ウィトラのつぶやき

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クアルコムがシャープに出資?

2012-12-05 08:19:40 | 経済

ここ数日間、携帯電話用LSIで世界トップのアメリカQualcommがシャープに100億円出資する、という話しが日経新聞などで報じられている。今日になってその中身が明らかになってきたが、出資というよりは事業提携というべきものである。

報道によると、MEMSディスプレイをシャープの技術を使って製造する、という話である。Qualcommは以前からミラソルという超低消費電力のディスプレイを研究し、その実用化のための子会社も作っていた。ミラソルというのは液晶のように内部から光が出てくる発光型のディスプレイではなく、紙のように外部の光を反射する反射型のディスプレイである。小さな鏡をたくさん置いて光を反射させる。反射板の上に赤、青、緑という光の三原色のセルファンのような透過膜を置いて色を出す。その膜をMEMSという超微細シャッターで開けたり閉じたりすることによって色を出す、という技術である。シャッターを動かすための電力は必要だが光を出すための電力は必要ないので電池が長持ちするという仕掛けである。

今回のシャープとの提携ではMEMSディスプレイと呼んでいるがミラソルとは読んでいない。反射型のディスプレイではなく、内部の発光ダイオードからの光を透過膜で制御するという、発光型になっているからのようである。Qualcommは研究を続けるうちに暗い所でも読めるように発光機能を不可欠いうことになり、発光機能は持たせるようにしてこれまでの研究成果を生かそうとしたのだろう。ミラソルというのは蝶々の羽の燐紛の意味で蝶の羽のようにきらきら光るということだが、反射そのものを連想させるのに、反射型は抑えたので名前を変えたのかもしれない。

シャープに話が来たというのはMEMSの制御が台湾メーカーではうまく行かず、シャープに話が持ち込まれたもののようである。新聞によると今売出し中のIGZO(イグゾー)の技術が使えるとのことだが私の理解ではIGZOは高性能の薄膜半導体で、MEMSの制御技術とはかなり違う。専門家が判断したのだから間違いはないのだろうが、どうも腑に落ちない。

MEMSディスプレイは同じ画面を見続けるときには消費電力は減るが、画面が変わるときにはむしろ電力は増えるのではないかと思う。つまり映画を見るような場合にはあまり好ましくないのではないかと私は思っている。電子ブックが最も適した製品だろうと思う。スマートフォンもそんなに画面が変わらないので使えそうだとは思う。ただしIGZOディスプレイがオフの時の消費電力を大幅に下げるのよりも更に効果があるのか、シャープはIGZO一本でいくほうが良いのではないか、などと思う。

業績が良いからできることなのだろうが、一連のQualcommの新技術実用化への執念はたいしたものだと思う。失敗に終わったがMediaFLOというデジタルテレビの技術でも周波数を買うなどの動きまで見せた。本当に新しい技術を物にするにはここまでの執念が必要なのだと思う。ディスプレイも失敗に終わる可能性は低くないと思うが、チャレンジを続けるQualcommの姿勢はいずれ大きな果実に結びつくと思う。一方のシャープに対しては100億円に目がくらんだ訳ではなく、技術的裏付けがあるのなら良いが、とシャープのために思う。