水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (17)程度

2021年06月07日 00時00分00秒 | #小説

 物事には程度というものがある。その程度も甘(あま)め、辛(から)めがあり、人によって捉(とら)え方が変わる。まあ、お手柔らかに判断して戴いた方がいいのだろうが、最近の殺伐(さつばつ)とした社会の風潮は辛めが多いから困ったものだ。^^
 とある普通家庭の一コマである。
「何よっ!! この点数はっ!!」
 辛口(からくち)の母親がテストの答案を見ながら小学校の子供を怒っている。だが、子供も負けてはいない。
「んっ!? 見てのとおりっ! どぉ~~ってことないですよっ!!」
「どぉ~~ってことないって、どぉ~~ってことあるでしょ!! 25点よっ!」
「25点! いいじゃないですかっ! この前より5点も上がった!」
 母親は呆(あき)れて沈黙し、目を逸(そ)らした。その隙(すき)に子供は逃避(とうひ)した。
「待ちなさいっ! どこへ行くのよっ!」
 気づいた母親が呼び止めた。だが、子供は少しも動じない。
「どこへ行くって、遊びですよっ! そいじゃ、またっ!」
 声がしたとき、子供の姿はすでになかった。
「ったくっ!! 程度が悪いんだからっ!」
 辛口の母親は口惜しそうに怒った。だが、この子供こそ、後(のち)の人類を救う医学者となるのだから、世の中は分からない。
 程度は、良い悪い、甘い辛いに関係しない訳である。^^


                   完


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