ウィトラのつぶやき

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北方謙三の「岳飛伝」を読了

2019-02-17 17:21:57 | 生活

北方謙三の歴史小説「岳飛伝」全17巻を読み終えた。このシリーズは「水滸伝」全19巻、「楊令伝」全15巻に続く第3部で、以前の「楊令伝」を読み終えてから5年近くが経過している。北方氏は月刊誌に連載し、ある程度まとまった時点で単行本にして発行する。それから2年ほどすると文庫本が出てくる。私は文庫本が出るまで買わないことにしていたので、楊令伝を読み終えてからしばらくは岳飛伝のことは忘れていた。ところが昨年、本屋で「岳飛伝」の文庫本が出ているのを見つけた。ブックオフにも売っていたのでまとめて買った。

私は夜寝る前に寝床で小説を読むのを習慣にしている。10ページほど読んで気が付くと眠っていたこともあるし、なかなか眠れなくて1時間以上読むときもある。それで、17巻を読み終えるのに4か月以上かかった。

北方謙三氏のこの一連の作品は「大水滸伝」全51巻と言われている。最初の水滸伝は中国の有名な小説で宋の時代に様々なキャラクタを持つ人々が「梁山泊」に集まってクーデターを計画する話である。結局クーデターは鎮圧される。北方謙三の「水滸伝」は吉川英治の「三国志」などとはかなり趣が異なっており、原典の「水滸伝」の登場人物は利用するがストーリーは大きく書き換えて北方謙三氏の世界を作っている。しかし、大きな意味で梁山泊が最後に鎮圧されて終わる点は同じである。

「楊令伝」は梁山泊が鎮圧された時には少年だった楊令が成人して梁山泊の生き残りを集めて再起するストーリーで、中国北方で勢力を強めた女真族の「金」国と連携して宋を倒してしまう。これ以降、中国は北側は「金」、南は「南宋」という二つの国に分かれる。しかし、最後は楊令は暗殺されてしまう。楊令伝は全て北方謙三の創作で、楊令も架空の人物である。

「岳飛伝」の「岳飛」は楊令伝の中では梁山泊の敵として出てくる登場人物で、楊令伝の中では子供だったのだが、岳飛伝では梁山泊と連携して「南宋」、「金」を倒して中国統一を目指す。楊令伝の段階から梁山泊は「国家」というものを軍事力で国民を統治するのではなく貿易立国を目指し、日本、東南アジアからいわゆる西域までの早大の流通経路(シルクロードの原点9の構築を目指す。岳飛は実在の人物であるが、ストーリーは北方謙三氏の創作で、あまり史実に基づいては居ない。

「岳飛伝」は壮大な貿易立国を目指す動きと、南宋や金国との軍事的対立が絡み合った面白い作品で、読み飽きないのだが、「水滸伝」「楊令伝」と比べると若干の物足りなさを感じた。個々の人物が行動を起こすときの動機が今一つピンとこなかったのである。北方謙三氏も高齢になってきているので、年齢による衰えでなければよいが、と思っている。「岳飛伝」の最後には楊令の息子がモンゴルに逃げていく話が出てきており、これが次のジンギスカンの話につながっていくことを予感させる。実際のところ、北方謙三氏によるジンギスカン伝が出ることを連想させる。実際のところ単行本の「チンギス紀」は既に3冊発行されている。

ジンギスカンは私が興味を持っている人物で、わずかなモンゴル人でどうしてあれほどの大国を統治できたのかを知りたいとかねがね思っていた。できれば完全な創作ではなく、かなり史実に基づいて伝記風に書かれている山岡荘八の「徳川家康」のようなスタイルを期待しているのだが、北方謙三氏ならば創作性がかなり強くなることだろう。「チンギス紀」は図書館で借りて1冊くらい読んでから買うかどうかを決めようと思っている。


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