水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 「ターゲット」より <推敲版>

2009年04月12日 00時00分01秒 | #小説

≪創作シナリオ≫

     ターゲットより <推敲版>


○  車の中(真夜中)
  高速道路を走る一台の車。運転する女。車線の左右に流れる銀光の照明灯。照明灯に照らされ銀光に浮かぶアスファルトの道。固定
  して流れ続ける道。カーラジオから流れる音楽。車窓から入る照明灯に照らされ浮かぶ女の顔。助手席をチラッと見る女。
 女「もう少し待っててね。そしたら、あなたの出番よ…(カメラに言い聞かせるように)」
  助手席に置かれたデジタルカメラが銀光に浮かぶ。黙
って運転する女。前方にインターチェンジの案内板。ウィンカーを出し、左へ車線
  変更をする女。

○  車の外(真夜中)・外景
  車線変更する車。
  *       *       *       *       *       *       *       *       *       *      
  減速し、走行する車。
  O.L

○  車の外(真夜中)・外景
  O.L
  減速し、走行する車。
  *       *       *       *       *       *       *       *       *       *     
  一般道を走る車。

○  車の中(真夜中)
  山並みを走る車。木々がヘッドライトの光でアンバーイエローに浮かび、流れていく。自動ウインドウを開ける女。微かな風に目を細め
  る女。窓から入る穏やかな潮騒の音。さらに、車を走らせる女。

○  車の外(早暁)・外景
  山並みを抜け、海岸沿いの小道に出て走る車。

○  車の中(夜明け前)
 女「着いたわよ…(カメラに言い聞かせるように)」
  車を停める女。サイドブレーキを引き、エンジンを切る女。助手席のデジタルカメラを手にする女。

○  車の外(夜明け前)・外景
  車を降り、小道から一歩一歩とゆったり歩を進める女。海が一望できるところを目指す女。その場所に至り、佇む女。
  薄暗い水平線を、ただじっと眺める女。
  O.L

○  車の外(夜明け)・外景
  O.L
  日の出前の水平線を、ただじっと眺める女。
  カメラを構える女。静かにオレンジ色の円を描いて姿を見せる太陽。陽光を浴びながらシャッターを切り続ける女。

○  エンド・ロール
  次第に昇り往くオレンジ色の太陽。その真ん中に黒影に映える女の姿。シャッターを切り続ける女。
  テーマ音楽
  キャスト、スタッフなど

         ※ 坂本博氏 「徒然雑記」内記事より脚色


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残月剣 -秘抄- 《入門》第二十一回

2009年04月12日 00時00分00秒 | #小説

        残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《入門》第二十一回

 この疑念は、かつて以前、左馬介が不審を抱いた道場に必要な諸経費の出所と相俟って、左馬介が問題視するところであったが、納得できる、事の真実を知るのは数ヶ月ばかり先である。
 夕餉を全員で食する堂所(どうしょ)と呼ばれる大広間は厨房続きになっていて、屋根まで吹き抜けの構造だった。日々の煤煙(すすけむり)によって、梁(はり)や棟木(むなぎ)、それに柄柱(つかばしら)などは黒々と不気味である。所々に立てられた蝋燭の燭台に照らされ、門弟達の顔が怪しく揺れた。夕飯は朝に炊かれた残飯だから、当然、冷や飯である。ほとんどの者は湯漬けにして掻き込むようにそれを食らった。惣菜に焼き魚が出るなどは良い方で、大よそは香の物だけが多いと一馬は云った。
「それは無論です。飯は毎日ですからねぇ。…かといって、一汁一菜が日々ですと、身体が持ちませんし…」
 と云いながら、一馬は既に食べ終えていた。左馬介は、まだ半分方は残している。闊達(かったつ)な一馬の食べ様に、左馬介は驚かされるのみである。恰(あたか)もそれは、食べるというよりは、胃の腑へ早々に納めると云った方がよい食べ様であった。
「何を考えておられるのですか? 早く食べて仕舞わないと、後の片付けもありますから、就寝までの貴方の時が無くなってしまいますよ」
 


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