水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第六十回)

2011年07月08日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    第六十回

「それでお訊(たず)ねしたいというのは、私にだけ、なぜ彼が見えるのかという疑問についてなのです。加えさせて戴けるなら、彼は、私だけが白っぽく、分かりやすく云えば、どうも私の像が薄く見えるらしいのですが、それらの疑問についてなのです」
「分かりました。お答えしましょう、と云いたいのですが、まだそこまでの研究成果を得ている訳ではありませんから、即答はしかねます。実証されて、初めてお答えすることが出来る訳ですからねえ」
「そりゃ、そうでしょう。しかし、何かの可能性についてとか、有り得る話とかは、云って戴けるのでは?」
「はあ、それはまあ…。飽くまでも可能性がある、という話でしたら…」
 それだけ聞くだけでも収穫だ…と、上山には思えた。
「霊波というものがあります。その霊波を断片的に時間で断層撮影しますと、いや、これは映像の断片的解析という意味ですが、霊が連続的に変化して動いている事象を捉えることが出来ます。我々は、これを霊動と呼び、霊動学として日々、研究する基礎理論にしておるのです」
「はあ…」
 余り教授の話が分からない上山だったが、一応は分かったような素振りで相槌を打った。
「で、話を戻しましょう。白っぽく見えると、上山さんのお知り合いの霊が云われることですが、霊力の特別に強い方ですと、霊から見て人間の姿が薄まってしまう傾向があることが分かっております。ただ、上山さんのお知り合いのその方が、そうした理由で上山さんの姿が白っぽく見える、のなら、それはそれでいいんですが、…もう一つの違う場合だと…」
 佃(つくだ)教授は一瞬、躊躇(ちゅうちょ)して黙ってしまい、徐(おもむろ)に上山を見た。


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