水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第五十三回)

2011年07月01日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    第五十三回

「ああ、そうでしたか。それはたぶん、機械が霊動を感知したときでしょ?」
「はい、そうです」
「その霊力を感知する物質を私達は幽霊のゴーストからゴーステンと名づけたのですが、ゴーステンは電力を流した時点で活性化することも実証済みなのです」
「それって、ノーベル賞ものの発見なんじゃないんですか?」
「ええ、恐らくは…。しかし、現在の人類の科学では、それを証明する術(すべ)がないのですよ」
「えっ? だって、そのナントカ…」
「ゴーステンですか?」
「ええ、そのゴーステンの活性化を実証されたんでしょ?」
「はい、それは、まあ…」
「だったら、その実証結果を発表されればいいんじゃないですか?」
「上山さんの素朴な疑問が分からんではないのですが、それは無理なのです」
「どうしてでしょう?」
「私達の実証理論は人間の科学的実証理論ではなく、宇宙的発想、すなわち宇宙理論としての実証法なのですよ」
「えっ? その辺りの云われる意味がよく分からないんですが?」
「ははは…。今の上山さん、いや、私達の知識を持たない上山さんと云った方がいいんでしょうが、…その上山さんに理解してもらえないのは残念なのですが…」
 佃(つくだ)教授は諦念(ていねん)したような沈んだ表情で黙った。
「そのゴーステンとは、いったいどのような物質なんですか? 地球上に存在する物質なのでしょうか?」
「それをお答えする前に、助手達の様子をご覧になって下さい」
 佃教授は、白衣姿で数珠(じゅず)を首にかけ、椅子に座って机上の粘土のような物質を弄(いじく)りつつ一心に念力を送り続ける奇妙な助手達を指さした。


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