最近、どういう訳か毎週、観たいっ! と思う番組が少なくなった。バラエティ番組が多岐に渡って存在し、結構、面白い番組はあるものの、毎週、観たいっ! と思える番組は意外と少ないのである。ドラマでも、この番組だけはっ! と意識してV録[ビデオ録画]する番組が減った。あったとしても、連続8回とかで、一年続く訳でもなく、数ヵ月もすれば沙汰止(さたや)みとなるのが落ちだ。昭和3、40年代は30分番組でも結構、あったがな…と思え、この意識変化の疑問を辿(たど)れば、いろんな条件が重なっていることが判明(はんめい)した。その数々とはっ!? と、大げさに番組そのものを探求してみよう。^^
とある普通家庭の居間である。昼の日曜、新聞のテレビ番組欄を見ながら祖父がリモコンボタンを押した。
「余り観たい番組はないが、まあ一応、観るとするか…」
そこへ祖母が隠居所から入ってきた。
「別に無理に観なくてもいいんですよ、おじいさん」
「いや、それはそうだがな、ばあさん。なんか寂しいじゃないか」
「それもそうですね…」
祖母は深くは追求せず、隠居所へと戻(もど)っていった。
「はっはっはっ…何しにきたんだ? ばあさん…」
祖父が笑いながらテレビ画面を観ていると、そこへ今年、中2になった長男の孫が入ってきてリモコンを押し、チャンネルを変えた。
「ごめん、じいちゃん! 観たい番組があるんだっ!」
「… まあ、別にかまわんが」
観たくて観ていた訳でもない祖父だったが一応、威厳(いげん)を示した。すると、またそこへ小学1年の孫娘がドタドタドタ・・と入ってきてリモコンを慌(あわただ)しく押した。
「こらっ!」
長男が怒って騒ぎが始まった。祖父の胸中には『そんなに観たい番組かぁ~?』という疑問が浮かぶ。そこへ、二人の母親が台所から現れた。
「いい加減にしなさいっ!!」
「ああ…」「は~い!」
二人の紛争は、国連軍の介入をみて、ようやく終息(しゅうそく)した。二人が各自の子供部屋へ戻ると、急に居間は静かになった。
「お義父(とう)さま、コレって、そんなに観たい番組なんですか?」
「あなたの言うとおりだ。別にどぅ~てことない番組に思うんですがなぁ~。昔の番組だと、隠密剣士! あの番組は、よかったっ!!」
「…?」
ここで皆さんに断っておくが、各自の勉強部屋にテレビは、あるにはあった。だが、二人には、それぞれ録画中の別番組があり、それ以外の番組を観たかった訳である。^^
このように番組は若者向けの番組が増加し、中高年が観たい! と思う番組は地上波以外や専門チャンネルへと追いやられる傾向にある。いわば、落城寸前の城で、外堀や内堀、二の丸も落ち、『本丸は死守するぞっ!』的な気分が中高年のテレビ番組に対する視聴感覚になりつつあるということである。他にも、観たい番組が減った背景には、モノトーンからカラーへの番組映像の変化、放送波の増加に伴う多局化とチャンネル数の増加、使い捨て感覚による番組の短期間の改変、安価に済む番組制作費、番組提供者の高い視聴率希求なども関与していることを付け加えておきたい。^^
完