水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第六十四回)

2011年07月12日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    
    第六十四回

原子力発電所の燃料棒のように熱を発します。そして、霊力を感知する状態の臨界に達しますと、装置から5メートル四方に存在する霊に反応するようになるのです」
「反応するとVUメーターが振れ、オレンジ色に点滅する配線をしてあります」
「その臨界に達したゴーステンが霊力に反応する訳ですか?」
「はい。まあ、そうですね…」
「感知したときに、機内はどうなるんでしょうか?」
「この配線構造は少し難しいので、上山さんに説明しても、分かって戴けるかは疑問なのですが…。要は、その配線でVUメーターの針が振れ、ランプが点滅する訳です」
「なるほど…」
 上山は、もうひとつ、はっきりとは分からなかったが、理解した素振りをし、見栄を張った。
『僕には今一、分かんないなあ…』
 幽霊平林は誰に云うでもなく、感想めいた言葉を口にした。もちろんその声は、上山の耳に聞こえるだけである。
「これは、分からないと申しております」
「えっ?」
 上山は、目の前の空間を指さした。
「ああ…、お知り合いの霊さんですか…」
「霊さん、ですか。上手いこと云われますねえ。おい君! 霊さんだそうだぞ。この呼びようもいいなあ」
『いやあ、課長…、冷やかさないで下さいよ』
 幽霊平林は思わず頭を掻いた。その拍子に頭に付けた幽霊平林の白三角巾がとれて下へ落ちた。その途端、上山の視界から幽霊平林の姿は消滅した。


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