小難(こむずか)しい既成概念(きせいがいねん)という言葉がある。それは一般常識的なもので、人の心を縛(しば)りつける目に見えない感情だ。この手の概念は、時折り人を楽しい気分から遠退(とおの)けたり萎縮(いしゅく)させたりして、考える自由を妨(さまた)げるから困りものだ。一時的な出来事なら、それはそれでいいのだろうが、これが常態化すれば慣習となって社会に蔓延(はびこ)り、さらに進んで慣習法などという具合悪い法律になってしまうから怖(こわ)~~ぁい。^^
二人の人が高層ビルが立ち並ぶ街路の一角で立ち止まり、ヒソヒソと話をしている。
「いや、そりゃ~~ぁ、具合が悪いでしょ!」
「…どうして? 別に構わんじゃないですかっ!」
「いくらなんでも、肉屋さんで肉1トンも買う人がいますっ!?}
「肉屋さんは大儲(おおもう)けなんだから、それでいいじゃないですかっ!」
「そりゃそうですが、だいいち、そんなに在庫が店にある訳(わき)ゃない! 肉屋さんを困らせちゃ…」
「いや、すぐにっ! と言っとる訳じゃない。ずぅ~~っと毎日、ステーキを食べたいからっ!」
「そんなにっ? いくらなんでも常識ってもんがあるでしょ!」
「どういう常識です?」
「ですから、まあ、1キロとか500グラムとか…」
「そういうのを既成概念・・って言うんですよっ! ダメだなぁ~あんたっ! それじゃ楽しい、いい国になりませんよっ!」
「肉1トンで楽しい、いい国ですかっ!!?」
「はい! 必ず楽しい、いい国になりますっ! 既成概念を無(な)くせばっ!」
「…そうですか。今度の閣議でそう言っておきましょう!」
二人は互いに軽く一礼すると左右に別れた。
肉1トンの注文で国がよくなるかは疑問だが、既成概念の打破(だは)や撤廃(てっぱい)が新たな楽しい展開を可能にすることは事実のようだ。余談ながら、[いい国、作ろう鎌倉幕府]成立は、ご存知のとおり1192年である。^^
完
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