういうことをしてはいけない!」と言っても子ども(特に思春期を過ぎた子ども)が聞く訳はない。反発をくらうだけだ。
 教育の基本は“共感力”なのだ。子どもと同じ目線で共感する力が子どもを育てると、私は日々実感している。例えば今回のような事件を報道で見聞きして、親である私が「つらいな、悲しいな、何でついて行っちゃったのかな。」と心を痛めていると、傍らにいる我が子も必ず感じるものはあるようだ。子どもが小さい頃からこれの繰り返し、積み重ねなのである。“危機予知力”などと言うものは一朝一夕に育つものではない。

 私事で恐縮であるが、私の娘もちょうど14歳である。そろそろ少しは色気でも出してみたらどうなの、と端で見ていてまどろっこしいくらい、このような事件とは無縁の世界に生きている中学生である。ただ、恋愛小説を読んだりしている様子を垣間見ると異性にまったく興味がない訳でもなさそうである。 こういう子が何かの拍子にたがが外れると危険だとも世間ではよく言う。それはそれで、親として見守り受け入れていきたいと考えている。

 とにかく、子どもの安全はやはり大人、特に親が見守りませんか。


追記: 当事件の発生時刻は夜間であったとのことだ。中学生の夜間の繁華街たむ
     ろは、やはり許すべきではない。(2月22日記)  
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