原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

銀座のママの力量

2008年02月17日 | 
 2月の第一土曜日に、私は大学院ゼミOB新年会のため昼間から銀座まで出かけた。
 今回のゼミOB会は、参加者に女性が皆無のため是非出席して欲しい、との元指導教授直々のご指名のお誘いにより参加するいきさつとなったものだ。女性の参加者は私と当ブログの常連でいつもコメントをいただいているRさん(Rさん、ご承諾も得ず勝手にご登場いただいたことをお詫び致します。)の二人のみだった。

 酒が強く、長~い独身時代にあちこち飲み歩いていた私であるが(当ブログのバックナンバー「飲兵衛はつらい?!」をご参照下さい。)、花の“銀座”で飲む機会など私のような庶民にとっては滅多やたらとあることではなく、今までに数える程だ。

 今回は銀座7丁目交差点の資生堂に程近い、元教授行きつけのスナックを昼間から借り切っての新年会であった。

 若かりし頃はどのような飲み会であれ、それこそ若気の至りで場もわきまえず自分のペースで飲んだものである。が、この年齢になるとそうもいかない。特に今回のような恩師も出席、メンバーも久しぶりにお会いする方々ばかりの場合、場を読みつつ飲む量を調節する必要がある。 加えて、今回のようにママさんひとりで牛耳っているお店での飲み会というのは、ママの同性としてはママさんに結構気を使うものであるし、場が楽しくなるも苦痛になるもママさんの力量によるところが大きい。 以上のような諸要因を元々わきまえた上での参加であった。


 さて初っ端から大ひんしゅくなのであるが、私一人だけ7分程遅刻をしてしまった。それを皆さんが乾杯をせずに待っていてくれたのだ。 大いに目立ってしまいバツが悪い…。冷や汗ものだ…。 そこを元教授とママさんが私の本名の話でうまくフォローして下さる。(参考のため、私の本名とママさんの名前がそれぞれ有名人と同姓同名だったのである。)その話で二人が場を盛り上げてくれている間にそそくさと席に着きつつ、私のママさんの第一印象は「できる人だな」である。

 そして、席に着いた私にママさんが「アルコールは大丈夫ですか?」と訪ねて下さる。もちろん(必要十分以上に)大丈夫なためその旨伝えると、薄めのフランデーの水割りを作って持ってきて下さった。 さっと周りをみたところ、これは参加者全員同じ濃さで作っているようだ。 酒に強い私としては少し物足りなく思いつつ、特に同じ女性であるRさんのお酒の進み具合もちらちら見ながら、Rさんも結構飲んでいる様子なので安心して同じ位のペースで飲み進める。 
 ママさんのお酒の勧め方がいい。 私の過去の経験ではママさんによってはどういう訳か女性にはお酒をあまり勧めてくれないお店が意外にあったのだが、こちらのママさんは全員平等に何気なく、グラスの残量が4割程度になったらそっと水割りを作って下さる。 最初は薄すぎると思った私だが、ママさんのお酒の勧め方のお陰で酒に強い私も心地よく酔い始めるのだ。
 今回の参加者は元々理性の強いメンバーばかりだったが故に、酔って羽目を外す人はひとりとしていないのだが、それにしてもこのママさんのお酒の勧め方は理想的ではないかと内心評価しているうちに酔いが回っていく。
 こういうお店のママメインの仕事は何と言っても客にお酒を勧めることであろう。 この勧め方が適切でないと、悪酔いする客が増えてお店の評判が落ちたり、また逆に飲みが足りずに欲求不満で客足が遠のくであろうと推測する。 そのような意味で、このママさんはその基本業務において私の採点は100点満点である。

 それから銀座とはいえどもスナックである故当然ながらカラオケ完備だ。 この種の店舗の場合、下手をするとママによっては客に率先して歌い始める方もいるのを私は過去に何度も経験している。 が、この銀座のママさんは元教授が勧めても「風邪をひいているから…」と遠慮するのだ。 結局、皆のリクエストに応えて一曲だけ披露して下さったのみである。
 
 この新年会は18時にて終了の予定だった。 その後はお店に一般客が入るためとあらかじめ聞いていた。 ところが場が盛り上がって私も酔っていてこの辺は定かではないのだが、気が付けば19時を過ぎている。 そろそろ新年会もお開きとなるのだが、ママさんは最後の最後まで気持ちよく全員を見送って下さるのだ。
 後で思うにこのママさん、一般客対応はどうしたのであろうか?

 
 とにかく花の“銀座”のママとして店を持てるにはこれ位の力量が要求されるのであろうと、私なりに感じ入った新年会であったとの話だ。