母がクッキーを作ると言い出した。
私はお菓子の本がぎっちりの棚から、そのものずばりな「クッキーの本」を取り出して、渡した。
最近アロマとかハーブのことを熱心に勉強しているから、
その一環として、ハーブのクッキーを作ってみたいと思ったらしい。
でも「作って、失敗したら嫌だから、今日は普通のクッキーを焼く」って。
…失敗?
あんまその時は気にしなかった。
いっぱいいっぱいなイエッタ(パソ)と格闘中だった私は、2階に戻ってきた母の質問に驚いた。
「無塩バターって書いてあるんだけど…無塩じゃないといけないの?」
え。
「当たり前じゃん。」
「なんで?」
「なんでって…有塩バターだったら分量外の塩が入っちゃうことになるやん。いらんやん、塩。お菓子は普通は無塩バターしか使わないよ。」
「ふ~ん」
あまり納得がいっていない様子。
…ここで、一緒に階下に降りるべきだったのに。
ついに動かなくなったイエッタに強制終了をかけ、再起動を試す。起動にはめちゃ時間がかかるので、やっと1階の台所に行く気になった。
粉をふるっている母。
?…なんだかやりにくそう。
「粉はふるったで。あとは?全部混ぜればいいんだよね?」
「うん…。最初にバターをやらかくして…砂糖から…。砂糖は?」
「えっ!?」
…薄力粉と、ベーキングパウダーと一緒にふるっちゃったらしい…。
「だって、粉類って書いてあるから……!」
今まで気づかなかったけど、
母はお菓子をほとんど作ったことがないらしい。
家では「うちが」作るから作らないのかと無意識のうちに思ってた…。
だから、粉類がどれかもわからないし、バターをどうするかもわからない。
びっくりしたけど、…作らない人には、当たり前の反応なんだろう。
うちが料理をしようとしたら、そういうことはめっちゃあるだろう。
母は料理も普通にうまいし、子供の時からホットケーキやらフレンチトーストをささっと作ってくれていたので、まさかお菓子が作れないとは思わなかった(うちの中で、フレンチトーストはお菓子以外の何ものでもありません)。
しかも、じゃあ、うちが小学生や中学生だったころにクッキーを作った時も、
母は全然一緒にやらなかったんだな。
なんか不思議だ。てか、そんな母なのになんとなく作れる気がしてた自分にびっくりだ。
考えてみれば、母はお菓子がそんなに好きではないので当然かもしれない。
うちのお菓子作りは、家庭で培われたものではない……
うちがよそから取り入れたものなんだな。
友達の家とか。本からとか。
ちなみにそのクッキー…、一応クッキーにはなりました…。
結果としてほんと混ぜただけで、こう、形になってしまうと…なんか悔しいというか。いつもきっちりと手順を守っている自分はなんなんだという気分になりますね!(いやそりゃ、全然味とかは変わるんだけど…)
いやしかし、興味深い出来事だった。